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遊び半分で黒髪に被せた、花嫁のヴェールは、思いの外彼に似合っていた。
頬染めてはにかむ姿は、まるで可憐で…何て言ったら、君は怒るでしょうか。
指輪も何も嵌めていない、嫋やかな指先を取り、そっと側に跪く。
どうか、そのままで―。
美しい花嫁さん。
君をこのまま、連れ去っても宜しいですか?
『ヴェール』
到頭ここまで来たのだと、リーは感慨深くドアの前に立ち止まる。
――不束者だが、宜しく頼む。
黙って後ろをついて来たネジの、静かな言葉。
緊張した面持ちの、彼の変わらぬ生真面目さに、愛しさが込み上げる。
喜びも悲しみも、君とだったら。きっと。
はい、こちらこそと、軽やかに答え、リーは初々しい伴侶の手を取った。
『新居』(旧拍手文)
一に修行、二に修行。三、四に修行に……はい? 五も修行ですけど……
何ですか? え? ネジ?
ああ、君はこの中には入っていませんよ……いや、酷いって、そんな睨まれましても……。
仕方ないじゃないですか。ネジと修行の“大好き”は別なんです。
ちなみにボクの作成した“ネジランキング”もありますが、聞きますか?
『どちらも飽きる程追い掛けて、一生溺れていたいんです』(旧拍手文)
人間というのはこういう極限状態の中で漸く本性を現す――とネジは過ぎ去りし試練の日々を淡々と浮かべていた。
有効策を得られぬ間にも刻々と時は過ぎていった。散々喚き抗っていたチームメイトは或る時を境に急に大人しくなった。
ゲームが始まってから35分後のこと。先に相手の喉元に手を掛けたのは、リーだった。
(お題:リーとネジは『どちらかが相手の息の根を止めないと出られない部屋』に入ってしまいました。
40分以内に実行してください。)
「何のつもりだ? リー」
「時間がありません」
そう言い切った瞳は一片の迷いなくネジを見据える。
今はネジの首に巻き付いただけのその指先に、力が加わることなど有り得るのだろうか。
これからものの五分で両者に結着がつくなど。
どちらかを犠牲にしなければ。
大凡その意思が固まりつつあるネジは深く、呼吸をした。
『どちらかが相手の息の根を止めないと出られない部屋』A
「ネジ、しっかりして!」
声と同時に、渾身の馬鹿力が突如頬に降った。
目の前に必死の形相をしたリーがいる。
幻術から醒めても状況は似たようなものだった。
「で、どうするんだ?」
残り時間は3分弱。圧倒的に分が悪いが『此処』にいるリーは頼もしかった。
「決まってるでしょう。ここから出ますよ、ネジ」
『どちらかが相手の息の根を止めないと出られない部屋』/了
「テンテン、巻物を借りてもいいか?」
「テンテン、次はボクに貸してくださいね」
いつもなら柔と剛の組み手に勤しんでいるというのに、互いに目も合わさない。
暗器の巻物など読んだこともない癖に、分かり易いものである。
自分の両隣を埋める妙な圧迫感。居心地が悪すぎる。
「…早く仲直りしてくれないかしら」
『彼女の憂鬱』
「ネジ、どちらへ?」
「平気だから、触らないでくれ」
「す、すみません」
強気に言い放って厠へと向かうネジはどこか動きがぎこちない。
仲直りはしたようなのだが。或いは仲を深め過ぎたのか。
健気に主の帰りを待ち侘びるような忠犬の風情に、様子、見てくれば? と告げると、一目散にリーは駆けていった。
『彼女の憂鬱A』
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aoi haru.
花籠