ねぇ
雑誌の写真撮影日。今は悠介が一人で撮影中。監督は俺の前にある机を挟んで軽い打ち合わせ中で、途中、悠介の様子を伺っているから、その度に監督の髪が優しく揺れる。俺も悠介と監督を交互にぼんやりと眺めながら待っている。
悠介を見る監督の横顔が見えると、今まで声に出したことはない質問がチラチラと心の中で揺れている。本当は聞きたいけど、聞いてしまったら今までと同じには戻れないと知っているから。
打ち合わせ相手が離れて一人になった監督の背中にそっと手を伸ばす。彼女のひとつ結びされた髪を自分の指にくるくると絡めて遊びながら、
「ねぇ、監督。」
小さな声を掛ける。振り返った彼女は優しく微笑んでいた。
いつか俺だけを見てほしい。
「享介くん?どうしたんですか?具合悪いですか?」
心配そうな顔で俺を見つめる。
ダメだなぁ、そんな顔させちゃ…。
「ぜーんぜん!俺、元気だよ!」
とびっきりの笑顔を向ければ安心した顔になった。大好きな、大好きな笑顔。
ねぇ、監督。
好きになるって、こんなに苦しいんだね。