うずくふたつ目の心臓
時々、怖くなる。
私はいつまでローの隣にいられるだろう、って。
「ロー?」
浮上させた潜水艦から外に出て、大好きな人の姿を探す。
いつだってローは私の前を歩いていて
どこまで行っても、私はその背中を追いかけるばかり。
頼もしい背中が、時々妙に遠く感じる。
「ロー、どこー?」
いつか、いつか
私のことを置いて、どこかへ行ってしまうんじゃないかって
不安が胸を襲う日もある。
「ロー・・・」
今日はまさにそんな日で。
ただローが視界にいないだけで、なぜかこんなにも不安に駆られる。
歪む地平線。
ぐす、っと鼻をすすっていると
「room」
愛しい人の声とともに、私の身体は半円に包まれた。
一瞬にして、私はローの腕の中へ。
あぁ、よかった。
今日もローはここにいる。
私は、ローの隣にいる。
「?」
疑問符を浮かべながら、ローの指が私の目元に触れた。
「どうした」
「なんでもない」
ローの首の後ろへと手を回し、ぎゅっと抱きしめると、ローの長い腕が私を抱きしめ返した。
ローの匂い。
ローの体温。
私を何よりも安心させる場所。
「どうせまた不安になったんだろ。」
「・・・うん」
ふっ、と耳元で笑う声がする。
「・・・馬鹿にしてるでしょ」
「・・少しな」
私を抱きしめたまま、ローの手がゆっくりと後頭部を撫でた。
「おまえを置いてどっかに行くことなんかねェ。何回言ったらわかる。」
胸の内を温める言葉。
思わずぎゅーっと腕に力をこめる。
「ロー、大好きだよ。」
ぴくり、とローの手が一瞬止まって
またすぐに後頭部を撫で始めた。
くっついた身体から
トクン、トクン、と規則正しい音が聞こえてくるけれど
これは私の音か、それともローの音か
溶けあって、まじりあって
もうわからない。
「このままローと一つになれたらいいのに」
そうすれば、もう不安を感じることもない。
置いて行かれる不安も
ローをいつか失うんじゃないかって、不安も。
どんな言葉をもらっても、いつも無茶をするこの人を好きでいる限り、不安がなくなる日はこないのだろう、とそう思う。
「ユイ」
ローが私の肩に手をやり、身体を離そうとするけれど
離れていく体温が寂しくて、ローの首へと頬を摺り寄せた。
「ユイ、こっちを向け」
ローの右手が顎に添えられる。
優しく導かれるままに顔を移動させると、ローの真っすぐな瞳と目があった。
隈の目立つ、するどい、目。
最初は怖かったこの目も、今は愛おしい。
「不安になるなら、そのたびに言ってやる。俺はおまえを置いてどこかに行ったりなんかしねェ。俺がおまえを守る。だからずっと俺の隣にいろ。」
わかったか、と聞かれ頷くと、ローの顔がさらに近づいた。
ちゅ、と軽いリップ音がして、ローの薄い唇が瞼に触れる。
「ロー」
今度は頬へ
「好き」
次はこめかみ
「愛して」
愛してるの言葉は最後まで紡ぐことが出来ないまま、ローの唇が重なった。
「ユイ・・・」
「ん・・」
息継ぎの間に名前を呼ばれるたびに
心臓がぎゅ、っと締め付けられて
重なっていた音が、少しだけ、ずれた。
うずくふたつ目の心臓
ひとつだけじゃ、もう生きられない
***あとがき***
モモ様に捧げます。
リク内容:ローの恋人設定で、甘いお話
いつものストーリー調とは少し違いますが、いかがでしょうか・・・?(ドキドキ)
ストーリー調のお話をご希望でしたら申し訳ありません・・・!汗
ひたすらに好きの気持ちを溢れさせてみました・・・!
実際恋人だったら、死と隣合わせ過ぎて不安になるんじゃないかなぁ・・・と。
ローさん単独行動多いですし・・・。
気に入っていただければ幸いです。
2019.10.30
title:シュロ
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