11
沖田総司side
「惣次郎君に一君。二人とも大きくなったね」
この少し低くて綺麗な声も、穢れのない空色の瞳も、絹のような銀糸の髪も。
十年前とまったく変わらない姿で、彼女は笑った。
「運のないやつだ」
土方さんが、もう一人の目撃者に刀を突きつける。
…あれも女の子だよね。
けれど、その子と土方さんの間に割ってはいる者がいた。
『駄目ですよ』
「お前は………!? ゼロ!!」
あ、あの男までいるのか。
ゼロ君は有無を言わせぬ笑顔を浮かべ、土方さんの刀を素手で押しのける。
「としぞー君」
「香耶!?」
ひさしぶり、と言いながら香耶さんは刀を鞘に納めた。
土方さんも、ゼロ君と後ろにいる女の子にちらっと目を向けてから、ちっと舌打ちしてそれに倣う。
「え………?」
女の子は間抜けな声を出して目を瞬いた。
「あれ? いいんですか、土方さん。その子、さっきの見ちゃったんですよ?」
「いちいち余計なこと喋るんじゃねえよ。下手な話を聞かせちまうと始末せざるを得なくなるだろうが」
言って土方さんはもう一度ゼロ君と女の子に視線をやった。
「とにかく殺せばいいってもんじゃねえだろ。こいつの処分は帰ってから決める。香耶も来てもらうぞ」
「はーい」
「俺も副長の意見に賛成です。長く留まれば他の人間に見つかるかもしれない」
僕は香耶さんの手を取った。ふり向いた彼女の綺麗な双眸が僕の顔を映しこんで、僕の気分は上昇する。
「? どうしたの」
「逃げられないようにだよ」
言いながらぎゅっと彼女の華奢な手を握った。
隣では一君がもう一人の女の子の腕を掴んで歩き出す。香耶さんは、それを見たあと僕に握られた手を見て、ふぅん、と一応納得してされるままになっていた。
こうして僕達は、三人の目撃者を連れて屯所へと向かったのだった。
屯所への帰り道。
香耶さんはしきりに頬を気にしている。顔についた血が乾いて不快なようだ。袖でごしごし擦ってもまだ気がすまなかったみたい。そのうち爪を立ててがりがりと掻き始めたところで、僕はその手を押しとどめた。
「ちょっと。そんなことしたら傷がつくでしょ」
「んむ……でも」
「屯所に着いたら洗わせてあげるから。ね?」
「…わかった」
口を尖らせて不快感をあらわにする様子は子供みたいで可愛い。そう言えばこの人いくつなんだろ? 十年前も知らなかったけどさ。
十年前とここまで外見年齢変わらないとすごく気になる。化粧もしてないのに。肌も子供の肌みたいにぷりぷりしてるし。
「そういえば香耶、あんたは一体いくつなのだ?」
あ、訊いちゃったよ一君。一君も同じことが気になったんだろうね。気持ちは分かる。
でも案の定、香耶さんは聞かれたくない事を聞かれたといったていで目を泳がせた。
「私は………ハタチだ」
『ぶっ』
いやウソでしょそれは。逆算すれば僕より年下とかありえないと思うんだけど。ゼロ君噴き出したしさ。
その反応だとゼロ君は彼女の本当の歳も、歳をとらない訳も知ってるんだよね。それどころか、香耶さんの事なら僕よりも何でも知ってる。長年一緒に旅してきたんならそんなこと当たり前だけど…なにこれ、おもしろくない。
けれど、もしも香耶さんに今日始めて会ったんだとしたら、十代って言われても信じるだろうね。
「……不躾だったな。すまない」
もう遅いよ。一君。