相思
315プロ合同ライブツアー前、アイドルたちはライブのレッスン、リハーサルはもちろんだが、抑えているとは言え、他のお仕事もこなさなくてはならない。スタッフも然り、舞台演出関係から映像収録、会場関係者との最終打ち合わせを行ないつつ、ライブ後のアイドルたちのマネージメントも進めなくてはならない。
とにかく、プロダクション全体が慌ただしく、ワクワク感と緊張を抱えて過ごしているのだ。
日付が変わる少し前、打ち合わせを終えて、メールの確認をして今日は帰宅しようと一度事務所に戻ってきた。
こうやって駆け回る毎日はとても充実しているのだけれど、さすがに疲れを感じないわけではない。パソコンの電源を入れたあと、大きく息を吐きながらデスクに突っ伏した。
先程見送ったアイドル達が今日のスケジュールでは最終のはず、と全体のスケジュールを思い浮かべる。みんな無事に家に着いただろうか、とぼんやりと思っていると、ポツリと胸の中に湧き上がるものがあった。
顔を少し上げて時計を確認するが、あと数分で日付が変わってしまう時間だった。ポケットに仕舞ってあったスマホを取りだすと、メッセージを知らせる点滅が目に入った。体を起してロックを外して見ると、先程見送ったアイドルや今日別の現場をこなしたアイドルたちからのメッセージだった。
ライブに向けての意気込みだったりお互いを励まし合う言葉であったり、自分の体調を案じてくれる言葉もあった。1人1人の顔を思い浮かべると、じんわりと疲れた体に染み込んでいく感覚を覚えて顔がほころぶ。
と、その時急に着信音が鳴り、表示された名前にさらに動揺してしまう。驚いたため気持ちを落ち着けないまま通話ボタンを押してしまった。
『もしもし?もしもーし!プロデューサー?』
「もしもし、天道さん?お疲れ様です、どうされましたか?」
『んー、プロデューサー今どこ?』
「事務所ですけど…」
『何、まだ仕事してるのか!?』
「メールチェックだけです。天道さんはご自宅…じゃなさそうですね。」
『軽ーく飲んで帰るところ。』
「そうですか、気を付けて…真っ直ぐ帰ってくださいね!!」
『あっはは!わかってるよ!』
「それで、何かご用でしたか?」
『あーうん…』
「???」
『ちょっと色々考えてたら、不安というか緊張しちゃって…だから、プロデューサーの声、聞きたいなと思ったんだ。』
「…大丈夫ですよ、輝さんなら。ライブ、楽しみましょうね!」
『!?お、おう!プロデューサーも一緒にな!!』
「はい!それじゃあそろそ」
『あ、なぁプロデューサー!もう1回言ってくれないか?』
「何をですか?」
『俺の名前。』
「!?………それじゃあおやすみなさい、輝さん。」
『へへっありがとな!おやすみ、プロデューサー!』
通話が切れると待ち受け画面が写し出された。今年の新年会で撮った315プロのみんなとの写真だ。先程の電話相手の笑顔を確認し、電話の前にした溜息とは違う、大きな深呼吸をして、操作を待っていたパソコンに手を伸ばした。
相愛までにはあと一歩。