すれ違いざまにフロイドがそう声をかけて来る時は、何もかもの準備が整っている時だ。
「はぁい」
だから監督生はこれ以外の返事をもたない。
うんと頷いて、それから頭を撫でてくる大きな掌を名残惜しく見送って、小さく手を振るだけ。
楽しみだな、とニヤけた口元はまだフロイドに見られたことはない。
***
重度の気分屋だと自他共に認めているフロイドが、恋人には甲斐甲斐しいということを、この世界で一体何人が知っているだろう。出来れば、ジェイドやアズールですら知らないことだと思いたい。
モストロ・ラウンジの営業が終わるまで、監督生は大人しく静かなオンボロ寮で課題をして過ごし、腹持ちのいい軽食だけを口にすることにする。
今夜は「ツナ缶が食べたいんだゾ!」と騒ぐグリムも、それから「おやおや、若いからと食べ過ぎじゃないかい」と揶揄ってくるゴースト達もいない。全員フロイドに追い払われているのだ。
いや、追い払われているというのは言い過ぎかもしれない。
フロイドはそれぞれに交換条件を提示して、学校が休みである今夜と明日の二日間だけ外出してもらっているのだ。
グリムとゴーストだけじゃない。グリムの面倒をハーツラビュル寮でみてもらえるよう、エースやデュース、それからリドルにも声をかけているらしい。
ハーツラビュル寮と予定が合わなければ、今度はサバナクロー寮。ジャック相手に交渉している。
時折、学園長にもこの日だけは厄介ごとを持ってくるなよと釘を刺しに行っているらしい。その効果かは知らないが、最近平和で静かである。
勿論、ジェイドとアズールにもオンボロ寮に行くことを伝えている。
急な呼び出しには応じられないことと、それからきちんと寮外への外出届けまで提出しているようだ。
最初に聞いたときは、それはもう驚いた。
同時に、そうまでして自分との時間を確保してくれることが心底嬉しかった。
だからこそ監督生は決して断らず、こうやってフロイドがやって来てくれるのを待っている。優しいながらも飢えた目をした人魚に抱かれる覚悟を持って。
小さな小さなおにぎりを両手に持って、味や形がなくなるまで何度も噛む。そうすれば少ない量でも満腹中枢が刺激されて、暫く腹が鳴ることはない。
抱かれる、ということは身包みを全て剥がされるということだ。
それも、自分よりも三十センチほど背が高く、抜群のスタイルを持ったフロイドに。
初めて抱かれるとなった時など、これでもかと緊張し、同時に自分の幼児体型に思い悩み、会う前はずっと食事を避けて運動をしていた。その結果、初夜を迎えるいい雰囲気に包まれてキスをしている最中に、寮を揺るがすほどに大きな腹の音を響かせてしまった。
当然セックスは中断。
数秒前のいい雰囲気など夜空の彼方に吹っ飛んでしまって、フロイドは腹が捩れるほど笑い転げ、監督生は顔を真っ赤にして固まった。
あれ以来、きちんと軽食は取るようにしている。あんな失態は二度と御免だ。あぁ、思い出しただけで顔が熱い。
軽食を終えて、風呂に入り、オーラルケアまで済んだところでチャイムが鳴った。フロイドが気に入っている大きめのルームウェアのトップスだけを羽織って玄関へと走る。
「はぁい」
キィキィと音を立てる古い扉の向こう側。
「ハァイ。小エビちゃん」
ラフな格好こフロイドが、大きな鍋が入った鞄をさげてやって来た。挨拶だと言わんばかりにキスをひとつ、ふたつ。
「お疲れ様です。もうお風呂入ったんですね」
「うん。なぁんか今日汗いっぱいかいたから」
ベタベタして気持ち悪かったしちょっとだけ泳いでから来ちゃった、と言って勝手知ったるフロイドは一目散にキッチンに向かう。これまた年季の入ったガスコンロに鍋を置いて、持ってきた鞄は乱雑にテーブルの上に放る。
「髪の毛まだ濡れてますよ」
「乾かすの面倒だったからさぁ。歩いてたら乾くし」
「流石にこの距離じゃ乾かないですよ。ドライヤー持ってきますね」
言って、監督生はバスルームに向かおうとした。しかしその足はすぐに宙に浮く。
「わ」
なに、と思う間もなく気付けばフロイドに担がれていた。
「どうせエッチしたら風呂入んだから、その時でいーよ」
「風邪ひきますよ?」
「ひいたらさ、小エビちゃんに看病してもらえるじゃん」
「……や、うつるとアレなんで、」
「あ。可愛くない口だから絞めていーい?」
「だっ、だめです!」
自分を捕らえている腕に力が入って、監督生は慌ててフロイドの背中を叩いた。ギブアップ、並びにハンズアップ。降参である。
そうこうしている間にフロイドの長い足は寝室へと辿り着く。
きっちりと掃除され、洗濯されたいい匂いがするそこに、嗅覚が鋭いウツボの人魚はにんまりと笑う。
「いっぱいイチャイチャしよーね。小エビちゃん」
──やっぱり、頷く以外の返事は持ち合わせていなかった。
***
人間と同じ二本足になっているとは言っても、やはり所々魚の名残がある。特に口の中はそれが顕著だ。
自分よりも大きな口。ギラリと光る尖った歯。
それから。
「──ッ、ひぅ、ああっ、あっ、せんぱ、それやだ、もういい、ですから……っ、く、ぅう、んっ」
長く、ザラザラとしていて、先端がやたらと尖った舌。
それで陰核をべろりと舐められると、あっという間に泣いてしまうほどに弱い。なのに、フロイドは秘部を舐めることを気に入っているのだ。勘弁してほしい、といくら啼いても逃げられない。
「小エビちゃんのここ、気持ちいいって涎垂らしてるのに、やめていーの?」
監督生をベッドの縁に座らせて、自らは床に膝をつき、足の間に体を入れ込んでいるフロイドは意地悪に笑う。監督生からの返事は特に求めていなかったらしく、すぐに、かぱりと大きく口を開いてまた舐め始めた。
「ひう、っん、ぁあん……ッ!」
全体を覆うように吸いつかれて、そうかと思えば長い舌で陰核を覆う皮を器用に剥く。神経が集中している最大の弱点は、あっという間にウツボの餌食。
「──ハァ、ああぁああッ!」
ぷっくりと赤く腫れたそこを一度、二度、と突かれるだけで座ってなどいられずにベッドに倒れ込む。
身をよじって、シーツを両手で握りしめて、ガクガクと震え始めた太腿でフロイドの頭を挟む。
けれど、そんな抵抗も大きな手で押し返されておしまい。仕置きだと言わんばかりに尖った前歯で軽く引っ掻かれて、ひぐ、と喉が引き攣った。大袈裟なほどに背が跳ねる。
「あっあっあっ……!! んあぁっ、だめ、っ、やぁ、……ぁうっ! そこばっか、やだ、すぐイッちゃ、イッちゃいます、からぁ……ッ!」
「今日はぁ、いーっぱいイチャイチャするから、何回だってイッていいんだよ、小エビちゃん」
「やだ、やっ、だめ、まって、せんぱ……っ! ひっ、くぅ、ううっ、はっはぁ、ぁああああッ!」
「ん、……あは、本当にすぐイッちゃったじゃん。そんなに気持ちいーの? これ」
「……っ、……ひ、ぁ、あ……あぁ……っ」
いっそう上機嫌になったフロイドは、小刻みに震えている監督生の内太腿にキスをして、愛液でベタベタになった口元を手の甲で拭う。監督生はシーツを握ったまま、素直にひとつ頷く。
気持ちいいなんてもんじゃない。頭の中に麻薬でも詰め込まれているのかと思えるくらいに、気持ち良すぎて苦しいくらいだ。
だが、残念ながらフロイドがこれで許してくれないことも知っている。
「ぁ、せんぱ、まって……!」
「だぁめ。ここからが本番じゃん」
言って、フロイドの長い指が割れ目をそっとなぞる。
とうに濡れそぼっている蜜壺に指を絡めて、馴染ませて、愛液を陰核に塗りたくる。フロイドの唾液と愛液でぐずぐずに蕩けているそこは雌の匂いが濃ゆく、恥ずかしくてたまらないのに、期待するようにひくりと震えている。
「すっげーことになってんね」
は、は、と短い呼吸を繰り返していれば、オッドアイと目が合った。垂れた眦の機嫌は良いままだ。
「小エビちゃん、指、舐めて」
フロイドの左手が口元にやってくる。素直に口を開ければ、遠慮なく入り込んでくる指先。自分の愛液ごとたっぷりと舐めれば、右手で悪戯に陰核を何度も弾かれて腰が揺れる。
「ん、ん、んん……っ」
「いいこ、いーこ」
人差し指から薬指まで。三本分を唾液塗れにすれば、口から引き抜かれて再び秘部へ。
「足、自分で持ってて」
「っ、それは、やっ……!」
「だぁめ。早く」
急かされて、顔を背けて足は自分で抱えた。
あぁ自らフロイドに全部を曝け出している。はしたなく秘部を濡らしているのが丸見えだ。いやだ、とじたい、みせたくない。
だけど。
(……っ、はやく、せんぱ、いと、きもちよく、なりたい……ッ)
その一心で羞恥心を押さえ込む。
「挿れるから」
つぷ、と中指が入り込んでくる。
「ん、う」
痛みはなく、寧ろゆったりと蜜壺を撫でまわされている感覚がゾクゾクと体を震わせる。段々と動きが早くなって、逆の手でふっくらとした割れ目を左右に開かれる。無防備な陰核は再びフロイドの口の中へ。
「ひあ、ぁああんっ、そ、それ、やだ、両方、は、だめです……ッ!」
「ん、ん、きもちーね、こえびちゃん」
「はうっ、あ、あーっ! きもち、きもちい、イッちゃう、だめっ、ああっ! 吸わないで、せんぱ、っ、も、あっあっ、ア──ッ!!」
ぢゅう、と重たい音を立てて陰核を吸われて呆気なく二度目の絶頂を迎えてしまった。それでもまだ長い舌が陰核に絡み付いて離れない。
「ヒィッ!? だめ、イッた、イッたから、ァ……!!」
扱くように上下に舌が動き、蜜壺を犯す指は二本に増えていた。激しくなっていく動きに水音が大きく重くなっていく。
「だめ、イく、またイッ、〜〜〜っ!! ……っ、はぁっはぁっ、あっ、まっ、吸っちゃいや、またイく、きもちいいの、きちゃう、せんぱい……っ!!」
すっかり熟知している弱点ばかり狙われて、跳ね回る体が制御できない。涙が溢れて、頭を振り乱して自分が何を喋っているかも分からない。
とにかく脳が焼き切れそうで、今にも心臓が止まりそうで。とうとう中に入り込んでいる指を引き抜かれると同時に絶頂を迎え、ぷしゃ、と潮まで漏らしてしまった。自分では制御なんて出来るはずもなく、服を脱ぎ捨てているフロイドの上半身を汚してしまう。
「小エビちゃんすぐ漏らすよね。可愛いからいーけど。そんな気持ちよかった?」
「ぁ、ぁ……っ、きもち、い……っ」
「素直だからもっと可愛い」
ずっと床に膝をついていたフロイドが立ち、ベットに上ってくる。近づいてきた綺麗な顔は、やっぱり自分の愛液で濡れていて、監督生は顔を赤くして脱ぎ捨てた自分のルームウェアを掴んだ。それをフロイドの顔に押し付けて拭う。
「ご、ごめ、ごめんなさい……っ!! 今度からはちゃんとタオルも用意しておくので、きょ、今日はこれで……!」
「あは、動揺し過ぎじゃん」
遠慮なく拭えば、笑い声の隙間に「ぷはっ」と大きく息をしていた。監督生は、こんなにも押し付けると息苦しいのだと気付いてさらに動揺した。
だが、これくらいでは機嫌を損ねないほどにご機嫌なフロイドは、わざとらしくルームウェアに顔を埋めたまま、匂いを嗅ぐようにすんすんと鼻を鳴らす。
「小エビちゃんの服って、いい匂いする。今度使ってる洗剤教えて」
「わっ! か、嗅がないでください……!」
「小エビちゃんが押し付けてんじゃん。ウケる」
でももういーよ、とルームウェアは奪われてベッドの外へと放られた。それからベッドボードに備え付けられている引き出しを開けて、取り出したのは蛍光色で派手な柄が描かれているスキン。
「あ、せんぱい……」
「んー? なに?」
一番初めて使う時など、付け方どころか裏表も分からず、しかも乱雑に外装を破いたものだから中のスキンまで破れてしまって大惨事だったと言うのに、今やボトムスや下着を脱いだと思ったらほんの数十秒で装着してしまう。凶悪なくらいに張り出たカリ首も、血管が浮き出た幹の部分も、全部が薄いゴムの膜に覆われていく。
「あの、きょうは、」
「だから、なに? 最近エッチしてなかったから、オレあんま余裕ねえの。早く喋って」
決して怒っているわけではないのだけれど、確かに彼が言う通り声色に余裕がない。こちらの言葉を一応待ってくれているが、さっさと広いベッドに押し倒されて、足を抱えられ、ぬかるんでいる密壺に亀頭を押し当てられた。
「あ、た、大したことではないんですけど、その、今日は、」
ベッドに放り出していた両手をフロイドへと伸ばせば、彼の上半身が下りてくる。遠慮なく背中に手を回し、しっかりと筋肉がついた胸に擦り寄る。
それから小さな声で、
「先輩の、おちんちん、なめたかったなぁ、……なんて」
と打ち明けた。
すると。
「────ッ、クソ!」
グル、とフロイドの喉が唸ったと思えば、かなり強い力で抱き締められる。それを嬉しいと思う間もなく亀頭が蜜壺をぐうと押し広げて奥まで入り込んでくる。
「っ、あああぁあっ!」
自分の腹の中が小さいせいか、フロイドのペニスが大きすぎるせいか。一瞬にして腹の中がいっぱいになって、フロイドの熱が体内を灼いていく。
「あっあっ、まっ、ひう、あぁあ、んっ! まって、せんぱ、まっ……ひ、あぁあああッ」
「ヨユーないって、言ったじゃん!」
「はっ、ぁああっ、あっ、んっんぅ、だって、いつも、せんぱ、……が、あんっ、ん、な、なめて、って……ッひ!」
「あー、くそっ、ちょっと黙って、小エビちゃん……!」
「わ、たし、も、なめた、くて……っ」
「だから! 黙って! 勘弁して!」
わっと叫んで情けなく眉を寄せている顔を下から覗き込んで、監督生はへらりと笑った。後半はちょっとした意地悪だ。わざと口に出した。余裕がないと言われては、つい揶揄ってしまいたくなるものなのだ。
ついでに、ペニスを受け入れているそこをきゅうと締めてやれば、フロイドが、ハァッと艶っぽい息を吐いて腰を震わせていた。その反応に心臓が喜んで鼓動を打ち、子宮がきゅううんと疼く。
(せんぱいの、かんじてるかお、かわいい、うれしい、かわいい)
余裕がないと言いながらもちゃんとスキンを着けてくれるところも。まだ痛みがある最奥までペニスを捩じ込まずに三分の二程度で様子を伺ってくれているところも。さっさと射精してしまわないように力を籠めているせいで、ピクピクと震えている綺麗な腹筋も。
(だいすき)
欲に素直に従って動いている愛しい腰に、監督生は足を絡めて自らも秘部を擦り寄せる。痛いくらいに絞められているせいで息が上手く出来ない。逆上せそうだ。フロイドが放つ深い海の香りで身体中がいっぱいになる。
「あっ、ひあっ、あああぁ、んんっ、きもちい、せんぱ、きもちいい……っ」
いつの間にか溢れていた涙もそのままにフロイドの胸に顔を擦り寄せる。
すると、足を抱え直されて、遠慮なく体を折りたたんでくる。膝が自分の肩に当たりそうなくらいに折り畳まれて、中を好き勝手に突き上げてくるペニスの角度が変わる。ぐり、と抉られたのは、一番弱いところ。
「〜〜〜っ、ひゃあ! あぁああっ、あっ、ううう……ッ」
頭の中が一気にスパークして、嬌声が裏返って腰が跳ね上がる。だけどしっかりと固定されているから逃げられなくて、勿論体重差があり過ぎるフロイドを押し返すことも出来ない。
「あーっ、あっんっ、あっ、ひぃっ! せんぱい、やだ、イく、でちゃう、でちゃう、うう……っ!」
また漏らしてしまいそうな感覚がせり上がってきて、カリカリと背中を軽く引っ搔いてお願いしても退いてくれない。それどころか、いっそう強く刺激されて、じわじわと堪えきれない潮が溢れていく。
そして。
「──っ、ヒァ……ッ!」
じゅぼ、とわざとらしく音を立てて、張り詰めたペニスが引き抜かれた。
引き抜かれる瞬間の、張り出したカリ首がナカを引っ掻いていく感覚が堪らなくて、フロイドのペニスを追いかけるように大量の潮を漏らしてしまった。
「はう、ああぁ、…っ……や、やだ……ぁっ」
羞恥心と気持ちいいという気持ちが入り乱れて、潮を漏らしながら体を震わせて絶頂を迎える。
「意地悪した子にはお仕置きしよっかぁ」
潮を吹いて絶頂を迎えて敏感になってしまっているのに、フロイドがニタリと笑うので、思わず頬が引き攣った。やり過ぎたのだ、と気付いた時にはもう遅く、フロイドが右手で割れ目を器用に左右に開く。
そして。
「や、ァ、待っ……ヒッ、ぁあああっ!!」
皮を剥くまでもなく、ぷりっと勃起して主張している陰核にペニスが押し付けられる。そのままゴム一枚隔てたペニスに容赦なく押し潰されて弾かれて、喉を反らして悲鳴のような嬌声を上げた。同時に堪えきれずにまた潮が噴き出る。ぷしゃ、ぷしゃ、と何度も溢れてシーツも、フロイドの体も濡れていく。
「だめだめ、やめて、そこいま……っ、あああっ、あう! いっ、イく、イッちゃ、ひっ、あぁっ、ぁああッ……!!」
いつ絶頂を迎えているか、もはや分からないレベルで繰り返し、息の仕方が分からなくて何度も逃げようと身を捩る。
「じゃあ今度はこっち」
「ひぐっ、は、あうっ」
けれど、再びフロイドのペニスを捩じ込まれて、逃げるなんて夢のまた夢なのだと思い知る。
「あ、あつい、せんぱ、あつい、ぃ……!」
はひはひ、と浅い呼吸を繰り返してマグマの中で溺れている気分だ。
泳ぐことが何よりも得意な人魚に助けを求めるのに、当の人魚は凶悪な顔で笑って腰を揺する。
「オレもすっげーあつい。小エビちゃんの中きもちーね。もうずっとここにいたい」
「ひっ、んんっ……!」
「っ、ん、またイッた? あは、止まんないね、小エビちゃん」
「だ、だって、せんぱい、が、きもちいって……っ」
「なぁに? オレがきもちいいと、小エビちゃんイッちゃうの?」
「んっ、んっ」
「なにそれ、かわいい」
あは、とフロイドは笑うけれど、監督生からすれば紛れもない事実なのだから仕方ない。
「じゃあオレもイッてもいーい? 結構限界なんだよね」
その言葉にも何度も頷いて、再びきゅうとナカを締めた。それを合図にピストンが早くなって、フロイドの動きが射精を迎えるためのものへと変わっていく。この時の激しさを知れば、いつもちゃんと遠慮してくれているのだと理解できる。そういうところも好きだった。
「小エビちゃん、小エビちゃん」
ハーッ、とフロイドの息が獰猛な獣のようになって、嬌声を上げる口は塞がれる。
長い舌で口腔内まで余すとこなく犯されて、感覚は全てフロイドの支配下になる。
こうなってしまえば自分の体は自分で制御出来なくて、何度だって素直に絶頂を迎えて、早く早くとフロイドのペニスに精液を強請ように絡みつく。
口の周りはお互いの唾液でベタベタになって、それでもくっついて。フロイドが「だすよ」と言うだけで脳が蕩けた。
「せんぱ、せんぱい、ぁっ、あ、あっ、────ッ!!」
「ッ、ン」
許される一番奥までペニスが入り込んできて、そうかと思えばビクリと跳ねる。次いで、じわじわと体内の熱が上がっていく。この瞬間が何よりも気持ちいい。心身ともに満たされていく感覚。だけど、これがスキンのない状態ならば、もっと気持ちいいのだろうなと、監督生は絶頂を迎えて使い物にならなくなっている脳でぼんやりと考えた。
「……こえびちゃん、だいじょーぶ?」
「は、はい……」
ナカを圧迫していたものが少しずつ小さくなっていくのが分かる。しかし、それでも引き抜かれるとどうしても潮が漏れてしまって、しかもそれを見られてしまって、ううと唸って顔を赤くした。
「ちゃんとオレが洗うから大丈夫だって」
「そ、ういう、問題じゃないんですけどね……」
まだ全身が怠くて動けない監督生を余所に、フロイドはさっと体を離し、とっぷりと精液が入ったスキンを外して口を縛った。生々しいその光景に思わず目を逸らすけれど、ハッと思い付いて、ゆっくりと体を起こした。
「ん? 大丈夫? 寝てていいよ」
使用済みのスキンを持っていないほうの手を貸してくれて、それを頼りにベッドに座り込む。
「それともこのままシャワー行く?」
「いえ、そうじゃなくて」
「んん?」
フロイドの問いかけには口を横に振り、監督生は目当てのものに顔を寄せた。
「エッ、ハァッ!? こ、こえびちゃ……っ」
こんなにも焦っているフロイドの声を聞くのは滅多とない。
おお、と謎の感動に包まれながら、まだティッシュで拭ってもいないペニスに舌を這わせた。
しかし。
「…………ゔ、ゴムの味……」
「そっ……! そうに決まってんじゃん、なにやってんの、マジで……」
「だって、したかったんですもん」
体勢を低くした状態で、顔だけを上げてフロイドを見上げれば、長い長い溜息を吐き出された。
「なんですか」
「小エビちゃんってさぁ、オレのこと振り回すの結構上手だよね」
「や、振り回すのはフロイド先輩の専売特許ですよね?」
「いや、うん、うん、そうなんだけど……」
兎に角今はダメ。シャワー浴びてから。
そう言われてベッドに押し戻されてしまって、布団を全身に落とされてしまっては、監督生も素直に頷くしかない。フロイドは下着とボトムスだけを身につけて、シャワーへと向かうようだ。
「ちょっと寝ててもいーよ。その間に鍋温めてくっから」
「はぁい」
「お腹いっぱいになったらまたシようねえ」
「はぁい」
大人しくなった監督生に、よしと頷いて、フロイドは小さなキスを残して部屋を出て行った。
そのまま一時間くらい眠ってしまっていたらしい。ふと視線を感じて目を開ければ、目の前にフロイドの顔面があったものだから一気に目が覚めた。
「おはよ。っていってもまだ夜中だけど」
絶対に口を開けて間抜けな顔をしているところを見られたと、布団に潜り込もうとすれば、意地悪な両腕に布団を引き剥がされる。
「ねーねー。起きてシャワー浴びてきなよ」
「……あい」
「オレ、小エビちゃんが涎垂らして寝てても可愛いって思うから大丈夫だよ」
「…………それ、私の精神が大丈夫じゃないんですよね」
ずうん、と落ち込めば、ケタケタとフロイドが子どものように笑った。
シャワーを浴びて、いい匂いがするキッチンへと向かえば、ちょうどフロイドがポトフを深皿によそってくれているところだった。
「わ、おいしそう」
ゴロゴロと大きく切られた色とりどりの野菜。皮が厚めで大振りなソーセージ。それからイカやタコといった海鮮類まで入っている。スープは、自分が作ったものとは比較しようがないくらいに透き通っている黄金色で、匂いだけで口腔内に唾液が溢れた。
「いっぱい食べていいよぉ」
「いただきます」
フロイドはこうやって、夜食まで作って持ってきてくれる。これも初夜で腹を鳴らしてしまったから始まったことだ。
──小エビちゃんがオレのために食べるの控えてんなら、エッチのあとで食べるご飯はオレがいーっぱい作ってあげる。
そう言って、あの初夜の日ですらフロイドは笑って炒飯を作ってくれた。
それ以降、一回だって手料理が途切れたことはない。
「んんっ、おいしーです! フロイド先輩すごい!」
「でしょ〜。今回のも自信作なんだよね」
ダイニングテーブルで向かい合って、二人でポトフを食べる。
モストロ・ラウンジで男子高校生向けに提供されている味ではなく、優しい優しい素材を生かした味がする、監督生専用のポトフを。
ムラッ気があって気分屋の、この男の特別扱いは、いつまで経ってもくすぐったくてしかたない。
「フロイド先輩、大好きです」
「そっかぁ。おかわり欲しいの?」
「はい!」
「小エビちゃんって本当に素直で面白いよね」
あっと言う間に空っぽになった深皿を元気いっぱいにフロイドに手渡して、それからもう一度「すきです」と大きな背中にハートを飛ばした。
「オレも好き。はい、どーぞ」
「いただきます!」