吐息も甘い

 ——てめェの声はよく響くらしい。

 思いがけない言葉に一瞬反応が遅れた。けれど、すぐにゾロが何が言いたいのかがわかってしまって、あっという間に顔が茹っていく。
 今夜は僅かな月明かりしか入ってこない展望室でも見て取れるくらいに赤くなっているのだろう。胡座をかいてどっしりと構え、目と鼻の先にいる男が気不味そうに頬を掻いた。
「お、おい、待て。それは誰に言われたんだ」
 ヒク、と口の端が震える。赤かった顔は青くなって、ゾロの太い首に回した腕に力が籠る。腰に絡めた足は知らず胴を締め付けていく。
 誰に言われたのか。その答えによっては今すぐにでも卒倒できる自信があった。
「フランキー」
「あ、あぁそうか、それなら……」
「…………ロ、」
「よォし、おれは今から海に飛び込んでくる」
「やめとけ」
「止めんじゃねェよ、クソ剣士!」
「響くっつってんだろ。あんまりデカい声を出すんじゃねェ」
 気合を入れて腕まくりをしたその腕をゾロに掴まれて、それでも負けじと大暴れしてやる。腹やら肩やらに蹴りが入ったが、ゾロは流石に同情しているのだろう。痛い、とは言うけれど文句は言わない。それがいっそう気に食わないとサンジは喚く。
「どうせこういう声が響くって話じゃねェんだろうが!」
「喘ぎ声が響いてんだから怒鳴り声だって響くだろうが」
「っ、やっぱ喘ぎ声の話かよ、クソ! チクショー!」
「心配すんな。響いてんのに気付いたのはあの二人だけだ。あと、あん時は場所が悪かったんだよ」
「ロビンちゃんに聞かれちまったってところが大問題なんだよ! アホ! つうか場所が悪かったって、この前のキッチンのアレか!? じゃあもっとてめェのせいじゃねェかよ!!」
「……てめェも乗り気だったくせに。エロコック」
「うるせェ!!」
 これがフランキーだけならば。例えばフランキーとブルックという組み合わせならばまだ良かった。変なものを聞かせてしまって申し訳ないとは思うけれど、あちらも大人だから。深く入り込まずにそっとしておいてくれることを知っている。
 だが。
「別に怒ってなかったぞ。かわい、」
「わー! わー! 聞きたくねェ! 全部知られてるのわかってても感想なんざ聞きたくねェ!」
 同じ大人でもロビンはだめだ。ナミだって同じ。出来ることならば一生聞かれたくなかった。
 なんだったらゾロとお付き合いしていることすら隠しておこうと思っていた。お付き合いが嫌だと言うわけではないが、やっぱり気恥ずかしいのだ。——……なぜか当日中にすべてを知られていて、深夜の女子会に参加させられることになったのだが。
「だからうるせェっつってんだろ」
「誰が叫ばせてんだ!」
 フランキーとロビンに聞かれたと知っても表情ひとつ変えない男の両頬を摘んで思いっきり左右に引っ張ってやる。ルフィのように柔らかく伸びることはないが、少しだけ間抜けな面が拝めたので良しとしよう。
「フンッ!」
 大暴れしていた体でゾロに抱き付いて、深い深いため息をひとつ。慰めるように後頭部やら背中を撫でてくれるけれど、ちっとも気分は晴れやしない。足をバタバタと暴れさせて、床を蹴って、がおっと吠える。
「最悪だぁぁぁ…………ッ!」
「今日は声抑えろよ」
「いやこの状況でヤれるかよ。てめェのメンタルどうなってんだ」
「ハァ!?」
「今夜は無しだ、無し。解散。おやすみ。じゃあな!」
「ふざけんなよ、てめェ……! このクソコック!」
 ただでさえ船の上だとセックスするタイミングが少ないというのに、と今度はゾロが吠える。グルル、と低く喉を鳴らしながら首筋に噛みついてくるゾロの短い髪を引っ張った。やめろ、いやだ。今日はしない、絶対する。二人の言い分が衝突しては、怒鳴り声が展望室に響き渡る。
「そもそもお前があんなこと言い出したからだろうが!」
「声出すなっつったらしつこく理由を聞いてきたのはてめェだろうが!」
「ぐ、」
 いやでも理由くらい聞くだろう。もごもごと言い淀んで、シャツの中に入り込んでくる無骨な手には「……なぁやっぱり止めようぜ」と頼み込む。
「怒ってなかったんだから別にいいだろうが。付き合ってることだって知ってんだ。ヤることヤッてることくらい察してんだろ」
「そういうことじゃないんだってぇ……」
「じゃあ声を我慢すりゃあいい」
「出来るもんなら最初からやってんだよ」
 出来ないとわかっているから、そもそもの行為を止めようと提案しているのである。
「へぇ?」
「なんだよ、その顔……」
 なのにゾロの機嫌は良くなっていく一方。
 気に食わない、と額を痛いくらいに擦り寄せてみたのに、するりと乳首を撫でられてしまっては力が抜けてしまう。
「我慢出来ねェのか」
「だ、だから、そう言って、……っ、おい、やめろ……!」
「なんでだ」
「アァ? な、んで、って、そりゃあ……」
 と、ようやっと機嫌の良い琥珀色に納得がいく。
「あ!」
「気付くのが遅ェよ、アホ」
 このクソエロ剣士め、と文句を言うより先に引っ掻かれてしまった左の乳首。反射的に漏れそうになった嬌声は唇ごとゾロに食べられてしまって、これなら問題ないだろうとでも言いたそうに口付けが深くなっていく。
「っ、んう、んん……っ」
 絡みついてくる肉厚な舌と、意地悪く引っ掻いてくる指先。逃げようと体をくねらせたところで、腰に回された右腕が許してくれるわけがない。
「ふ、う゛、うう、んっ」
 見なくたって乳首が赤く熟れていくことくらい分かる。熱が篭って、あっという間に感度が上がって。やめろと小さく首を横に振るくせに、背中が勝手に反ってしまってゾロの指先から離れられなくなる。
「ゾ、ロぉ、……なぁ本当に、おれ、」
「やめるか?」
「っ、」
「やめたくはねェんだろ」
 なんせここ最近碌にヤれてねェからな。
「そう、だけど……」
 今日を逃せば次はいつになるやら。でも、だからこそ声が我慢できるとは思えない。
 ううう、と悩んで唸りながらも外されていくシャツのボタンはおとなしく見送ってしまう。そうして露わになった上半身。右よりもぷっくりと腫れ始めている左の乳首を見るだけで、そこを噛まれたらどんなに気持ちがいいだろうかと妄想が広がる。
「やっぱ、むり、っ、むりだって、」
 乳首を引っかかれただけでこれなのだから、スラックスの中で窮屈そうにし始めたペニスを扱かれたらどうなるだろう。そして、準備しただけですっかりゾロのものを待ち侘びているアヌスを弄られるとどうなってしまうのだろう。
 常日頃鍛えている妄想力がこんなところで生かされてしまって、鼻血が出る直前のように鼻の奥がツンと痛む。
「なら、これ貸してやるから口の中入れてろ」
 あと出来るだけゆっくりしてやる。
 言いながら渡されたのは黒のバンダナ。ゾロの匂いが色濃く染みたそれを容赦なく口の中に突っ込まれて息苦しいはずなのに、ダイレクトに伝わる匂いに頭がクラクラした。
(いや、これ逆効果だろ……ッ!)
 言えないけれど。手拭いのせいで喋れないけれど。それでも心の中でひいひいと悲鳴を上げて、しっかりと勃起したままの乳首を口に含まれるとオーバーなほどに体が跳ねた。
「う゛ーっ、うう……っ!」
 ザラザラとした舌の表面でねっとりと舐められて、そうかと思えば塗りたくられた唾液と共に吸い上げられる。たったそれだけで眦に涙が引っかかって、舌先で突かれると腕や足に力が入ってしまってどうしようもない。そのくせ今すぐにでも腰が抜けてしまいそうだ。
(ち、くび、だめ、だめだって、ぇ……)
 左ばかりが敏感になって、気持ちよくなって。それを狡いとでも言いたそうに右も柔く勃起していく。触られてもいないくせにツンと主張するそこが恥ずかしくて、なのに、気付いたゾロがニンマリと口角を持ち上げるものだから体温は更に上がっていく。
「わかってる。こっちも、……な?」
「ふう、う゛うぅっ!」
「焦んな」
 ゆっくりしてやるって言っただろう、と腹筋の凹凸を指先が撫でていく。ついでだと臍の周りまで擽られて、そこじゃないと言葉にならない声でゾロを呼ぶ。
「ちゃんと咥えてろよ」
 そうして、柔らかさも膨らみもない胸をしっかりと手のひらで揉まれて、持ち上げられて。形が変わったそこを大きく食べられる。
「んっ、んん、ぅ……!」
 待ち望んだ刺激にとうとうペニスが完全に勃ち、とぷりとカウパーが漏れたのを感じた。
(っ、こっちも、きもちいい……っ♡甘噛みされんのすきっ♡ちゃんと加減して噛んでくんの、クッソかわいい、ゾロ、すき、すき……♡もっとされたい、されてぇよ、ぉ……っ)
 ふう、ふう゛う、とくぐもった息と声だけではなにも伝えられなくて、もどかしくて仕方ない。だが、今このバンダナを口から出すのは無理だ。そんなことをしたらまた他の誰かに喘ぎ声を聞かれてしまう。
 ならば、と背中を丸めてゾロの頭を抱え込む。若草色の短な髪に頬を擦り寄せて、もっとと強請った。
「——エロコック」
 揶揄ってくる低い声にまで心臓がきゅうっと締め付けられて、もう本当にどうしようもないなと強く目を閉じた。
 
 
 
 ゆっくりする、と宣言したゾロはきっちりとその言いつけを守っている。
 ——というよりも、船の上でのセックスで元々乱暴に抱かれたことなどない。島の連れ込み宿でするように、粗相をしてしまったのかと思うほど潮を吹かされることもないし、限界まで体を折り畳まれて結腸まで嵌められることもない。
 ゾロはゾロなりに気を遣っているのだろう。こちらの役職を理解してくれているからこそ、翌日の仕事に響くほど無茶なことはしない。されない。————きっちりと思い返してみれば時々例外もあるけれど、そこはご愛嬌。理解と協力の姿勢は本当にありがたいのだ。
 ただ、
(〜〜〜〜っ、もっと、お゛、くまで、ほし……っ♡)
 自分が勝手に物足りないと思っているだけで。
 対面座位のままで奥深くまでゾロのペニスを受け止めてもすぐに引き抜かれてしまう。痛いわけでもないのに、それでも今夜も加減をされる。ゆっくりすると改めて宣誓されてされているから尚の事。
 ぎゅうぎゅうとゾロにしがみついて、自ら腰を振ればすぐに掴まれてしまう尻たぶ。そうして焦ったいほどにゆうっくりとナカを愛でられる。
(もっと、もっとされてェのに、ぃ゛……っ♡じわじわされんの、頭おかしくなる……!)
 襞のひとつひとつを確認するように穿たれて、愛でてもらえない最奥の窄まりが寂しそうにヒクヒクと震える。それでも時折、ゾロが我慢ならないとでも言うように前立腺を狙ってくるものだから勢いのいいカウパーが溢れてゾロの腹巻きを汚していく。
「ふ、う゛ううーっ♡うーっ♡ふう゛、っ、ふっ♡」
 ガクン、ガクン、と足が大袈裟なほどに震えて、期待している腸壁が好き勝手に痙攣する。
(そのまま、っ♡おく、おくもっ♡奥まで突いてくれ、よぉ……っ♡ゾロのかてェちんこでいっぱいされてぇんだよ、くそっ)
 獣の唸り声のような声しか上げられないのがもどかしい。だから必死にアヌスを締め付けているのに、ゾロのペニスは振り払うように抜けていく。
(あっ、ダメ、抜くな……っ!)
 完全に引き抜かれてぽっかりと穴が空いてしまっているアヌス。まだ挿れられていたいと願うのに、カウパーを零すペニスにゾロのものが添えられて一緒に扱かれてしまうとあっという間に快楽に負ける。
(や、ぁ゛……っ! イく、扱かれるとすぐイッちまう、っまだ、奥さみし、のに……っ)
 だめ、だめ、と二本のペニスを一緒に扱くゾロの手を掴んでも許してはくれない。
「コック、っ、……コック……!」
「ふ、ぐぅ、ううーっ♡」
 汗が滲む頬を舐められて、そのまま髪に隠れた耳まで食べられる。肉厚な舌が耳孔に入り込んではひどく淫らな水音を立てるものだから、背中が粟立って、ペニスがびくびくと跳ねる。そうして互いのカウパーを混ぜ合わせるように手のひらで揉まれるとあっという間に精液を吐き出してしまう。
(だめ、なのに、……っ、くそ、きもちいい……♡)
 アヌスの奥深くまで突き上げられてイきたいのに、これには勝てない。
 うぐ、うう、と奥歯と手拭いを噛み締めては余韻に浸り、うっすらと目を開ければゾロの手に自分の精液がべっとりと付着している。汚しちまった、とサンジが考えるより早く、ゾロはその手で自分のペニスを扱くのだ。
(ぁ、おれの、が、ゾロのちんこに絡みついてて、)
 赤黒く、雄の匂いが強いそれに自分の精液が絡みつく。絡みついて、いっそう濃い色になるほどに泡立って、——視覚からの情報量でまた射精してしまいそうなほどに興奮する。フーッ、フーッ、とバンダナの隙間から取り入れる酸素だけでは足りなくて、あっという間に酸欠だ。
(このままもう一回突っ込んでくれよ、なぁ、ぞろ、ぞろぉ……っ)
 はくはくとアヌスが口を開けて、堪らずゾロのペニスに手を伸ばす。けれどすぐにゾロも限界を迎え、サンジが欲しがっている精液は互いのペニスとサンジの腹筋やはだけたシャツを汚すだけ。
(クソ……! ナカに出せよ、アホ剣士……!)
 宿に行けば嫌と言うほどナカに注ぐくせに。注いで、それでもまだ硬いペニスで何度もナカを突き上げてはイかせてくるくせに。————……そうやって、アヌスで気持ちよくなることを覚えさせたくせに。
(チクショウ!)
 なのに、サンジが態度だけでもう一回と強請っても「明日も早ェっつったのお前だろうが」とノーを突き付けてくる。
(ふさけんなよ……!)
 唾液でドロドロに濡れたバンダナを吐き出せば、乾いた空気が喉に引っ掛かって咳き込んだ。当然のように背中をさすってくれる手を捕まえて、恨みがましく睨みつけた。
「本気で、終わりなんて言うわけねェよなァ……? クソ剣士」
 性欲も体力も有り余っている体で、ゾロの体を突き飛ばすようにして押し倒す。次いで、逃げられないようにさっさとペニスを捕まえた。射精したばかりだというのにまだ硬さも熱も残したままのそれ。こんな状態で寝られるわけがねェだろうが、と睨みつけてアヌスへと宛がった。
「おい、いいのか?」
「っ、うるせぇ……っ! てめェが中途半端なセックスしやるのが悪ィんだろうが! 魔獣なら魔獣らしく盛ってろ!」
 また緩く口を開いたままのアヌスに亀頭の先端を擦り付けて、ゆっくり腰を落としていく。
「い゛、あ、あ、っ、ぁ゛ッ! ん゛、あ……っ!」
 痛みはないけれど、それでも最初はゆっくりと。規格外の凶悪なサイズを飲み込むにはこれくらい用心深くいないといけないのだ。
「ぁ゛っ……♡♡ぉ、おく、っ、まで来る、っ♡ぁ、う、う゛う……っ♡」
 ずぷずぷと淫らな音を立てて飲み込んで、しっかりゾロの下生えが当たるまで。奥まで満たされた余韻に浸る間も勿体無いと膝を立てる。ゾロに全部見られようと関係なく足は広げて、手は後ろについた。
 こうしてやれば、
「——っ、ァ゛♡」
 自然と上半身が反れて、いいところに当たりやすくなる。
 これだってこの男に教え込まれたこと。自分の中の気持ちいいところは全部覚えろと、何度も何度も刷り込まれた。
「ちゃんと覚えてんじゃねェか」
「っお、お゛ぼえ、てる、……ッ♡♡てめ、ぇ゛が、っ、しつこく、するから……ッ♡」
「腹からも押してやろうか?」
「い、い゛ま、っ、だめ……っ! さわんな、っ、撫でんな……っ! ばか、まりも……ッ!!」
 褒められるとそれだけで体温がいっそう上がって、顎が持ち上がる。開きっぱなしの口から舌を突き出して身も世もなく喘ぐしか出来なくなる。
「ぁ、あ、あ゛ーっ♡♡す、けぇ、当たる、これやばい、っ♡♡ずっとあたる、っ、ひ、ぁ、あ゛ぁあ゛あ゛————ッ♡♡」
「っ、あー……ナカの、っ、痙攣がすげェな」
「やっ、これすぐ、っ♡♡ぁ、イ゛く、イく、っ♡ん゛あ゛ぁあっ♡♡イく、————っ、ぁ゛、ぐぅう……ッ♡出、る、……ッ、きもちい、ぃの、っ、漏れる、ぅ゛……ッ♡♡」
 一度の射精では満足できなかったのはサンジのペニスも同じ。アヌスや尻たぶを震わせながら達して、そしてその余韻だけで精液が溢れていく。
「ハッ。てめェ今どっちでイッてんだ。両方か?」
「ゃ、おれ、っ、さわって、ねぇのに……っ」
「いつものことだろ。気にすんな」
 勢いはないものの、どろりとしているそれは止めどなく溢れてはペニスを撫でるように滴り落ちていく。
 それなのにゾロが亀頭を手のひらで撫でるものだから堪ったもんじゃない。
「〜〜〜〜っ、ヒ、ィ……ッ!? それやだ、っ、やだやだっ♡漏れる、から、ぁ゛……ッ!」
 やめて、と泣いたところであっという間にしょわしょわと潮を吹いて、手から逃れようと腰を動かせばアヌスで気持ち良くなってしまう。
「——っ、ぇ゛あ、っ、……っ、ぁ゛、ぁ゛……ッ?♡♡」
 逃れられない連続絶頂にもう嬌声だって追いつかない。
 けれど。
(き、もち、い、ぃ゛……ッ♡♡)
 腰が抜けそうな体で踏ん張って、もっと絶頂を味わいたいと腰を振る。
「また外に響いてても知らねェぞ、エロコックめ」
「ッ! だ、だって、……っ」
 ゾロも気持ちいいのだろうか。それともやられっぱなしは性に合わないのだろうか。大人しくしていた魔獣が目を光らせ、僅かに体を起こして床に肘をつく。
 そして、
「————ヒッ、ぎ、ぁ、っ♡」
「ッ、ちゃんと足開いてろよ……ッ!」
 遠慮なく、自分本位に、強引に。
 奥の奥まできっちりと暴くほどの力を込めて下から突き上げてくる。サンジの気持ちいいところも、弱いところも、全部全部あっという間に押し潰される。寧ろ、腹を突き破らんばかりに遠慮なく動くものだから、サンジは堪らず止まってくれと懇願する羽目になる。
「あ゛ッ、あた、って……ッ♡そこ、……ッ♡い、いま、っ、むり、ぃ゛……!!」
 本能的に腰を浮かせて逃げようとすれば捕まって、瞬きひとつで場所が入れ替わる。ゾロの上に乗っかっていたはずなのに、気付けばゾロが自分の上にいて。開いたままの足は今にも自分の肩に引っ付きそうなくらい押し潰された体。真っ赤に熟れたアヌスは、隠し切れないほどにゾロを求めてひくついている。
「声、聞かれるの嫌じゃなかったか?」
「〜〜〜〜っ!」
 揶揄うように言われたって、もう抑えようがない。今更止めることも、手加減してもらうことだって出来ない。意地悪な男め、と恨めしく睨んで手を伸ばした。上手く力が入らない手で短い髪を掴んで引き寄せる。
「じゃあ、キス、しろよ、っ……! 責任持って、塞げッ」
 フ、と右の口角を持ち上げて笑うゾロのご機嫌なこと。
「そんで、っ、そのまま、ハメろ……ッ、奥まで、っ!」
「あァ、わかった」
 こいつ結構おれに強請られんの好きだよなぁ、なんて快感で蕩けた頭の隅でひっそりと考えて、舌を絡めた。肉厚な舌に呼吸ごと全部食べられて、嬌声だってくぐもったまま消えていく。再び酸欠になっていく頭の中は霞んで、もう目の前以上のことは考えられなくなっていく。
(ッ、キスしたまま、ヤんのすげェ、っ、きもちいい、きもちい、い゛ぃ……ッ♡♡)
 視界も口の中もアヌスも、全部全部ゾロで満たされていく。満たされすぎて溺れそうになるくらい。ハッキリと言語化されていない言葉でゾロを何度も求めて、休みなく穿たれているアヌスもゾロのペニスにしゃぶりつくのに必死である。
(イ゛、く、イくイく……ッ!♡♡)
 押さえつけられた両足が、それでも大きく震える。ガクン、ガクン、と不規則に跳ね回って、腸壁の痙攣がいっそう強いものになる。目の前が白く染まって、しかしゾロが動きを止めてくれないから強制的に現実へと引き戻される。
「う゛ーっ!! む゛、う、うぅ゛……ッ!!」
 深く深く達しているというのに、ゾロのペニスがお構いなく入り込んでくる。震える足は力任せに抑えつけられて、前立腺も最奥も抉られて。いやだ、やめて、とまって、と顔を横に振ってキスから逃れようとしても、すぐにゾロの唇が覆い被さってくる。
(い゛、ま、ッ、いまイッた、ぁ゛……ッ! や、ぇ゛て、っ、とまれ、とまれよ、ぉ゛……ッ♡♡)
 次の、その次の絶頂にまで簡単に呑み込まれて、知らぬ間に自分が漏らした潮で体の至る所が冷たい。けれど目と鼻の先にいる魔獣はすっかりキスに夢中だ。
(そりゃキスしろって、っ、言ったけど……! このクソ剣士!!)
 キスをしながらハメられるどころか、酸欠状態のまま何度もイかされ続けるとは思いもしなかった。せめて逃げられたら、と思うのにのし掛かってきている重い体をどうにか出来る余力はない。
(〜〜〜〜ッむり、ぃ゛……!!♡♡またイく、っ、イッてんのに、ッ、♡よ、よわいとこ、ばっか、ッ♡♡こいつが潰すから……ッ♡♡イくの、も、っ、つらいのに♡♡がまんできね、ぇ゛っ♡♡ぁ゛っ♡イく、っ、ずっと、イ゛、————ッ、また……ッ♡♡あ゛っあ゛ーっ♡♡お゛っ、かし、くなる……ッ!! おしり、っ、こわれ…………ッ)
 スイッチが入ってしまった体は何度だって簡単に達してしまう。休憩も与えてもらえないから、達していないときとの境界線は曖昧で、登り詰めたまま戻ってこられていないとも思う。
(これ以上イくの、つらい、ぃ゛っ♡♡とま、って、……っ、止まれ、よぉ゛……ッ!♡♡おれずっとイッてんの、わかってる、くせに……ッ!!♡♡あ゛っあ゛っぁ゛ああーっ♡♡むり、ぃ゛っ♡♡イ゛、く……ッ♡)
 自分では制御しきれない両手は必死にゾロの肩を引っ掻いて、幾つもの赤い線がランダムに並んでいる。けれどそんな抵抗では止まってくれるわけもなく、サンジは唸りながら絶頂へと追いやられる。
「コック、ッ、——ハァ、ッ、コック……!」
 唇はとうに腫れぼったくなっていて、舌は痺れていて。でも、自分よりもゾロのほうがしっかり喋れているから、やっぱり口も鍛えてるんだななんて可笑しくなる。笑い飛ばす余裕はないけれど。
「コック、」
 ゾロ、と呼んだはずだがきっとうまく発音できていない。それでも愛しい男の名前を何度だって呼びたくて口を動かす。サンジの気持ちに応えるように、上から落ちてくる低い声。もっと、と強請ったのは無意識。
(ん゛んんっ♡ちゅー、すんのはげし、くなってきた、ぁ……っ♡必死になってんの、っ♡ゾロっ、も、きもちよくて、必死になってんの……っ?♡♡)
 自分のアヌスの中で気持ちよくなってくれているのがたまらなく嬉しい瞬間だ。今度こそナカに出して欲しいと、震える足を叱咤して腰に絡めた。
「っ、コック」
「————ッ、ァ゛……ッ♡」
 一拍置いて、ナカに注がれているのがわかった。腸壁に纏わりついてくる粘度の高い精液に、サンジはそれだけで何度だって絶頂を迎えられる気分だ。
「はぁ、っぁ、ゲホッ、ッ、はぁっ、ぁ゛…………っ♡」
 酸素が足りない脳を労るように荒い呼吸を繰り返し、同じように射精の余韻に浸っているゾロの体を受け止める。どくどく、と煩い心臓はどっちのものだろう。きっと自分の方が煩いんだろうけれど、ゾロも似たようなものなら嬉しい。
 まだ余韻が残る体でゾロにしがみついて、腹の底にある甘い痺れを堪能する。
「満足したか、エロコック」
「う、るせ……っ」
 時折、ゾロがナカに注いだ精液を奥までしっかりと塗りたくるように腰を揺する。まだ硬さを残したままのそれで刺激されると堪らなくて、体をくねらせて、くうん、と鳴いた。鳴きながら、軽くイッてしまったのだが、バレてないだろうか。
「抜、けよ、そろそろ……っ」
「……わかってる」
 言うわりに、動こうとしない。
 名残惜しく思っているのか、もっとシたいのか。どちらにせよ黙って大人しくなったままひとり葛藤している獣は可愛らしく、サンジはひっそりと笑いながら後頭部を撫でてやる。
「ゾロ、……ゾーロ?」
「うるせぇ、黙ってジッとしてろ」
「お前よくあの一回で終わる気でいたな」
「……だからさっさと終わらせたんだろうが。それをてめェが、」
「へいへい。おれが悪かったよ」
 だってもっとやりたかったのだから仕方ないだろ、と唇を尖らせる。久しぶりだったのだから、本当は起床時間ギリギリまで抱き合っていたいくらい。きっとこれを言ってしまえばゾロの我慢を邪魔してしまうだろうから、心の中でひっそりと呟くだけにする。
「あ、」
 ——でもよぉ、とサンジは気の抜けた声を出す。
「さっきのはまたヤろうぜ? キスしたままハメっぱなしにするやつ。声出せねェのは苦しいけどすっげぇ気持ち良かったなぁ。おれ、ハマりそ」
 へらりへらりと笑って。
「あとキスしてたほうが、なんか、……こう、てめェとヤッてるって実感できて、好き」
 素直な感想を述べていく。
 ゾロはといえば、サンジの言葉にうんともすんとも言わない。ただ本日一番の大きな溜息を吐いた。
「……んっ♡……ん゛んっ?♡あれ、なに、ゾロ……?」
 ペニスを引き抜くのかと思えば、ゆうっくりと奥まで戻ってくる。先ほどまでの精液を塗りたくる動きともまた違う。本格的に気持ちいいところを狙われて、サンジは慌てて自分の口を両手で塞いだ。
「おい、手ェ退けろ。キスされながらハメられんのがいいんだろうが」
「ん゛っ、んん゛っ♡」
 ゾロの鼻先が手の甲に当たって、目当てのものを掘り当てるように顔を左右に振る。本物の獣かよ、と言いたかったのに掘り当てられた唇はさっさと塞がれて、嬌声ごと飲み込むしかない。
「コック。てめェ明日は気合いで起きろよ」
「む、無茶言うな……」
 もごもごとゼロ距離での話し合いは、秘密の隠れ家で内緒話をしているようで楽しい。
 どうやらゾロの中のやる気スイッチを押してしまったようだ。この調子だと朝日が昇るまで離してはくれないだろう。
 このまま今夜は“例外の日”となるのだろう。
(どれでスイッチ入ったんだよ)
 ひくひくと蠢くアヌスがそんなに気持ち良かったのだろうか。ゾロもキスをしたままセックスをするのが気に入っていて、自分が同じようなことを言ったからだろうか。
(もしくは、)
 好きだ、という何気ない自分の言葉に喜んでくれたのだろうか。
 なんてな、と心の中で戯けたように舌を出し、汗の滲む男の背中を撫でる。傷はつけないように、けれどしっかりと肌の感触を楽しんで、くぐもった嬌声をキスの中へと零していく。
 ゆっくりと痺れ始めた舌を動かして、名前を呼んだ。

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