ーーーお兄ちゃん……お兄ちゃん!!!!

「は………っ」

頭の中に響いた声に私は跳ねるようにして飛び起きた。冷汗だらだらで、心臓がバクバクとまるで早鐘のように動いていて、少し苦しい。
あの声は、紛れもない私の声だ。一年前の、ハープーンの前での、私の声。
ーーお兄ちゃんが、サターンと共に自爆したときの……。
そして、いま私が発することのできない声。

「…………」

ちらりと時計を見るとまだ夜中。でも再び寝付ける気もしない。
私は、隣のベッドで寝ているランちゃんを起こさないようにして部屋を出る。
目的地なんてわからない。この時間帯に起きている人なんて、そうそういない。

「イチカ」