どんな生き物にも等しく
終わりはやってくる。


Selene



ウインディと戯れている姿を見て
あんな優しい顔も、するんだなって。
私もその優しくされる対象になりたいって
そう思ったのが始まり。

仲良くなりたくて、何度も何度も近づいて
避けられても避けられても
めげてまるか!と頑張っていたけれど
一度だけ、めげそうになったことがある。

その日もユエを探して
どうせいつもの木陰にいるだろうとそちらに向かった時。

綺麗な黒髪の女性(のちにダークのカードとわかる)が
ユエに寄り添っていて
ユエもダークをあしらうことなく、優しい顔をしていて

胸が、痛んだ。

その時初めて自覚した。

そっか、私
ユエが好きだったんだ。



押しても押してもだめなら
ちょっと引いてみよう。

考えたのは、単純な方法。

急に私が会いに行かなくなったら
寂しく思ってくれないかな
なんて

そんな作戦はまさかの大成功。
これには私もびっくりした。

それからユエのそばにいられるようになって

私の好きの気持ちは大きくなるばかりで


だから
18歳の誕生日に指輪をもらった瞬間は
本当に幸せだった。

本当に本当に
幸せだったの。


ユエの隣に

ずっといたかった。






「私の前からいなくなるんじゃない。」

クロウ・リードの屋敷で
ベッドに横たわる私の手を、ユエが力強く握る。

もう長くはもたないだろう
と、先生から言われたのはつい先日。

魔力を暴走させるたびに
その代価として命を削っていたようだ。

もっと早く、あなたをみつけられていれば

先生は泣いてくれた。

「クロウ!!どうにかならないのか!」

ケルベロスの言葉に、先生は静かに首を横に振った。
どうにかできるものなら、どうにかしてくれただろう。
この偉大な魔術師なら。

「先生、お願いが・・あります。
 私、またユエの近くに、生まれ変わりたい。」

「遊威・・っ!そんなことを言うな!!」

ユエ、あなたを悲しませてしまってごめんなさい。
私だって、まだあなたのそばにいたかった。

「私と遊威の力を合わせれば
 ユエの近くに生まれ変わらせることはできるでしょう。
 でも、記憶を引き継ぐことは難しいですよ。」

先生の言葉に、こくん、とうなづく。

わかってる。
たとえ生まれ変わったって
それはもう私ではないことくらい。

それでも、私は

「そうですか・・・
 そこまでの気持ちがあるのなら」

先生は私の額と空いている方の右手に手をかざした。

「この指輪は、あなたの大切な物ですね。」
「はい、」
「遊威・・・」

ユエの頬を涙がつたう。

「記憶をこの指輪に移すくらいなら
 私にもできるでしょう。」

先生の手がじんわりと温かくなって
だんだんと、意識が薄くなっていく。

「遊威!遊威!!!!」

あぁ、私あなたの笑顔が大好きなのに。

ユエ、笑って

「また、会いに行くから・・・・」

何年後かわからない未来。

そのときまで、ユエが私を待ってくれている保証なんて
どこにもない。

それでも

私はまたあなたと生きたいのです。


最後に感じたのは
唇に触れた温かさだった。




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