欠けた茶碗
地面に蹲り、しくしくと泣いていた。柊真
「見えているの?」
「戻れるわけないじゃないですか。きっともう私の代わりがいるんです。ご飯がたっぷり入る器の大きい茶碗が」
ぎりぃっと悔しげにハンカチを噛む。
「じゃあどうしたいんですか?」
「こほん。あのですね、欠けてしまえば茶碗としての役目はもう終わりだとわたしも重々理解しているのです。もう一度ご飯を盛って、美味しく食べて頂ければもう未練はございません。というわけで、……坊ちゃんいかがでしょう。どうかこの茶碗にこんもりと白米を盛って、」
「えー」
「わっ。食い気味に拒否しましたね。ひどい。ひどい、ひどい」
「拾ったお茶碗でご飯はちょっと。俺そういうの無理な人なんですよねー。すみません」
「洗えば綺麗ですよ。ほら、ほら!」
「ううん」
「」
「あっ。鉢植えにするとか」
「鉢植えって土を入れるってことですか? それはちょっと嫌だなあ。わたし今までごはんしか」
「……。じゃあこれはどうですか。いっそのことバラバラに割ってしまっておしゃれなモザイク貼りに」
「いやあ、それは勘弁ですね。それってお茶碗の意味ないじゃないですか。バラバラって。ハッ」
鼻で笑ってきた茶碗の未練に若干の苛つきを感じた柊真。
「かなつぎ?」
「たしか、割れた部分を金かなにかで貼り付けてしまう技術がですね」
「なんですって!!!」
「燈真さん、それにしましょう。かなつぎ。絶対これです。わたしが求めてたのはかなつぎ!」
「嫌です」
「えっ」
「えっ、てなんですか。お金かかるじゃないですか。こういうのはですね、思い入れのある大事なものだからするんです。俺はあなたに思い入れも何も無いですから」
めそめそ泣いている。泣かれても困る。燈真にはお人好しだからこそ自宅まで案内し
お風呂から戻ってきたときにはもう彼女の姿はなかった。泣き疲れて化けてでる気力が尽きたらしい。彼女が泣いていた場所には、彼女の本体らしい欠けた子供用の茶碗がぽつんと置かれている。
縁が欠け、中には涙が溜まっていた。どうしたものかと考えていると、飼い猫のおはぎが擦り寄ってきた。
あれから化けてでることはなくなった。
×/ 戻る /top