きみの指に甘える


この島の砂浜にはね、普通より大きな星の砂が落ちていて、7つ集めると願いが叶うっていう伝説があるんだよ。

クルー皆で島を散策中、ばあさんからそんな話を聞いた。
ナミさんやロビンちゃんがそれなりの反応を示す中、ユイちゃんは誰よりも目をキラキラと輝かせていた。

そのあと皆で買い物をしたり、食事をしている間も、気がつけば砂浜の方を見ているユイちゃん。

「叶えたいことがあるの?」
「え?」
「ずっと砂浜の方、見てるね。」

みんながそれぞれの買い物に行くため解散し始めるタイミングで、ユイちゃんに声をかける。
バレていないと思っていたのか、ユイちゃんは顔を赤くした。

「星の砂、一緒に探しに行こうか。」
俺の言葉にユイちゃんが目を見開く。

「一緒に探してくれるの?」
「もちろん。」
「ありがとう!」

そうそれ。
その嬉しそうな顔に俺は弱いんだ。



他愛ない世間話をしながら、浜辺に向かう。

「サンジくんの買い物はもう大丈夫だったの?」
「昨日のうちにもう済ませちまったから。」

そっか、とユイちゃんがほっとした顔を見せる。

「集まったら何をお願いするの?」
「・・内緒」
「気になるなァ」

ユイちゃんは、両手を口元にあてて小さく笑った。
教えてはくれないけれど、なんだか楽しそうだから、それだけで俺は満足だ。

「よし、探すか」

到着した真っ白な砂浜で、星の砂探しを開始。
ユイちゃんと並んでしゃがみ込み、砂に目を凝らす。

よほど真剣に探しているのか、ユイちゃんの口数は、だんだんと少なくなっていった。
耳に届くのは、波の音と、海鳥の鳴き声。
時々、遠く彼方から、ルフィの声が聞こえるような気がしないでもない。

頼むから、こっちには来ませんように。

二人の時間を邪魔されてたまるか。

「サンジくんっ」

顔をあげると、ユイちゃんがキラキラした目で、手にもった何かを俺に向ける。

「あ、もう見つけたんだ。」
「うん」
「じゃぁあと6つ頑張って探そう。」
「うん!」

ユイちゃんの喜ぶ顔が見たくて、俺もさっきよりも真剣に目を砂に向ける。

ユイちゃんの願いはなんだろうな。
喜んでくれるならそれでいい、という気持ちも本音だけれど、やっぱり気になる気持ちも捨てきれない。

安全祈願か、叶えたい夢があるのか、それとも・・・

好きなやつがいる、とか。

それが俺だったらいいのに、なんて邪念が邪魔したのか、結局俺が見つけられたのは、1つだけだった。
他4つはユイちゃんが見つけ、あっという間に残りはあと1つ。

思っていたより、星の砂は簡単に見つかるらしい。
ユイちゃんと二人の時間をもっとゆっくり楽しみたかったんだけど。

探す手を止め、真剣な顔で砂に目をこらすユイちゃんの横顔を眺める。

・・・楽しそうな顔見れたからいいか。

「あった!」

最後の1つをユイちゃんが拾い上げた。

あぁ、終わっちまう。

「結局ユイちゃんがほとんど見つけたな。お役に立てず、申し訳ない。」
「ううん、一緒に探してくれてありがとう」

俺が探すの下手くそなのか、それともユイちゃんが上手いのか。

「願い事、叶うといいな。」
小さな声でユイちゃんが呟く。

「内容はやっぱり内緒?」

改めて尋ねると、ユイちゃんはじっと俺の目を見た。

「ユイちゃん?」

そんなに見つめられると照れるし、勘違いしちまうんだが。

「内緒です」

ユイちゃんが赤い顔で笑った。

「・・・っ!」

何、その可愛いの!!!

思わずユイちゃんをぎゅっと抱きしめたくなって

でもまだダメだ、と堪える。

伸ばしてしまった行き場のない手は、そっとユイちゃんの髪を耳にかけた。

顕になった耳は赤くて

「どう、したの・・・?」

戸惑ったように尋ねるその頬も同じように赤くて

「サンジ・・・くん?」

髪を梳くって、その先に口づける。
ユイちゃんの気持ちもわからないのに、触れちゃだめだ、って我慢してきたけど。

「いやだった?」
「いやじゃ、ない、です」
「ならよかった」

もういいか、と開き直ってみる。

「そろそろ戻ろうか」
「う、うんっ」

そのまま、ユイちゃんの手を取って。
ユイちゃんの手を引き、船に向かって歩き出す。

軽く添える程度の指先。

いつ離れたっておかしくない。

もしその気がないなら、今すぐにでも振り払ってほしい。

俺から離すことなんか、出来そうもないから。

「サンジくん・・・手・・・」
「砂浜、歩きにくいだろ?」
「うん」

ユイちゃんの指に少しだけ力が込められたのを確認して、手を握り直す。

ユイちゃんの指が、ぎゅっと俺の指を握った。

バレないように、船までの道はちょっと遠回りをして


君のに甘える


(熱いのは俺の指か、君の指か
 もうわからない。)









***あとがき***

リク:両片想いの甘いお話。
   ヒロインは落ち着いた大人しい感じ

ということだったのですが
これで大丈夫でしょうか?汗汗

落ち着いた大人しい感じ、というより、ただ引っ込み思案の女の子になってしまった感が否めず・・・。
申し訳ありません・・・。

私に「落ち着いた大人しい」要素が皆無のため・・自分にない要素を出すのって難しいですね・・・。

こんなかんじになってしまいましたが、楽しんでいただけていましたら幸いです。


2019.07.04

title:星が水没


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