真田と田中
五月の太陽は、僕が想像していたよりもずっと熱かった。きらきらと遠慮なく光る木の葉を睨みつける暇もなく、僕は朝からひたすら同じ作業を続けている。
がりがり。がりがり。
単調なその音にいい加減飽きてきた。だが、それももう終わる。これが最後の氷だ。これを使い切ればもう、このハンドルを回さなくてすむ。色褪せたフワリン――犬っぽいキャラクターの形をしたかき氷器ともおさらばだ。
すると、かき氷、と派手な文字で書かれている看板を蹴飛ばさん勢いで、田中がテントの中に駆けこんできた。手には銀色のボウル。恐る恐る中を覗けば、製氷皿から出したてであろう氷の山が見えた。にんまりと笑う田中の顔には、これも削って、と大きく書いてある。
文化祭二日目。太陽輝く午後二時半。今日食べたものは焼きそば半皿。一皿ではなくたったの半皿。午前中から酷使していた腕はとうに疲れ果てている。精神力は今死んだ。
僕のこの手はかき氷を生み出すためにあるのか。いいや違う。この手は。
「うひゃあっ!」
氷を一つ掴んで田中の服に投げ込んだ。氷は首筋を伝ってするりと下へ落ち込み、現在背中のあたりを滑っているらしい悲鳴が、田中の口から飛び出した。
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