20 立冬
よく咲いたシクラメンの茎を、ぽきんとひとつ折ってごらん。星も凍えるような新月の夜。冷たい冬をほろほろと柔らかくするような、小さな小さなランタンになってくれるよ。ステッキみたいにしゃんっと振れば、街路樹、庭木、山の木だって、きらきらスパンコールみたいに輝いてくれる。大人には内緒だよ
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鍋の中でくつくつと黒豆が笑っている。俺はその音を聞きながら、蒸かしたさつまいもを潰す。沢山食べたいからと大量に蒸したせいで山盛りの栗きんとんが出来そうだ。これは幸せがいっぱいだ。と、ばあちゃんと顔を見合わせて笑った。仕事納めをした姉は炬燵で寝ている。これが俺の家の、いつもの年末。
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ある朝、庭に植えてある三色菫の株元に小さな小さな熊が座っていた。精巧な置物かと思ったが、どうにも生きているらしかった。愛らしい熊さんは私を見ても逃げずにふんふんと鼻を鳴らしている。しばらくすると、飛んできた黄色いちょうちょを追いかけて、よく晴れた空へと元気にかけ登って行った。
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花踏 芽々
「花の冠が欲しいの」
くもの店主は頭を抱えました。時節は冬。野原にあるのは枯草ばかりです。水仙や梅の咲く時期はまだまだ先ですので、すっかり困ってしまいました。
店主は一生懸命考えました。一晩中考えました。そうして朝を迎えた時、答えは目の前にありました。
店主はお客さまの喜ぶ顔を思い浮かべながら、せっせと仕事に取り掛かります。いつの間にか徹夜の疲れも眠気もどこかに吹き飛んでいました。
冠はお日さまが真上へ昇りきる前に完成しました。
空からひらひら落ちてきた雪の花と、冬の朝日を閉じ込めた小さな小さな氷の粒を丁寧に織り込んで、とても繊細で美しい花の冠を店主は見事に仕立て上げました。
花の冠を注文したかまきりの女の子は、その雪の花冠をとてもとても気に入り、きゅうっと胸に優しく抱き留めました。
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