ラビューラビュー

暫く読んでいた問題集をパタンと閉じ、随分と疲れた顔をした監督生が顔を上げた。
「先輩、なにか飲み物でも飲みませんか?」
「いいよ、オレ取ってきてあげる。小エビちゃんは座ってな」
なにがいい? と聞けば申し訳なさそうに眉を落として「甘いものがいいです」と強請る。頑張り過ぎて疲れている頭をひと撫でしてから、フロイドはソファから立ち上がった。
勝手知ったるオンボロ寮のキッチンで、少し悩んでからホットミルクを作る。夜も遅いが、今日くらいは蜂蜜たっぷりにしても罰は当たらないはずだ。
(なんも知らない世界の勉強とか、すっげーストレスだろうなぁ)
楽しいですよと監督生はいつも笑っているが、それでも限度というものがある。
夕食作りのときにこっそりと作っていたプリン・ア・ラ・モードを取り出して、ホットミルクとともに監督生の元へ。
テーブルに突っ伏していた彼女は匂いにつられて簡単に飛び起きた。
「フロイド先輩のホットミルク! あ、プリンも!」
「今日はよく頑張ったからねぇ〜」
「ありがとうございます!」
甘いものは疲れを癒すのだろう。一口頬張るや否や、血色が良くなった顔が蕩けている。
「テスト上手くいくといいね」
「はい。フロイド先輩の教え方が上手なので粗方理解はできたと思うんですけど、……でもやっぱり不安です。自分も、……グリムも…………」
「赤点取ってもまた付き合ってあげるから、心配しなくていーよぉ。開き直って早々に寝ちゃったアザラシちゃんはしらねーけど」
「や、フロイド先輩に勉強に付き合わせなくていいように頑張ります」
「遠慮しなくていいのに。別に対価取ったりしねぇし」
「んんん、そうじゃなくてですね、」
折角フロイド先輩と一緒にいるので、別のことしたいじゃないですか。二人きりですし。
「……へえ?」
「うう」
言った本人は、もじもじと体を揺らしながら、顔を赤くしている。フロイドはパチリと大きく瞬きをして、それから意地悪に瞳を細めた。頬杖をついて意味深な視線でねっとりと舐めた。
――監督生からのそういうお誘いはこれが初めてだ。
「あはっ、小エビちゃんのえっち」
「だっ、だって! だって……!」
「あははっ! すっげー顔真っ赤になった〜!」
「〜〜っ、もう!」
プリンに寄り添っていた生クリームとイチゴを頬張って、それでも監督生は怒っていたのでフロイドは口先だけで「ごめんねぇ」と謝る。勿論、心が籠ってないことくらい監督生にはお見通しである。
だから。
「小エビちゃんこっち向いて。ほら、揶揄ってごめんね」
 でもこんな風に揶揄わないと、今すぐにでも食べてしまいそうなのだ。
「オレのこと見て」
「……うう、」
イチゴの味が残る唇にキスをして、甘やかすように頬を指先でくすぐった。
「すぐに許してしまう自分が情けない……」
「オレね、小エビちゃんの単純なとこ好き〜」
「絶対に褒められてないのに好きって言われて喜んでしまう自分が腹立ちます」
「ねーねー、小エビちゃん。別のことシたくなっちゃったから早く食べて」
「もう聞いちゃいないですね」
隣にいるだけじゃ物足りなくて、監督生の後ろを陣取る。抱えるように腕を回して、背中を丸めて顎を監督生の頭に置いた。
「お風呂一緒に入って、そのまま寝室行こうね」
「泡風呂がいいです。この前ジェイド先輩に貰ったやつ」
「いーよぉ」
今度はすりすりと頭に顔を擦り寄せ、小さい体を抱き締める。

「今夜はオレがいっぱい甘やかしてあげるからね、小エビちゃん」

蜂蜜たっぷりのホットミルクよりも甘い夜を想像しては耳を赤くさせた監督生に、フロイドは追い討ちをかけるように宣戦布告のキスをした。

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