ななふしぎ 回答編




「──この学園においての七不思議が知りたいんです。他の不可思議な現象も含めて」

購買部を訪れ、サムへ問うたのは果たしていつ頃のことだったか。
意図せずともデュースはソレ等と高確率で遭遇してしまう。故に先んじてどんなモノが確認されているのか、情報を仕入れておくことにしたのだ。それが、デュースが壁の大口・・の存在を知っていた理由の内の一つである。
サムの情報によると、過去に七不思議が原因で失踪者が出た例は両手に収まる程度。重症者はそこそこ。軽症者は把握しきれていない。

「こんばんは……情報共有のためにご報告に来ました」
「おや小鬼ちゃん、待っていたよ。あちら・・・もそろそろ来る頃だ」

もう一人──事情を知るものとしてのそれはクルーウェルに他ならない。
店内の片づけを始めたサムの横で、デュースはコーヒーと紅茶、それに合う茶菓子の準備を進めていた。今日の持ち込んだ茶菓子はトレイ特製の一口マドレーヌである。三人が揃っての情報共有と近況報告。これが短時間で済んだためしがない。それ故の準備という訳だ。
……なお、近況報告には監督生の生活に関わることや生徒間においてのいざこざも含まれる。つまりデュースに把握されてしまった生徒たちの洒落にならない悪事が教師の一人に筒抜け状態になるわけだ。まあ監督生の生活に平穏をもたらすためには必要なことである。さもありなん。

程なくしてノックの音が響く。サムが応える声と共に魔法で扉を開ければ入店してきたのはクルーウェル。しかしその顔に浮かぶ表情は若干の苛立ちが含まれたものだ。頭と肩が若干濡れているところから察するに、どうやら雨に降られたようだった。魔法で雨除けはしたのだろうが、降られ始めた時に被った雨粒が不快、といったところか。
魔法で生み出した温風で自身のコートを乾かしたクルーウェルは、この集まりの為に整えられた店内の一角へと視線を向け小さく息を吐いた。彼に若干の穏やかさが戻ったのが伝わってくる。一瞥してデュースは無言でコーヒーをカップに注いだ。
声掛けなど無くとも各々がテーブルに集まったのは自然の流れだった。席に着き、喉を潤してようやく一息つけた三人の間に沈黙が落ちる。勤務後のブレイクタイム。それぞれ手にしているのがアルコール類であれば、もしかすると愚痴が飛び出していたかもしれない。
そんな何とも言えない空気を破り、口火を切ったのはサムだった。

「……さて、小鬼ちゃん。先触れを寄越してまで共有したかったこと、というのは一体何だい?」
「ええ。『西棟に突然出現する扉』と『移動する井戸』について、まあ、ちょっと色々ありまして」

若干言葉を濁し、デュースはつい最近関わった二件の七不思議にまつわる事の顛末を簡潔に報告した。

特定の何者かに干渉し餌が飛び込んでくるのを待つ、食虫植物のような仕組みの扉に擬態した壁の大口。
──『西棟に突然出現する扉』
神出鬼没、欲に塗れた覗き込んだ者が落ちてくるのを待っている、井戸のうろ
──『移動する井戸』

どちらも危険性が高いわけではない。だが、放置しておいても良いとは言えない。そんな存在だった。……特に、井戸の方は。

「対処は、難しいでしょうね。無差別かつ規則性がほぼ無い。誰が干渉を受ける対象となるのかが事前に分からない。被害が出たとしても、誰かが気づくまで時間がかかる、もしくは気づくことすらない。……これでは後手に回らざるを得ないかと」
「……そうか」
「今回標的とされた生徒については、余程のことがない限り同じ場所には近づかないのではないかな、と。ちょっとおどかしておいたので」

僅かに視線を逸らしてデュースは肩をすくめる。
あれだけ脅かしておいたのだ。大口の時には明確に存在について触れて、井戸の時にはその存在には触れずに。トリガーが違うのだから対応が異なるのは当然のことだ。
壁の大口の場合、移動することのない存在であるため、場所に近づかせないことが最大の予防となる。だから含みを持たせて話をしたのだ。あの大口についての事など知らぬ存ぜぬを通してしまうことなど容易かった。「見間違いである」「混乱したのか」と。にもかかわらず、同寮の上級生に向けて断言したのだ。アレがであると。
対して移動する井戸。これは意識や思考をどうにかしなければ永遠に引き寄せられてしまうだろう、とデュースは判断した。
前者に関しては、「口」が存在するという意識が根付いてしまうが、緊急措置であるため目を瞑っている。

「それでスペード、オマエはソレ等をどう見たんだ」
「聞きたいんです? 聞かない方が良いかもしれないですよ?」
「構わん」
「俺もぜひ聞きたいね」

そう問うた大人二人の表情は普段と変わりない。しかしその瞳は真剣そのものだ。

「……分かりました。影響がなさそうな範囲で答えますね」
「ああ」

デュースはその視線に負けた。
小さく息を吐くと脳内で知り得たことをまとめていく。組んだ腕の上で人差し指が無意識のうちにタッタッと拍を刻んだ。

「まず、西棟の突然出現する扉……に擬態した口、こちらから話しましょう」

考えがまとまったのか、自然と下がっていた視線を真正面の二人に戻してデュースは口を開いた。

「──何を基準に誘き寄せる対象を選んでいるのか、全く分かりません。アレが周囲をどれだけ察知しているのかも。一見すると口だけの存在ですからね、飛び込んできた物をモグモグしているだけなのかもしれません。……まあそれも誘き寄せたモノを、なわけですが」

寄せ付けられる者と寄せ付けられない者、その違いがある以上何かしらの基準があるはずなのだ。しかしあまりにも情報が少なすぎるため明確な条件は分からない。何しろこれまで被害にあった者たちがどれ程いるのか、それすら把握できないのだから。

「アレが文字通り大口を開けて待っているのは栄養分となるモノです。まあ、推測の域を出ませんが物理的なものではありません。『生気』や『生命力』などの生きる上で生物が必ず持って居るエネルギーでしょう」
「ゴーストなどの存在と考えれば、よく聞く話か。ありきたりではあるな」
「酷いモノとなると『魂』を狙いに来るからね。まだかわいい方なのかな?」
「それも度合いに依るかと。……恐らくですが、好みがあるようで、気に入らないと吐き出されるようです」

現にデュースが遭遇した時、鳥はペッと吐き出された。肉体も魂も何一つとして損なうことなく。しかし僅かに生気が削られていた。いや、取られた、とでも言うべきか。
醜悪な見た目に反して選り好みをするらしい。あの大口は鳥のをみた瞬間、好みではないと分かり吐き出した。存在通り口に合わなかったのだろう。デュースはそう解釈したのだ。
デュースの介入により同寮の上級生は片腕が口の中に入った状態から先には進まず、それと入れ替わるように大口に入ったのは鳥。凶事に襲われかけた彼からしてみればこの上ないタイミングだった。鳥が身代わりになってくれたようなものなのだから。
結果として彼は、鳥が口に含まれ吐き出される一連の光景を目撃した後、大口を視界に捉えることは出来ていない。目の前に存在しているにもかかわらず、だ。

「気に入つた場合は、まあ、味わうんでしょうねぇ……」

あのまま止めることなく、彼が口の中に完全に入ってしまったとしたら果たしてどうなっていたのか。今となって走るところではない。しかしあの時、デュースの第六感は警鐘を鳴らしていた。大なり小なり良くない状態に陥る、と。
良くて無気力や軽い体調不良、悪くて意識混濁、と言ったところだろうか。もしかすると、彼は「口に合ってしまう」可能性がある。そうなると後者に近い状態に陥っていたかもしれないのだ。
タイミング悪く飛び込んだ鳥にとっては災難だっただろうが、大口を誤魔化せたことは彼にとって幸運だったと言う他ない。

「あの大口がどんな存在なのか、定かではありません。存在する為に餌を呼び込んでいるのか、何かの目的の為にエネルギーを集めているのか。口だけの存在なのか。本体は別の場所に存在していて口が餌を求めて出張しているのか。それとも元は一つの存在が体のパーツをそれぞれ自立させて動いているのか。……まあ何にせよ、アレが文字通り味を占めて・・・・・さらに学園の中で動きを活発化しなければいいんですけど」
「対策が立てられない中、そうなるのは避けたいものだな」
「……切実にそう願うよ」

デュースが示した嫌な想像に、クルーウェルとサムは顔を歪めた。
干渉度合い、出没箇所が増えれば被害は比例して増すだろう。今すぐ消滅しろ、とは言わないが、せめて勢いが増さないことを願うばかりだ。
多少なりとも喉の渇きを覚えたデュースは自身のカップに口をつける。少し時間が経ったせいか、飲みやすい温度まで下がっていた。

「──では、次は移動する井戸。待つ、と言う点では似ているかもしれません。ですが異なる点が幾つか」
「ほう?」
「こちらは狙う対象がある程度分かりやすいような気がしました。そして井戸とその周りに意思がある。だから移動する。誘き寄せるわけではなく自身が近づく。こんなところでしょうか」
「狙われる対象というのは?」
「欲深く自分のことしか考えていない者、ですかね?」
「……この学園の生徒は、殆ど引っ掛かりそうな気がするが」
「うーん否定が出来ない」

……とはいえデュースも直ぐに気付けたわけではない。移動する井戸が出現した場所が場所だった為、それがヒントになったのだ。中庭の「願いを唱えると叶う井戸」のすぐ傍。加えて、あの場に響いた多数の声。怨嗟どころか感情すら感じられない、呼びかけにも聞こえた声。しかしそれでもデュースは寒気と危機感を覚えたのだ。
あの時、背後で何かが落ちた音がした。林檎にしては重く大きい、鈍い音。
井戸と存在を同じくするモノなのか、井戸に食われた者が同類を増やすために降って湧いたのか。はたまた、そのどちらもか。

「少し話が逸れるんですけど、昔、井戸にまつわるオカルト話を聞いたことがありまして。それが『井戸に落ちた果実や金品をかすめ取ろうとする人間』の話なんです」

遭遇した一件からしばらくして、ふとデュースは似たような逸話の大方を思い出した。当時は感覚で判断したのだが、あながち間違っていなかったのだ。それが今推測として彼等に話をしている根拠の一つ。
唐突に始まった逸話にサムは目を瞬かせた。確かに先程の条件と似ている。

「助けを呼ぶような声が聞こえて、その人は井戸の傍に寄っていく。落ちた人が居るということは周囲に荷物が落ちているかもしれない。中に居る相手を確認してから周囲を探ろう。そう考え井戸を覗き込んで──そしてその人も落ちてしまいました。後ろから、何かに押されて」

淡々と感情の乗らない声でデュースは話し終え、静かに口を閉じる。奇しくもその顔に浮かんでいるのは、井戸に遭遇した生徒に向けたのと近しい表情だった。
大人二人はゾッとした。背筋に悪寒が走った。とはいえ単に怪談話ともいえるこの空気に飲まれているだけである。絶妙なタイミングで照明が揺らいだことも一因なのだろうが。

「といった感じの話です。ね、似てるでしょう」
「……そう、だな」

クルーウェルは若干言葉に詰まりながらも肯定の言葉を返した。もはや意地である。
井戸の傍で蹲っていた生徒の意識が無かったのは、つまりそういうことだと後日デュースは理解した。おそらく後頭部に衝撃を食らって伸びていたのだろう。運良く井戸の縁から中へ落ちることなく蹲ったはいいが、意識が遠のきデュースが通り掛かるまでそのままだった。
……あの生徒は果たして井戸にどんな願いを唱えた、もしくは唱えるつもりだったのだろうか。状況を鑑みるにあまり良いものではなさそうだ。デュースとしては知りたいとは思わないが。

「とりあえず妨害をしておいたので、しばらくは動かないのではないかと思うんですけど……まあ正直どの程度保つのか計りかねます」

井戸に投げ込んだのは木彫りの人形だった。形代、身代わりと言ってもいい。破邪の能力を持つ香木とはいえ、効果は永続しない。そう遠くない内にまた動き始めるだろう。

井戸は水をくみ上げる場所だ。地下深くの底には水があるのだ──本来ならば。
聖水など投げ込めば存在が書き換えられるなどの事象が起きるかもしれない。それで済めばよいのだが、予想とは全く異なる方向への変貌を遂げでもしたら目も当てられない。何しろ、人間や生物の世界とは異なる理の中に存在しているのだから。

「遭遇した二つに関して、自分の考えとしては以上です」

話に一段落したことで僅かに肩の力を抜いたデュースは椅子に深く座り直した。
目の前にあるティーカップからはいつの間にか殆どなくなっている。対してクルーウェルたちのカップには半分以上残ったままだ。せっかくのトレイ特製一口マドレーヌも一つとして減っていない。

「しばらくは気を張らなくても良いということか」
「ある程度は、ですけどね。完全にとは言えないですし」
「いっそこのまま大人しくしていてくれればいいものを」
「あぁ、でもこの学園からそういったモノたちが消えることはないと思いますよ」
「……何故そう思うのか聞いても?」

あまりにも確証を持った声色だったがゆえに、サムは疑問を投げかけずにはいられなかった。
問いを受けたデュースはマドレーヌに伸ばしかけた手を止めた。目を瞬かせると背もたれに再度寄り掛かる。
その間にクルーウェルが無言のまま手に取ったのは小皿だった。マドレーヌを乗せてデュースの前に置く。持参した本人が遠慮しているのをどこか不憫に思ったのだろう。

「ここに集まる生徒たちの気質や性質のせい、とでも言えることなんですけど」

一度言葉を区切りデュースは顎に右手を当てる。どう説明すれば分かりやすいだろうか。そう考えはしたものの、特に捻らずストレートに告げてしまった方が良いと判断する。

「例えばですが、知り合いが暗がり、魔物、ゴーストなどの類が苦手なことを知ったとします。ここの生徒はどういった行動を取ると思いますか? あ、先程の七不思議などを知っているとして、が前提です」
「うーん、普通にゴーストの存在も七不思議も教えるだろうね」
「それは善意で? 悪意で?」
「ほぼほぼ悪意だろうな」
「ああでも、ごく一部の優しい子たちは回避のために教えそうだけどね」
「ですよねぇ。……だからです」
「ん?」
「今の答えが、全てです」

他者の弱みはここぞとばかりに握り、時に容赦なく突く。それがNRC生である。
親切心から回避のため情報を提供する生徒も居ないわけではない。だが多くは恐怖心を煽るため、さらなる弱みを引き出すために話題として上げるだろう。

「アレ等の存在を保つのは認識です。それが恐怖、畏怖、など負の感情であればあるほど存在の確立は増していく。まあ要はエサや肥料です。極上の」

デュースは淡々と告げるが、その表情は不満を堪えているかのようなものだった。口端が若干下がっている。
クルーウェルの頬が僅かに引き攣った。言わんとすることが理解できてしまったせいだ。

「そして、土地一帯の魔力濃度も高い。……これほどアレ等にとって好条件な場所はあまり無いでしょうね」

その言葉に大人たちは思わず頭を抱えた。確かにこれではこの世ならざる存在がこの学園から姿を消すことは無いだろう。完全なる悪循環。
大口・・に味見されかけた生徒に対し、デュースが誤魔化さなかったのは悪手だったかと思えるが、時間の経過とともに風化していく。一時だけ感じた恐怖の記憶などそういうものだ。そのうち忘れ去られるであろう。喉元過ぎれば熱さを忘れる、とはよく言ったものだ。

「まあ、外部から来るヤツは排除されることも多いですけどね。敷地内を無差別に荒そうとするタイプ、学園内に縄張りを築こうと侵入してくるタイプ。これは人面に見える鳥がスナイプしてくれてますよ」
「え、そうだったのかい!?」
「憶測でしかないですが。個人的に引っ付いてきているモノはスルーしているようなので、おそらく」

ハロウィンでも一般客に取り憑いていたモノについてほぼスルーだったことを考えると、あながち間違いでもないだろう。
あの人面に見えるスナイパーは、己のルールの中で生きている。それがどのようなものかは分からない。だが確実に言えるのはこちら側──生徒や教師たちや学園の動植物に対して危害を加える可能性は低い、ということだ。

「……こちらに利があるなら、人面鳥に関してはノータッチの方が良いかもしれないね」

深く息を吐いてサムは肩をすくめる仕草をした。デュースは曖昧に微笑むだけ。肯定も否定もしないことが、ある意味での答えだった。







──懸念した事象が起きつつある。あの大口が今までに無いような力を持ち始めていた。

(歪んで視えるようになってきた。気持ち悪い)

視る力が中々に強い方であるデュースの視界に擬態の力が及び始めていたである。実に厄介だった。
幸か不幸かデュースの手元には、差し入れとしてリリアから貰ったクッキーがある。……クッキーと言うには少々弾力があり、色も一般的な焼き色とは程遠いのだが。リリア曰くクッキーである。そう本人が言うのだから、誰が何と言おうとそうなのである。

「谷に咲く、食用可能な花を入れたのじゃ。邪なものを寄せ付けないからの」

こうとも言っていた。おそらくは親切心からなのだろう。それが現状を打破する一手に成り得るだろうか。

(これで我慢しておくれ、っと)

デュースはそれを、ポイッと流れるように大口のど真ん中に投げ入れた。声の大きな従者に見られれば、リリアからの差し入れをそんなぞんざいに扱うな、と爆音が飛んできそうな行為。
吸い込まれるように大口の中へとリリアの差し入れが着地した、その一拍後。耳に突き刺さるような音と共に、扉に擬態していた大口は消えた。そう、文字通りその場から存在が掻き消えたのだ。

(……うーん、新しい発見、なのか? とりあえず流石先輩とでもいえばいいのか)

目下の悩みであった『扉に擬態する壁の大口が力を着けつつある』ということについては解決したのだった。今後どうなるかは定かではないが、今の時点で存在が感じられない。
その日の夕刻にクルーウェルの研究室へ足を運ぶことにし、デュースは西棟を後にした。

──時間が経つのは速いもので、その日の内に報告することをデュースはうっかり忘れてしまった。思い出したのは深夜に近い時間帯。ならば仕方がない、と後日に回し数日が過ぎた。
クルーウェルの研究室をたまたま訪れた折に、ようやく思い出したのだ。
悪い知らせはすぐさま共有するというのに、良い報告や情報の共有が遅い。もしかすると無意識のうちに気が緩んでいたのかもしれない。

「あの『西棟に突然出現する扉』について、解決しましたよ」
「ほぉ?」
「リリア先輩から頂いたクッキーを差し入れ・・・・したら、消えました」
「……は?」

事も無さげにシレッと報告されたクルーウェルは思わず手を止め、とんでも発言の主を見上げた。しかしこれ以上の詳細を話すつもりはない様子で頷いてすらいる。全く話を把握しきれないクルーウェルの、もっとちゃんと話をしろ、という視線にデュースは不思議そうに首を傾げた。

「あ、苦痛に悶えてました、という報告も必要でした?」

思い出したように付け加えられた言葉にクルーウェルは無言で右手を眉間に添えた。
──違うそうじゃない。知りたいのはそれではない。
しかし何を言っても満足な返答が返ってこなさそうだと判断したクルーウェルは、深く深く息を吐いたのだった。

本日も学園は平和である。


2022/5/15
ななふしぎ@Aの答え合わせ回。本当はもっと大人組二人の反応とか色々書きたかったんですけど、長くなったので削りました。