心地好くも愛おしい
「ナミ!!大変!!服がない!!」
「あるじゃない。」
「ないよ!」
「ナミ、ユイが言ってるのはデート用の服じゃないかしら。」
今回はゆっくりできそうだものね、とロビンが小さく笑うと、ナミもつけていた航海日誌から顔を上げた。
そう、明後日は久々のサンジくんとのデート。
最近着いた島では、海軍も立ち寄っていたり、嵐に巻き込まれたりでなかなかゆっくりできず、買い出しのついでデートくらいしかできていなかった。
さっきミニメリーで偵察にいったウソップから、今回は海軍の姿はないから2〜3日はゆっくりできそう、と聞いたときに嬉しかったのは、私だけじゃなくてクルー全員だろう。
とはいえ何が起こるかわからないから、明日は必要物資の買い出し、デートは二日目にしよう、とサンジくんに言われたのはついさっきのこと。
デートは一日目がいいな、という気持ちもあったものの、私もやっぱりサンジくんがいると買えないものもあるから、と自分を納得させ、何を着て行こうかな、と考えているうちに、冒頭に戻る。
「あぁ。貸してあげましょうか?」
「ほんとっ?じゃぁ・・・あー・・・でも・・・」
思わずお願いしそうになったのを、留める。
サンジくんのことだから、きっとナミの服だとバレるだろう。
それじゃ、だめだ。
だってデートだもの。
「明日、買いに行こうかな・・・・。」
「そうね。あんたの服色気ないのばっかりだし、これを機に新調してもいいかも。」
「色気ないって・・!!」
今持っているスカートに合わせるなら、こんなかんじがいいんじゃないか
とか
それでもやっぱりユイにはセクシー系は似合わないか
とか
しばらく私はロビンとナミの着せ替え人形になったのだけれど
ナミからこっそり貯めていたお金の一部を援助すると言われれば、されるがままになるしかない。
それに私のデートのために二人が楽しそうに服のシュミレーションをしてくれるのはなんだか嬉しくて、わくわく感はさらに募った。
そして島について2時間後
「おまえ何してんだこんなとこで。」
昨日のシュミレーションに従ってワンピースやら、新しいスカート、トップスを購入して店を出ると、そこでばったりゾロと出会った。
「いや、うん。それはこっちのセリフだね。」
何してるの、こんな女物ばっかり並んだ場所で。
「俺は散歩してるだけだ」
「はいはい、どうせ迷子でしょ。船まで連れて帰ってあげるから、これ持って。」
軽い紙袋3つを残し、そろそろ持つのがつらいな、と思っていた紙袋の山をゾロに押し付け、歩き出す。
「ちょっと待て!なんで俺が・・!」
「トレーニングトレーニング」
ゾロは大きくため息をつくと、それでも荷物は軽々と持ちながら私の後ろをついて歩き出した。
さすがだなぁ。ナミに頼まれた化粧品なんかも入っているから、なかなかの重さのはずなのに。
鍛えても鍛えても筋肉のつかない自分の細腕とゾロの腕を見比べていると、ゾロの向こう側にアイスクリーム屋さんの看板が見えた。
「あ、あのアイス食べたい。」
「おー、そうか・・・グェッ」
通り過ぎようとするゾロの襟を後ろからつかむ、とゾロがひしゃげた声を上げた。
あ、ごめん、力いれて引っ張りすぎたかも。
「はははー。」
「ははは、じゃねェ。」
紙袋を持っていない方から、私の頭に軽く拳骨が落ちる。
「痛いー!ゾロひどいー!」
まぁ、本気で殴られたわけじゃないけどさ。
「うっせェ。いいからさっさと買ってこい。」
「はーい。」
ほんと、もうちょっと女の子として扱ってくれればいいのに。
拳骨を落とされて痛む頭をさすりながら、どのアイスにしよーかと売り場を眺める。
サンジくんなら、絶対こんなことしないのにな。
明日はサンジくんとどこに行こうか。
ここのアイスが美味しかったら、明日もう一度くるのもいいかもしれない。
ちょっと変わった味もあるし。
味見したら、サンジくん船でも作ってくれるかな。
そんなことを考えながら、お店のおじさんにお金を払って、ゾロの方へと戻ると、ゾロがこっちに向かって手を伸ばした。
何?食べたいの?アイス?ゾロが?
疑問符を浮かべながらアイスを差し出そうとすると、ゾロが顔をしかめた。
「ちげェよ、そっちの荷物寄越せ。持ったままじゃそれ食えねェだろ。」
「ん?あぁ、ありがと。」
カップアイスとスプーンだけを残し、他の荷物がすべてゾロの手に渡る。
「なんだ、ちゃんとゾロも女の子扱いしてくれるじゃん。」
「は?」
私の言葉にゾロは一瞬考える顔をしたが、その後すぐににやりと笑った。
「女扱い、っつーより、どっちかというとガキ扱いだな。」
「ちょっと!!何それ!ひどい!」
ゾロの言うことに納得しながらも、背中をポカポカと叩く。
「痛ェよ。つかさっさと食え!溶けんぞ。」
「はーい。ってちょっと待って!!ゾロ!そっちじゃない!!」
なんでこんなに方向音痴なんだろう。
「おまえ、笑いすぎだろ。」
「そう?」
「で、それは美味かったのかよ。」
「うん、美味しい!明日サンジにも教えてあげなきゃ。」
「へーへー、そうかよ。」
ゾロは呆れたような顔で笑いながら、軽々と紙袋を持った手でぐしゃぐしゃと私の頭を撫でた。
*******
翌日。
何がどうして、目の前の彼は不機嫌になってしまったのか。
いつもは並んで歩くはずの隣にサンジくんはいなくて。
「サンジくん・・・?」
一歩前を歩くサンジくんの背中に声をかける。
こんなの、初めてだ。
「昨日、何してたの?」
「昨日は・・・」
今日が楽しみ過ぎて服選びに行ってました、とは恥ずかしくて言えない。
私ばっかり追いかけてるみたいで、ちょっと悔しいし。
「言えねェこと?」
「そういうわけじゃ」
「いや、いい。なんでもねェ。」
「サンジくん・・・?」
サンジくんは小さく息を吐いて頭の後ろをかいた。
何がどうしてこうなってしまったのか、記憶を辿る。
昨日の朝、買い出しに出たときは
『一人で平気かい?荷物持ちでも行こうか?』
といつも通り優しいサンジくんだったのに。
大丈夫、と断ったのが気に入らなかったのだろうか。
いや、デートは二日目にしよう、と言い出したのはサンジくんだったはず。
それにまさかそんなことでサンジくんが怒るとも思えない。
久々のデートだから、すごくすごく楽しみにしていたのに・・・。
隣、歩きたいな。
手、繋ぎたい。
伸ばしかけた手が、届くことなく落ちる。
そういえば、昨日の夕飯のときも、いつもより会話は出来ていなかった気がする。
みんながいたから、そんなに気にならなかったけど。
なんだろう。何がだめだったんだろう。
考えても考えてもわからない答えに気をとられていると
「ぶっ・・・」
「おっと」
サンジくんの大きな背中に顔がぶつかった。
「ユイちゃんごめん!怪我はねェ?」
サンジくんの心配そうな目が、私を捉える。
やっと、目が合った。
思わずにじむ涙を見て、サンジくんが慌てた顔を見せる。
「そんなに痛かった!?俺が急に立ち止まったからだな、すまねェ!」
今度は私が慌ててふるふる、と首を横にふる。
「サンジくん、私、何かしちゃったかな?」
「え?・・あぁ・・・。」
サンジくんはバツが悪そうな表情を浮かべ、視線を逸らした。
「ユイちゃんが悪いわけじゃなくて・・・」
うーん、とうなりながら、サンジくんはしゃがみ込むと頭を抱えた。
「だめだよな、ユイちゃんにそんな顔させたいわけじゃねェのに。ごめん、ほんとごめん。」
どうやら、何かをしてしまったわけではないらしい。
さらにわからなくなった答えに「?」を浮かべながら、私も同じようにサンジくんの前にしゃがんだ。
「・・・昨日、あいつといるとこ見ちまって。」
「あいつ?」
「・・・クソマリモ」
ぐるぐる、とサンジくんは地面に円をかき始めた。
え、どうしたの。なんか、可愛い。
「ユイちゃん、なんか俺といるときより楽しそうに見えたっつーか・・なんつーか・・・」
これは、もしかして
「妬いてくれたの?」
「妬・・っ!まぁ・・・そうだな・・認めたくねェけど・・・。」
よりによってクソマリモ相手に妬くなんて、とサンジくんがさらに項垂れていくのが、可愛くて、くすりと笑いが漏れた。
「よかった、嫌われちゃったかと思った。」
「・・嫌うとか、そんなわけねェだろ。」
でも、そう思わせたならごめん
と耳元で声がして、ふわりとサンジくんの香りに包まれた。
よかった、ほんとによかった。
「サンジくんといるときより、楽しそうに見えたの?」
「楽しそう・・っつーか・・・遠慮してないっつーか・・・なんだろうな・・」
サンジくんの腕にぎゅっと力がこもる。
「そっか・・・」
そう見えた理由を、考える。
ゾロといるときは、何も気を遣う必要がなくて
いや、それはもちろんサンジくんに対して気を遣ってるとか、そういうことはないんだけど。
なんでゾロの前では何も気を遣う必要がないか、って考えたら、それはやっぱり恋愛感情がないからで。
サンジくんにはやっぱりよく見せたい気持ちが今でもあるからで。
「もしそう見えたとしたらそれはね、サンジくんの前では、やっぱり素敵な女の子でいたいからかもしれない。」
サンジくんの緩まった腕を掴んで、左手を私の頬へと誘導する。
伝わるかな。
今も私、ドキドキしてるの。
サンジくんが大好き。
いつかは消えてしまうであろう、この緊張感が今は
心地好くも愛おしい
昨日どこにいても、サンジくんと明日また来ようとか
サンジくんは今何してるかなとか
そんなことばっかり考えてたよ
そう伝えると、サンジくんは嬉しそうに笑った。
***あとがき***
ありん様に捧げます。
内容:付き合っている設定。次の日はデートに行こうと約束したがゾロもしくはウソップと一緒に歩いている2人を、買い出し中のサンジくんは見てしまい、ヤキモチを妬く。
(もしくは拗ねる)ゴタゴタ(喧嘩?)がありながらも無事ラブラブデートへ。
半年以上お待たせし、申し訳ありません!
そして、内容配分が、ゾロ部分の方が多くなってしまった感が否めない・・・!!笑
好きな人の前だと、どうしても恰好つけてしまって
どうでもいい(?)人の前だと、素の自分で接することができる
って恋愛あるあるかなと思ってるんですけど、どうですかね?
結果、他の人といる方が楽しそうに見えてしまう、っていう。
その辺をうまく表現できているといいのですが・・
気に入っていただければ幸いです。
2020.01.26
title:moss
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