おんがえし
1/1





*カカサク(戦うことは、守ること)




「言っておくけどね………オレが生きている限りは、この子に、手は、出させない」

 決して、と。
 吐き捨てるように、そして強かに言い放つカカシのマスクに赤黒い染みが広がる。肩に受けた刃物をカカシは自分でズルリと抜くと、側に放り投げた。
 地に伏していた筈のカカシがサクラの前に立ち塞がった。立っているのがやっとの状態で何が出来るのか。相手がそう煽るのに頷いてしまえる程、もうカカシはふらふらだった。今にも倒れそうな体を無理矢理に起こして、それ程までにして彼が立ち続ける理由とは――。
 後ろに、サクラがいるからだ。

 写輪眼が使えないなら、自分の拳で。腕がやられたならこの体ごと、穴が開くまで壁になる。
 この身体を、命を、彼女に差し出そうと腹を決めたカカシの意志に、サクラの中で何かが目覚めた。



 或る任務で仲間を失ってしまい、それからサクラは医療忍術だけに没頭していった。クナイさえ握らなくなった。
 自分を責めて、殻に籠もっているサクラを誰も奮い立たせることが出来なかった。“自分が戦う意思を見せなければ、もう傷付くことも傷付けられることもない”。その頑なな信念を覆せる答を誰も知らなかったから。
 カカシの背中が、それを教えたのだ。人を傷付ける恐怖の呪縛から、サクラは漸く解放された。
 クナイを向けるのは傷付けるのではない、只守りたい人がいるからだ。


―――傷付けるのではない、守るのだ。私は大事なこの人を全力で守る―――。



「カカシ先生……すみませんでした……もう大丈夫です。後でちゃんと治療するので、休んでいてください」

 今度はサクラが、深手を負ったカカシを守るようにして前に出た。素直に後ろに引いて、木に背中を預けたカカシが苦しそうにだが薄らと笑う。

「遅かったね」
「すみません」
「いや」
 
 頼もしいよ。そうこなくっちゃね。
 そう言うそちらの方が余程頼もしい。肩の傷から手を離し、カカシが印を結んで援護の準備をしてくれている。


 攻撃は最大の防御と成り得る。逃げてばかりでは駄目だった。綱手から叩き込まれたあらゆる戦法からサクラの脳が或る一つのモノを叩き出した。
 『アレ』には相当量のチャクラを消費するが……綱手だったらコレを使う筈。今までサポート役に徹していたサクラには、気力もチャクラも十分。カカシもついている。
 久しく鍛錬していなかった右腕をぐるぐると回す。大丈夫、少し鈍っているが動く。いける。
 手を握ったり開いたりしていると、有り余るチャクラが彼女の体を包み出す。
 この拳は、目の前に立ち塞ぐもの、全て薙ぎ倒す。
 今、私の前に、いない方が良い。
 碧い炎を燃やす瞳の、鋭く見据える先の気配が、ぞくりと戦慄いた。
 カカシが血に染まったマスクの下で、にやりと微笑った。こうなったらサクラが暴れ出すのは知っている。脂汗を浮かべる余裕のなさでも彼は勝機を確信した。

「サクラ。いつでも良いよ」




旧拍手御礼SS『おんがえし』


おんがえし……トレーナーの ために 全力で 相手を 攻撃する。なついているほど 威力は あがる。


- 1 -

*前次#


amaryllis
花籠