グッナイベイビー、また明日

監督生は寝付きがいい。それに加えて寝が深い。
これが結構有難い。

「……」
「……すー……」
寝に入る前に深い呼吸が一度。
それが終われば、監督生はあっという間に夢の中へと落ちていく。
「……こえびちゃーん」
寝ているように見せかけた薄い瞼を持ち上げて、小さな声で名前を呼んだ。起きていればすぐに返事が返ってくるのだけれど、眠っているから返事はない。
フロイドはこそこそと体を起こして、口のすぐ下までかぶっていた布団を胸元まで下げる。枕元に置いていたマジカルペンを振って、ほわほわとした灯りを空中で泳がせた。ほんのりとしたオレンジに照らされた寝顔は今日も今日とても幸せそう。
「あはっ、かーわいい」
こうやって寝顔を見るのが好きだ。
無防備に手も足も放り出して、間抜けに口を開けて。それから時々寝言でフロイドを呼ぶ。自分の隣で安心してくれているのがよく分かる。
「小エビちゃん」
するりと頬を撫でて、前髪をかき上げる。
まあるい額にキスをひとつ。堪らず唇にもひとつ。
「ん、むう」
フロイドからのキスに、眉を寄せて不機嫌そうな顔をする監督生はこのタイミングくらいしか見えないだろう。いつだって嬉しそうにしているから。
勿論、嬉しそうな顔は大好きで、もっと見たくてキスを続けるのだけれど、フロイドはこの不機嫌な顔も好きである。
「ふふ」
だらしない顔で笑ってしまうくらい好きである。
「小エビちゃん、小エビちゃん」
だからまた性懲りも無くキスをして、不機嫌な顔を堪能する。
キスを繰り返しても起きないのだから本当に有難い。
「……ん、んん、……ふ、ろ……」
 唇が動いたので慌てて耳を澄ませる。
 けれど。
「……おふろ、…………おっきい……」
「は? どんな夢見てんの、おもしれ〜」
 どうやら今夜は、大きなお風呂に入っては感激しているご様子。
「大きいお風呂入りたかったら、オクタヴィネル寮においで」
「んふ、……はあい」
「すげ、ちゃんと返事するだぁ」
今夜も心いくまで堪能して、それからようやっと灯りを消す。
次に寝顔を見られるのは一週間後。あぁ長いなぁと思っていても、騒がしい日々のおかげであっという間だ。

「おやすみ、小エビちゃん」

名残惜しそうにおやすみのキスをして、それから小さな体に絡みつくようにして抱き締めた。
柔らかい感触と、甘いシャンプーの匂いにすぐに眠気がやってくる。

おはようのキスの時には、いつも通りの嬉しそうな笑顔が見られるのだと思ったら、朝が待ち遠しくてしかたない。

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