お嫁においで
好きで好きで大好きで
愛しい愛しい俺のマイハニー。
「ご馳走様でした。」
「いやー食った食ったー!!!」
昼食を食べ終えたクルーたちが、一人、また一人とキッチンを出て行く。
「食後の紅茶、ここに置いとくね」
「ありがとう。」
流し台までお皿を運んでくれているユイちゃんの席へと、ユイちゃん専用カップを置く。
みんなのお皿を運び終えると、ユイちゃんはソファに置いていた本を片手に、席へと戻った。
食事後の、いつもの風景。
以前、食器を洗うのを手伝う、と言ってくれたこともあったが、レディの手を冷やすわけにはいかねェし、これは俺の仕事だから、とそう伝えたら、その日からユイちゃんは食事の時間に本を持参するようになった。
俺が食器を洗い終えるまで、静かに本を読んでいる。
毎日の愛しい風景。
今日は内緒で作ったデザートも食べてもらおう、と冷蔵庫からチョコレートを取り出す。
「はい、これも。」
「ありがと。」
洗い物、しなきゃな、なんて思いながら
そのままちょっとだけ休憩しようかと隣へと腰かける。
ロビンちゃんから借りたであろう本を読んでいる横顔を見つめていると
「見すぎ、気になる。」
「ぶ・・っ」
ユイちゃんの華奢な手が俺の顔面を鷲掴んだ。
ちょっといてェけど、ユイちゃんの顔は嫌そうじゃなくて、これは照れてる顔だから。
俺の顔は自然と緩んでいく。
「照れてるユイちゃんも可愛いなァ。」
「はいはい」
そう言って、ぷい、と顔は反対の方へ。
でも、顔をそむけたユイちゃんの耳は赤くなっているのが見えて、思わずまた口元が緩んだ。
なかなか心を開いてくれなかったユイちゃんを、口説いて口説いて口説きまくって
やっと首を縦に振ってくれたのは、3年ほど前だったか。
皆の前ではツンツンしていても、二人のときは心を開いてくれるユイちゃん。
可愛くて、それはもう可愛くて。
バストトップあたりまで伸びた髪に手を伸ばし、指ですくうと、綺麗な髪はすぐにスルスルと落ちて行った。
指に触れる感覚が気持ちよくて触り続ける俺を、横目で見ながらユイちゃんはため息をつくけれど、その表情からは愛を感じるから。
「好きだよ。」
「はいはい」
今日も俺は愛の言葉を紡いで、皿洗いの為に泣く泣く席をたった。
カチャカチャとお皿とお皿がぶつかる音と
流れる水の音
そこに時々交じる、ページをめくる音。
いつまでも、こんな時間が続けばいいのにな、と二人の間に流れる空気を堪能する。
「よし、終わり」
片付いたシンクに腰かけて、タバコへと火をつける。
煙をくゆらせながら、本を読むユイちゃんに視線を向けていると
「ねぇサンジ」
本から顔をあげないまま、ユイちゃんが俺の名前を呼んだ。
「ん?」
ユイちゃんの言葉を、待つ。
「サンジと結婚したらたとえ海賊をやめても毎日この美味しいご飯一人占めだよ。それって幸せすぎる。」
いきなりどうしたのかと思ったが、なるほどそういうことね。
ユイちゃんの読んでいる本のタイトルから察するに、どうやらコックが主人公の物語か伝記かを読んでいたらしい。
ロビンちゃんがそんな本を持っていたことが驚きだな。
でもまぁ、それはさておき
「それだけで幸せになってくれるなんて、俺は幸せもんだな。」
海賊をやめる日なんてくるんだろうか。
それはわからねェけど、海賊をやめる日がきても、それでも隣にユイちゃんがいてくれるなら、それはそれは幸せな毎日が待っていることだろう。
「ねぇ、私の専属コックになってよ。」
ユイちゃんの顔が上がる。
ねぇ、ユイちゃん、それはどこまでの意味を持ってるの。
ただのコックでいいなら、それは俺である必要はないだろう?
それは、俺として必要なの?
それとも美味しいご飯を作れるなら俺じゃなくてもいい?
意外と俺も小心者らしい。
「ユイちゃんそれってプロポーズ?」
いつもの調子で、身体をくねらせながらそんな風におどけて問いかける。
いつものように
そんなわけないでしょ、って
きっとそんな風に返ってくるだろうな、なんて
そんな想像して、心の中で小さくため息をつく。
俺、こんなちっちぇェ男だったかな。
「うん、プロポーズ」
「うん、そうだよね、そんなわけ・・・え?」
時が
止まった。
「ユイちゃん、今・・なんて・・」
「ん?何?私とじゃ不満なの?」
「いや!!不満なわけないだろ!!むしろ大歓迎だけど、でも、え、本気かい?」
予期せぬ言葉に、必死な自分が情けねェ。
自分のキャラクター的にも、ユイちゃんの性格的にも、プロポーズはきっとバラを用意して、ロマンチックなシチュエーションで、もちろん俺からするはずだった。
そして、それはまだ、遠い未来のことかと思っていた。
結婚したくないわけじゃねェ。
覚悟ができてねェわけでもない。
むしろ、もう今すぐでも、一生の愛を誓える。
神様にだって、もちろん、仲間たちにだって。
「・・・俺でいいの?」
尋ねる俺を、ユイちゃんが手招きする。
近づいて隣に腰かけると、ユイちゃんは向かい合うように俺の膝の上へと座った。
「サンジがいいんだよ。」
「・・っ」
たまらなくなって、ぎゅっと抱きしめると、ユイちゃんの腕も俺の首の後ろへと回された。
頬に触れるユイちゃんの髪に、顔をうずめると、くすぐったかったのか、ユイちゃんが小さく笑った。
この子がいてくれるなら、俺はこれから先、きっと何が起きても生きていける。
「ねぇ、サンジ。幸せにするからさ、」
「うん?」
お嫁においで
ユイちゃんがそう言い終わると同時に唇が俺のものへと重なった。
「あれ?俺が嫁?」
「うん、そう。」
唇だけ離して尋ねると、当然のようにそう返された。
うん、それも悪くない。
とりあえず、ルフィたちへの報告は
このキスが終わってからにしよう。
***あとがき***
ヒトミ様へ捧げます。
内容:夢主からのプロポーズ(セリフ指定有)
遅くなり申し訳ありませんでした。
こんなかんじに仕上がりましたが・・いかがでしょうか?
夢主からのプロポーズ=立場がちょっと夢主の方が上=サンジは嫁、になってしまいました。笑
気に入っていただければ幸いです。
19.11.09
title:moss
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