※セイバー達はいるけど平和な世界軸。衛宮さんちの今日のごはんのような世界。
「士郎、ただいまー!お、良い匂い!」
「#name#、おかえり。ご飯はもうちょっと待っててくれ」
衛宮家の扉を開けると、良い匂いが玄関まで漂ってきて、ペコペコな状態の私のお腹を刺激する。広い廊下を抜けて台所まで行けば、エプロンを付けて台所で料理をしている士郎、という見慣れた光景が目に入る。
「この匂いは…肉じゃが!やった!私肉じゃが大好き〜!」
「知ってるって。じゃがいもが安かったからいっぱい買ってきたんだ。味噌汁にも入れてるからな」
「じゃがいもパーティーだね!セイバーちゃんとか喜び…あれ?そういえばみんなは?」
セイバーちゃんとこの喜びを分かち合おうと振り向いたが、それは空振りに終わった。普段ならセイバーちゃんや藤ねぇや誰かしらが後ろでご飯が出来るのを待機しているのだが、今日は食卓には誰の姿も見えなかった。
「あぁ、今日はセイバーはランサーと漁船で釣りに出かけるとか言ってさっき出てったぞ。明日の朝帰ってくるって」
「おー!お魚楽しみ!」
「あと桜と遠坂は今日は来れなくて…藤ねぇも親戚の集まりがあるって言ってたな」
「じゃあ今日は私と士郎だけなんだね〜。2人きりでご飯食べるの久々だね!」
「…お、おぉ、そうだな。ほ、ほら!早く手洗って来いよ」
「は〜い」
士郎に言われた通り、私は大人しく手洗い場へと向かう。衛宮家の長い廊下を歩くのはこの季節はとても寒くて辛いが、もう慣れた事でもあった。
私はここに住んでいるという訳ではなく、直ぐ隣に住んでいるだけの士郎の昔からの幼馴染である。昔から衛宮さん家にお世話になっていて、私の両親はどちらも仕事が忙しく中々帰ってこれないという事で、こうしてお互い高校生になった今も衛宮家にご飯をご馳走になっているという訳だ。それならばいっそここに住んでしまえばいいとも言われたが…。
「(そんな事したらヒロイン達とのフラグが無くなっちゃうかもしれないしね…!)」
そう。実は私は前世でここ、冬木が舞台になっているゲーム、Fate/stay nightをプレイした事があるのだ。前世であっけなく死に、前世の記憶を持ったまま生まれ変わったと思ったら、何とそこはFate/stay nightの世界だったのだ。…いや、私にも何が何だか分からないが、事実なのだからしょうがない。
この街の名前が冬木市だという事、隣の家の歳が近い男の子が衛宮士郎という名前だった事や、そのお父さんが衛宮切嗣という名前だと聞いた時に、この世界はFateの世界なのだと気が付いた。
最初は混乱したが、自分の近くで好きなキャラ達が動いて喋ってくれるんだ、と思えば細かい事はどうでもいいだろう。所詮オタクだからね、自分がFateの世界に来れるだなんて、正直ラッキーだと思っている。1回死んで図太くなったとこもあるのだろうが。
とにかく、まだどのヒロインとくっつくかは分からないが、この世界の主人公である衛宮士郎の恋路の邪魔をしないようにしなければならない。私はちなみに前世では凛ちゃんが好きだったので凛ちゃん推しであるが…まぁ実際、どの子も可愛いし良い子ばかりだから、誰とくっついてもいいんだけどね!
「士郎隊長!味見係参りました!」
「はいはい。じゃあ#name#にはじゃがいもがちゃんと煮えてるかどうか確認してもらおうかな」
「お任せください!」
そう言って口を開ければ、士郎は驚いたように目を見開く。
「!?お、俺が食べさせるのか!?」
「?うん、早く早くー!」
そう急かせば、士郎は恥ずかしいのか何なのか顔を赤くさせ、暫くすれば観念したかのように私の口にじゃがいもを放り込む。
「あつっ、あつっ…。ん〜!良い感じに煮えてて美味しいー!やっぱ士郎は天才!五つ星あげちゃう!」
「シェフじゃないけどな。美味しかったのなら良かったよ。もう少し煮てから完成な」
「はーい!早く食べたいな〜」
「じゃあその間味噌汁の仕上げを手伝ってもらおうかな。まだお味噌入れてないからさ」
「了解〜!」
***
「はい、士郎。緑茶で良かった?」
「あぁ、洗い物もありがとうな」
「いえいえ、ご飯作ってもらってるんだから洗い物くらいはしますよ〜」
料理があまり得意ではない私の代わりに士郎が料理を作ってくれているので、洗い物は私の役目である。手間暇を考えれば作る方が大変だろうから、こちらこそ申し訳ないが、いかんせん料理は出来る気がしないので許してほしい。というか、士郎が作ってくれた方が早いし安いし美味しく仕上がる。女子としてそれで良いのか?というツッコミは控えてもらおう。
縁側で月を眺めている士郎にお茶を渡し、私も横に座らせてもらい、一緒にお茶を飲む。昔から切嗣さん含め、縁側でゆっくりする事が私達は好きだ。その光景はまるでおじいちゃんおばあちゃんの様だが、この時間が何よりも心地よい。
セイバーちゃんが召喚されてからというもの、色々な人々との出会いも増え、忙しい日々が続いていたためか、最近2人でいる事が少なかった。みんなでワイワイするのも楽しいが、こうして士郎とゆっくりする時間も私には必要だ。彼は好きなキャラクターである前に、私の大好きな幼馴染なのだから。
暫く2人で月を眺めてから、私は何となく考えていた事を口にした。
「士郎ってさ、好きな子とかいないの?」
「!ブッ!」
私の言葉に、お茶を吹きかける士郎。そんなに変な事を言っただろうか。
「な、な、何だよ、いきなり…!」
「え、いや純粋に疑問に思っただけだけど…。士郎は女の子の知り合いも増えたし、男子高校生なんだから好きな人の1人や2人いるでしょ〜?」
「2人いるのは駄目だと思うけど…」
士郎は顔を赤くさせ、俯く。あら、まだ士郎にはこういう話は早かったのかな…。前世で若くして死んだとはいえ、精神年齢で言えば彼よりも上なので、つい近所のおばさんの様にお節介になってしまうのは私の悪い癖である。
「い、いる、けど…いや、1人だけどな」
「お!ほんと!誰誰!?どんな子!?」
そう思っていれば、意外にも、彼はもうどのルートに行くのか決めたみたいだ。思わず私は彼に詰め寄る。
「えっと…、一緒にいて、落ち着く人で、いつも俺を褒めてくれて」
落ち着くって事は桜ちゃんとか?桜ちゃんはよく士郎に料理を習いに来てるし、男の子からすると褒めてくれる女の子ってやっぱいいよね!
「普段はしっかりしてるのに、偶に抜けてて、放っておけなくて、でも人を見捨てられないお人好しで」
お、それとも凛ちゃんだろうか。確かに凛ちゃんはしっかりしてるけど抜けてるところもあって可愛いよね〜分かる分かる。
「…俺の料理を美味しそうに食べてくれる姿とか、が、好きだ」
おー!もしやこれはセイバーちゃんかな?やっぱ王道ルートに行くのかな〜。セイバーちゃんは可愛いしキリッとしてるけど、ご飯を食べてる時の幸せそうな顔はギャップがあって良いよね〜。
本人がここにいるわけでもなかろうに、顔をこれとないくらい赤くさせる士郎。好きな子の名前をもう聞いちゃいたいくらいだけど、可哀想だからこれくらいにしておいてあげよう。いやぁ、青春だな〜と私は頬を緩ませる。一体士郎はどの子とくっつくのか、とても楽しみである。
BGM:エプロンボーイ/DJみそしるとMCごはん
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