06

月神香耶side



目を覚ますとそこは見覚えのない部屋だった。

『お目覚めですか』

といつもの笑顔で聞いてくるゼロ。

……あれ、なんでいるの。彼には命令がない限り出てくるなって言っておいたはず。
あ、そうか。溺れた私を助けてくれたんだ。

「香耶」

部屋の外で私が目覚めるのを待っていたらしい歳三君と惣次郎君も、顔を覗かせた。どうやら試衛館に連れ戻されたらしい。

私は布団の上で居住まいをただした。

「香耶」

としぞー君にもう一度呼ばれてそちらを見ると、彼は笹の葉に包んだ握り飯を差し出した。
うわ、おかかとおしょーゆの匂い。
私はほくほくとそれを受け取って、包みを開けてかじりついた。

「香耶さん、この人」

惣次郎君は私のためにお茶を入れながらゼロを指差して


「従者婿ってほんと?」

「ぶっっごほっ!!」

と訊いて来た。
私は盛大に咽せながらゼロをねめつけるも、奴はそ知らぬ顔であさってのほうを見やっている。

おい、だれが婿だって?


「ちがっごほっごほごほ………違うわ!! こいつはただの背後霊!」

『ええー!? 香耶さん酷っ!!
昼も夜もどんなときも一緒にいるのに! 僕たちお互いの身体にあるほくろの数だって知り合ってる仲じゃないですか!』

「紛らわしい言い方すんなっ!!」

もはやこいつは私に取り憑いてるといっても過言ではない。私の精神世界に遁甲中は、私の経験はすべてゼロにも共有されているし。姿を自由に変えられるはずの精神生命体のゼロの身体にほくろがあるとは思えない。
だからゼロが言ったことは間違ってはいないのだが。

惣次郎君は暫し唖然と事の成り行きを見ていたが、ややあって

「ねえ、それじゃあ斬っていいかな」

とそのかわいい顔に物騒な笑みを貼り付けて訊いてきた。

「私からもおねがい」

『ちょ、香耶さ…ぎゃぁあああ!!!』

私の即答で、惣次郎君は抜き打ちでゼロに斬りかかった。
だって濡れた私の服を着替えさせたの、ゼロなんだろうしね。
まあ、ゼロは実体があるといっても濃度の高い霧みたいなものだし、普通の刀で斬られたところで傷ひとつ付かないのだけれど。

本気の鬼ごっこが繰り広げられている庭を眺めながら、私はとしぞー君と食後のお茶を酌み交わしていた。

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