名前のないメロディ
※『君の隣で愛しい時間』の後のお話です。
「ふふん〜ふふ〜♪」
明るい鼻唄と共に、事務所のあるビルの階段を上る。
打ち合わせのために事務所にやってきたのだが、(珍しく)約束の時間に合わせて来ることが出来た。
事務所のドアを開けると、部屋の中は しんっと静まり返っていたので足が止まる。
「麗さん?プロデューサーさん?」
絶対にいるはずの2人の声がしない。
不思議に思いながら部屋の中を進むと、ソファに見慣れた後ろ姿が見えた。
「麗さん」
と、その後ろ姿に安堵して、声を掛けながら近づくと、麗の横には麗の肩に頭を預けているプロデューサーの後ろ姿が見えた。
反応が返ってこないということは眠っているのだろうか。
「ふふっ、2人ともお疲れ様」
と労いの言葉を送り、微笑んだあとに、何故だか胸がぎゅうっと締め付けられた。
「あれ…これは、なんだろう?」
突然襲われたその痛みは言葉に出来なくて、苦しくて、思わず苦笑いをしてしまう。
心の中に湧き上がる音楽は今までにないメロディで、少しだけ涙が出た。