20
沖田総司side
闇の中を白刃が煌めく。
「貴様の腕もこの程度か」
僕は池田屋の二階で、金髪の浪士と対峙していた。
「さて、そろそろ帰らせてもらおう。要らぬ邪魔立てするのであれば容赦せんぞ」
「悪いけど、帰せないんだ。僕達の敵には死んでもらわなくちゃ」
相手の剣は我流だ。剣技では僕のほうが優っている。
なのに、圧される。奴の剣は、あまりにも速くて、重い。
でも、僕は負けるわけにはいかないんだ。
晴眼から打ち合って離れ、浪士の袈裟斬りを半身でかわして、そのまま刺突の構えに入る。三段突きの構え。しかし浪士は僕にそれを打たせないよう片手で逆袈裟に切り上げて、僕がそれを受ける。
あまりの馬鹿力に体制を崩した。浪士が刀を振り上げる。
まずい!
「させるかあああああ!!!」
ぎぃん!!
浅葱の羽織の誰かが、僕をかばって浪士の白刃を受け止めた。僕はとっさに刀を引く。
今の声は………!
「こしゃくなっ」
ばきっ、という音と同時にそのひとは、浪士にみぞおちを蹴りつけられて、床柱に叩きつけられた。
「ぁがっ!」
「っ香耶さん!!!」
着込んでいた腹当が割れていた。かがんで咳き込む彼女の錏の隙間から、銀に輝く髪がこぼれ落ちる。僕はそんな彼女を背にかばって再び刀を構えなおした。
しかし目の前の金髪の浪士は、目を見開いて固まっていた。
「香耶………だと?」
「ち…ごっほっ…ごほっ…ちがいますぅ」
何言ってるの、香耶さん? 話が見えないので僕は黙っておく。
香耶さんは這うように自分の刀を拾いに行って、それを慌てた様子で背中に隠した。
浪士はそれを目で追い、眉をひそめて呟く。
「それは“狂桜”か……?」
「しまった………違う刀にするんだった」
「知り合いなの?」
僕の問いに、香耶さんは苦虫を噛み潰したような顔で頷いた。
「貴様、よもや月神香耶ではあるまいな?」
「そっちこそ、風間千景くんじゃあ あるまいね?」
あるまいねって……。
「……ばかな。二十年前と少しも容姿が変わらぬではないか……」
「……まさか二十年前もハタチだったの?」
このひとの事ならもう何でもありだからで納得しちゃうよ。
「だから嫌だったんだ。君に会うと歳がばれる。私はそういう生き物だと思ってくれ。つまり、不老不死に近いものなのだと」
不老不死。永遠に老いもせず死ぬこともない……。
「そんなことより、君とはもっと違う再会のしかたをしたかったな。ちかげ君」
彼女は綺麗な微笑で、愛刀“狂桜”を構えた。