恋の荒療治



芝生に寝転がり空のまぶしさに目をしかめていたら
私の顔の上に誰かの影が重なった。

「何してるの」

ちょっと首を動かすと、私を見下ろすサンジくん。

「雲、見てたの。」

そっか、とサンジくんは隣に腰をおろした。

手には私の大好きなドリンク。

受け取るために、私も身体を起こす。

「何か面白いものはあった?」
「んー、特に」

特別何かがあるわけじゃなくて、ただぼーっと、雲の流れを見ていたかっただけ。

そんな暇があったら鍛錬しろ、ってゾロには怒られちゃいそうだけど。

「サンジくん・・・?」

珍しく、サンジくんが芝生に寝転がる。

これはレアな光景かもしれない。

右腕を枕にして空を見上げながら、サンジくんは左手で隣の芝をぽんぽんと叩いた。

意図を察し、私も隣に再度寝転がる。

「何か、見えた?」

先ほどまぶしすぎた太陽は、もう雲の向こうに隠れているようだ。

「なんもねェけど、これがユイちゃんに見えてる世界なんだなァ、って」
「意味わかんない。」

思わず笑ってしまう。

サンジくんは笑われたことも意に介していない様子で、視線をこちらに向けた。

「ユイちゃんと同じ景色を見たい、ってそう思っただけ。」

また、キザなことをこの人は。

「可愛い。」

頬に触れたサンジくんの手が冷たくて、そこでやっと私は自分の顔に熱が集まっていることに気づく。

「な、なに言って・・っ」

慌ててサンジくんに背中を向ける。

後ろでサンジくんが笑っているのが聞こえた。

「こっち向いて。」
「サンジくんもこっち向いてればいいじゃん、私と同じ景色、みたいんでしょ。」
「なるほど、そうきたか」

また、サンジくんが笑う。

背後でサンジくんの起き上がる音がして、視線を動かそうとすると同時に、横になっていた私の肩が芝生に押さえつけられた。

私の視界はサンジくんでいっぱいになる。

「同じ景色もいいけど、見つめ合えたらもっと最高。」
「・・っ・・」
「・・・真っ赤」

サンジくんは楽しそうに笑いながら私の頬をなでると、身体を起こした。

「じゃ、また昼飯の時間に」

平然とその場を去るサンジくん。

「なん・・だったの・・」

火照りの引かない顔を、私は両手で覆った。


こんなの男の人として意識してしまう

(仲間のままでいたくないから、ちょっとだけ荒療治)










***あとがき***

また気の赴くままに書いてみたやつ。
サンジくんの片思いです。


2019.06.10


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