星に誓う。


ドラマのロケのため、海辺の町に泊まりで来ている。一日のスケジュールを終えて、部屋で仕事をしていたら携帯の着信音が鳴った。着信表示を見て驚き、すぐに電話に出る。

「もしもし、プロデューサーさん。」
声の主は都築圭。先日、やっとこの携帯への電話の掛け方を覚えてくれた人だ。

「どうしましたか?」
「少し、君の時間を僕にもらえないだろうか。」


電話を切ってすぐ、作業していたものはそのままに急いで部屋を出る。

“折角だから海辺を散歩でもしないかい?”

耳に残る優しい声が、私の足を急がせた。エレベーターを降りて、少し遅い時間だったため、静かなロビーを抜けて外へ出ると、目の前には昼間見た景色とは違う世界が広がっていた。近くにあまり建物がないため、人工の光が少ない。白い波が優しい音を響かせる中、目に飛び込んできた満天の星空。

砂浜に佇む電話の主を見つけた。暗闇の中、無限に広がる海に、星空に、消えてしまうのではないかと、砂に足を取られないように彼の元へ駆け寄る。名前を呼ぶと振り返り、柔らかな笑顔で迎えてくれた。その笑顔が不安を和らげてくれたことを、本人は全く気付いていないだろうけれど。

「すごいですね、こんな星空初めて見ました。」

「良かった。君に見せたいなって思ってね。」

時々子どもみたいに無邪気に笑うことがある。スカウトしたすぐの頃には見られなかった笑顔だ。これはきっと、麗さんと出会えてからの時間が、そして315プロの仲間との時間が見せてくれるようになったのだと思う。その一端を担えていたら嬉しいなと、心の片隅で思う。

「ありがとうございます。声を掛けてもらえて嬉しいです。」
その笑顔を曇らせないよう、出会った頃の様に戻ってしまわないよう、“プロデューサーとして”精一杯支えていきたい。そんな決意をこの星空に誓う。


「それと、素敵な音楽が溢れてくるから落ち着かなくてね、君にそばにいてほしかったんだ。」

星空の中、一粒の星が流れていった。

「ひとつ、この星空に誓いたいことがあるのだけれど、聞いてくれるかい?」

気が付くと優しく笑うその人が、私の頬にそっと触れて涙を拭ってくれていた。