二人して縺れそうになる足で、どうにか監督生の部屋に転がり込む。すっかり夜が深くなって暗いそこを、フロイドの魔法がほんのりと照らしてくれた。ようやっと見えたフロイドの顔にホッと息を吐く。
そうかと思えば、乱暴に閉めた扉に背中を押し付けられて、呼吸ごと唇を食べられた。持ち上げられた顎が痛いが、監督生は従順に受け入れていく。寧ろもっとと強請るように自ら口を開けて、久しぶりのフロイドの長く肉厚な舌を味わう。
「っ、せんぱい」
「なに」
いつものような「なぁに」と間延びした声ではない。その二文字にフロイドの余裕のなさが凝縮されている気がして、腰がゾクゾクと震える。は、と吐き出した息は甘ったるくなっているのが自分でも分かる。
「ベッド、ベッド行きたいです、流石に」
「ん」
噛み付くようなキスから、ちゅう、ちゅ、と可愛らしいキスに変わって。何度も繰り返される口付けの合間にお願いすれば早々に持ち上げられてしまった。フロイドの長い足では四、五歩ほどの距離なのにキスは止まず、呼吸は甘くなる一方だ。
洗いたてのシーツの上に落とされて、圧し掛かるようにしてベッドに膝をついているフロイドが自身のジャケットを脱ぎ捨てた。監督生も同じように脱ぎ、せめて畳んでおこうと思ったのにフロイドの手に邪魔される。鷲掴みにされて床に放られたあれは、きっと事が終わる頃には皺だらけになってしまうだろう。
「あー、この部屋小エビちゃんの匂いが強くて気が狂いそ」
「その言い方止めてください、クサいみたいじゃないですか……!」
「いい匂いって言ってんじゃん」
「全く伝わりませんから!」
不貞腐れたように眉を寄せたフロイドは、褒めてんのに、と言いながらサイドチェストに手を伸ばす。
グリムが間違って開けないように鍵を閉めていたはずだが、フロイドはいとも簡単に破壊して開けた。無残な姿になったサイドチェストに、憐みの視線を送る。
「あとで直してくださいよ」
「わかってるって」
取り出したのは新品のスキンが幾つかと、ローション。代わりに置かれたのはフロイドの青いピアス。
ピアスを外し、薄紫色のボトルを手にしたフロイドを見ただけで、じんわりと唾液が口腔内を満たしていく。このあとのことが容易に想像出来て、期待で胸が膨らんだ。
あれは、あのローションは滅多と使うことがない。だからまだ新品同様である。
使う時は大抵、前戯もそこそこに挿入したくて堪らない時。
つまり、フロイドの我慢が許容範囲ギリギリだと言っているようなものなのだ。期待するなと言うほうが無理だ。
「ごめんね、小エビちゃん。マジで余裕ねぇの」
一ヶ月も小エビちゃんに触れなかったとかあり得ねぇもん。
「あとでゆっくり触りっこしようね」
言って、ローションのボトルをこちらに渡してきたと思えば膝丈のスカートをべろりと捲られた。次いで、下着にフロイドの指が引っ掛かり、遠慮なく下ろされていく。
「……あはっ」
フロイドの機嫌が更に良くなったのが手に取るようにわかる。
「キスしただけなのにこんなに濡れてんの? 小エビちゃんもえっちしたかった?」
「っ、わかってるくせに……!」
「小エビちゃんも見る? すげー濡れてるからパンツ脱がすと糸引いてんの。えっち〜」
「ゃ、あっ、言わ、ないでください」
「……美味そう」
「えっ、うそ、うそ、やだ、せんぱい!」
ニンマリと意地悪に笑って、自身の唇を舐めたかと思えば、中途半端に下着を下ろされ、靴下を履いたままの足首を掴まれた。そのまま腰が持ち上がって、体を折り畳まれて、淫らに愛液で濡らしたそこがフロイドの眼前に来る。
「ッ、ばか……!」
シャワーすら浴びていないのに、と訴えたところで聞く耳は持ってくれないことくらい分かっている。現に、喚いたところでフロイドはご機嫌に眦を落とすだけ。
次いで、長い舌で媚肉も膣口も大きく一舐めされて、吸われて、嬌声が零れた。
「舐めたらいっぱい溢れてくんね」
ローションいらなかったかも、なんて言われて羞恥で顔も体もカッと熱くなる。
「やだぁ、せんぱい、だめ、吸うのやだぁ……ッ!」
「じゃあこっち舐めてあげる」
足首から手が離れたと思えば、両手で媚肉を左右に開かれてしまう。足を下ろそうにもフロイドの体が邪魔で動けない。
ふう、とフロイドの息がかかって足が跳ねた。
「真っ赤になってんじゃん。ココ、自分で触った?」
「さっ……! さわ、ってない、です……」
「ふうん。オレはねぇ、小エビちゃんのこと考えながらシたぁ」
「う、うそっ」
「ホント。つうか、ウソ吐いたって仕方ねぇじゃん」
ひとつ笑って、それから無防備なクリトリスに舌を這わされた。
「ひっ、んん…っ」
すっかり充血してぷっくりしているそこを余すことなく舐められて、弾かれて、監督生は渡されたローションをぎゅうと握り締めて体を震わせた。
「あっ、あぁっ、せんぱ、せんぱい……っ」
ちゅう、じゅるる、とはしたない音がして、愛液が更に漏れるのが自分でも分かった。
絶対に視界には入れたくないと、硬く瞼を閉じる。それでも一頻り舐められて、今度は指で摘ままれて捏ねられてしまえば、そんな抵抗も意味を成さない。
「アァッ……!」
ガクガクと大袈裟なほどに腰が跳ねて、あっと言う間に限界を迎えそうだ。更にフロイドの指は、簡単にナカに入り込んではザラザラとした弱点を擦ってくる。
「ヒィッ、ぁ、あっ、あっ、だめ、……い、イきそう、だからっ」
「イッてもいーよ」
あともう一歩のところまであっさりと連れていかれてしまって、監督生は慌てて首を左右に振った。待って、待ってと切羽詰まった声で何度も訴える。
「やだぁ、待って、せんぱいの、で、イきた……ッ」
だって、一ヶ月もずっと我慢していたのは自分も同じなのだ。
テストとモストロ・ラウンジの繁忙期が被ってしまったからとは言え、話をすることすら満足に出来なかったのは堪えた。匂いだけでも興奮してしまうのはお互い様。欲を言えば、顔を見て、キスされながらイきたい。
「おねが、せんぱい、いっしょがいい」
ぐう、と足の指にまで力を籠めて我慢しながら涙ながらに訴える。
すると。
「──ッ、どこで覚えてくんの、そーいうの!」
わっと吠えるようにフロイドが叫ぶ。口と手が秘部から離れていく。
流れるように下着は奪われて、制服は着ているのに下肢だけが風通しのいい格好になってしまって、けれど恥ずかしいと隠す余力はない。
フロイドは体を起こし、自身のベルトに手を掛けた。ガチャガチャと音がして、用が無くなったベルトはジャケット同様に床に捨てられる。ゴトリ、と金属が床に当たる重い音がした。
「もう挿れるから」
制服のパンツの上からでも分かるほどに膨れていたそこを寛げると、相変わらず凶悪な形をしたペニスが出てくる。初めての時など、見ただけで失神しそうになっていたというのに、今では気持ち良さを知っているので子宮が勝手に疼いてキュンキュンと鳴いている。じわじわと勝手にまた漏れ出た愛液がバレてしまいそうで、慌てて足を擦り合わせた。
ベッドに散らばっていたスキンを一つ取って装着し、そのタイミングで監督生がローションのボトルを渡せば「いい子」と頭を撫でられた。フロイドの大きな手の平に垂らされたローションは、監督生の秘部に塗りたくられていく。
「…っ、ぁ、んん……」
「撫でられるだけでも気持ちいーの?」
「は、はい、ゾクゾクします……っ」
何度もクリトリスの上を往復されて、足が勝手に跳ねる。そのままナカにもローションが塗られて、引き抜かれた指はそのままフロイドのペニスへ。スキンの上から、あられもない体液で濡れた手で扱いていく。
「小エビちゃん、足広げて」
「……っ」
「そう、いいこ」
えらいね、と慈しむようにゴールドとオリーブの瞳が細まっていく。ゆったりと持ち上がった口角に褒められると、それだけで息が上がって仕方ない。
あぁやっとひとつになれる、と期待して唇も喉も乾く。ふろいどせんぱい、と名前を呼んだ舌が縺れる。
「あは、素直な小エビちゃんだいすき」
自分で広げた足にフロイドの右手が伸びる。左手はペニスに添えられていて、それが膣口に当たる。スキン越しでも熱いそれが生々しくて心拍数が上がった。
ぐ、とフロイドの腰が動く。
「────っ、あ!」
ローションのおかげで滑りが良く、痛みもなく一気に最奥までフロイドのもので満たされていく。
「っ、ん、……はぁっ……!」
ナカを擦られるのも、息苦しいほどの圧迫感も、なにもかもが気持ち良くて嬌声が追いつかず、気付いた時には絶頂を迎えていた。
「ぁ、あ、っ、アァッ!」
首も背も反らせて暴力的なほどの快楽を享受していく。口からは意識せずとも単音が零れて、一瞬頭の中が白くなった気がした。
一拍遅れてフロイドが荒々しい息を吐き、逞しい胴が震えた。
「は、……すげ、小エビちゃん、イッちゃった?」
「ぁっ、ああ……、うそ、だって、まだ……」
「ン、まだ奥まで挿れただけ」
動いてねーもん、と言われて、絶頂を迎えたばかりでうまく働かない頭を左右に振る。
確かに絶頂の一歩手前で堪えてはいたけれど、だからと言って挿れただけでイッてしまったのは初めて。何とも言い得ぬ羞恥が遅れてやって来ては涙に変わる。
「そ、んな、うそ…、あっ、や、先輩まって、まだ動かないで……ッ!」
「無理に決まってんじゃん。小エビちゃんのナカ、すげービクビクしてて、きもちい」
最奥まで嵌ったペニスがゆっくりと抜かれて、無意識の内にぎゅうと締め付けてしまう。それを分かっているのだろう。フロイドは制止の声には答えずに段々とナカを穿つスピードを速めていく。
「あっ、あぁああっ! まって、いまだめ、…っ、せんぱ、イく、またすぐにイッちゃ、……ん、ああぁっ!」
張り出したカリ首で痙攣しているナカを何度も擦られて、角度を変えて弱点を突き上げられて。堪らずに何度も大きく嬌声を上げて、達していく。
逃げ腰になれば乱れたスカートごと大きな手に捕らえられて、シーツを掴んだところで抵抗にもならない。
「あっあっ、また、またイくから、…ッ、アァ!」
一度絶頂を迎えてしまったら、もう我慢が出来なくなる。勝手溢れてくる涙は突き上げられるたびに散っていく。
それを見たフロイドが体を寄せてきて、甘くなった眦を舐めてくれた。
「小エビちゃん、痛い?」
僅かにフロイドの動きが穏やかになったので、ふと見上げれば、背中を丸めて心配そうにこちらを見下ろしていた。
はふはふと荒い息を繰り返しながら、監督生は彼の首に腕を回す。
必要最低限しか乱していない制服の下で汗をかいているのだろう。いつもより濃い匂いがして、無意識に大きく息を吸い込んだ。
「んーん、ぁっ、い、いたくない、です」
ウソではない。圧迫感はどうしたってあるけれど、ローションを使ってくれているおかげで痛みは感じないのだ。
「そ、よかったぁ」
子どものように無邪気に笑うのに、ナカで暴れ始めたペニスは容赦なく弱点を突く。あぁ、と体を震わせて監督生は啼く。
「ね、オレも一回イッてもいい?」
監督生は必死になって何度も頷いた。
広げていた足をフロイドの腰に絡ませて、だらりとこちらに垂れてきている髪の長い一房を掻き上げて、耳に掛けてやる。こうするといつもキスをしてくれるのだ。監督生は、二人だけが知るこの合図をとても気に入っていた。
「小エビちゃん、舌出して、ちゅーしながらイきたい」
「ん、あい、どーぞ」
「ありがと」
言われた通りに口を開いて舌を出す。嬉々としてそれを長い舌で突かれて、負けじと舐め返す。
すると、フロイドの腰の動きが荒々しいものになっていく。自分が射精するための大きな動きだ。全体を強く擦られて、そうかと思えば子宮口にねっとりと深くキスをされる。同じように舌も愛されて、フロイドの熱で体が溶けていきそう。
「っは、はぁ、小エビちゃん、イく、出る……ッ」
「んっんっ、ぁああッ、わたしも、またイッちゃ…っ、む、んんんっ!」
顔を両側から包み込まれて、舌だけでなく唇全体を食べられる。お互い息も出来ないほどに深く口付けをして、限界まで捩じ込まれたフロイドのペニスが僅かに跳ねた。
「──っ、んんんっ!」
グルル、とフロイドの喉が鳴ったのが聞こえた。次いで、薄っぺらなスキン越しにも熱を感じて、それだけで心の深い部分からたっぷりと満たされていく。
「あー……、すげ、きもちいい」
どうやら満たされているのはフロイドも同じのようだ。
心底気持ち良さそうな声を出して、全身で監督生をぎゅうぎゅうと抱き締めている。それに、スキン越しということも忘れているのか、オスとしての本能がそうしているのか、射精したばかりのそれを何度も奥に擦り付けてくる。大きく動いているわけでもないのに、敏感になっている内部は細かな刺激ですら拾い上げて再び体に淫らな火を灯す。
「ん、ぁ、せんぱい」
「なぁに? これ、グリグリされんの気持ちいいの? ビクビクしてんね」
「は、はい、奥、腰も、いっぱいぞわぞわって、しちゃう……っ」
「ほんと今日の小エビちゃん素直だねぇ」
逢えなかったの寂しかったんだぁ?なんて、揶揄うように言ってくるので、監督生は当たり前ですと返してフロイドの制服ごと背中にしがみついた。短い、綺麗な青い髪が張り付いている首筋に顔を寄せて、甘える。
「好きな人になかなか逢えないのは、つらいです」
だから、寂しかった心を宥めるように、満たすように、もっともっとくっついていたい。体温を感じて、匂いに酔いしれて、心臓の音に安堵しながら眠りたい。
「もっと、くっついてください」
フロイド先輩、だいすき。だから、もっと。
「せんぱい、せんぱい」
「……」
珍しく素直に訴えたけれど、フロイドから何も返事が返ってこない。石になったかのように指の一本だって動かなくて、監督生は不安を感じ始めて、そろそろと顔を上げた。
しかし。
「見んなって」
ようやっと動いたフロイドの手に、強制的に元の位置に戻されてしまって顔は見えなかった。けれど、どこか声が上擦っていて、触れている部分の熱が高まっていく。なにより、体内へと受け入れたままのペニスがびくりと跳ねて、膨らんでいく。
あぁこれは、と監督生は口角を持ち上げた。
「……あ、もしかして照れてます?」
「うぜ」
知らず、声が意地悪なものになっていた。
「あはは、首まで熱くなってきましたね」
「うっぜー」
「先輩かーわいい! ねぇこっち見てくださいよ、顔が見たいです」
「……」
単調な返答にいっそう機嫌を良くして笑っていれば、何の前触れもなくペニスを引き抜かれて、うひゃあっと変な声が出た。
「……小エビちゃんさァ」
フロイドの体が離れていく。用済みのスキンはさっさと外されて口を縛る。
「オレのこと揶揄って、」
そうかと思えばフロイドは新品のスキンを手に取った。ピリ、とそこだけは丁寧に封を切って、あっと言う間に装着してしまった。
「仕返しされんのとか、考えてねぇの?」
あまりにも手際が良く、見入ってしまっていた監督生がハッと顔を上げた時にはもう遅い。フロイドはにっこりと笑っているのに、こめかみに青筋が浮いていて思わず頭を抱えた。
「……ち、ちなみに、今から謝っても……?」
「遅い」
「デスヨネー……」
ばっさりと斬り捨てられて、もうどうしようもない。
更に、フロイドは監督生の次の言葉を待つこともなくさっさと腕を引っ張って体を反転させた。
フロイドに背中を向けた体勢に、サァっと血の気が引いた。──だめだ、これはだめなやつ。
「せ、先輩、待って、話し合い、話し合いしましょ!?」
「オレ、話し合いで解決するとか、そういうのはアズールとジェイドに任せてんの。面倒くせぇじゃん」
「それ、シチュエーションが違いません!?」
その話し合いってきな臭いヤツですよね、と叫ぼうとしたが、それより前にスカートをたくし上げられて、剥き出しの尻にペニスが強く当てられて言葉が詰まった。
「ヒッ!?」
「黙る?」
「……っ、……っ……!」
「いいこ」
両手で口を抑えて無言で必死に頷けば、尻に当たっていた熱が膣口へと移動する。
上半身はベッドに沈んだままで、挿入できるように尻だけを持ち上げられる。まるで自分が強請っているかのようなポーズに羞恥が襲う。
「腰、下ろしちゃダメだから」
オレに見えるように持ち上げてて。
言われても、無理です!と心で叫ぶ。監督生は正常位や騎乗位で好き放題穿たれるよりも、後ろからされるのが一番苦手だったのだ。
(調子に乗るんじゃなかった!)
涙目で後悔しても後の祭りである。
つぷん、と先端が挿って、汗で濡れたシャツの下で背中が粟立った。ゆうっくりと、亀頭が内部を押し遣る。襞のひとつひとつを確認するように、それこそじれったいほどにゆっくりと。
「──ぁ、あ、ふう、……ん、ふう、う……っ」
手の中で甘ったるい息が充満していく。熱が篭って、頭がくらくらする。あぁ、だめ、だめ、と言おうとして、それは声にならずに胃へと落ちる。
ようやっとフロイドのペニスを根元まで埋め込まれたときには、腰が抜けてしまいそう。それなのに、今度はまたしてもゆっくりと引き抜かれて、カリ首で襞を引っ掻かれる感覚にじわじわとイかされてしまう。
ひっ、と引き攣った声を上げて尻も膣内も震わせていれば、フロイドが機嫌よく笑った。
「小エビちゃん、これでイッちゃったんだ? 相変わらずバックでヤられんの好きだね」
ちゅぽ、と大きな水音とともにフロイドのペニスが完全に抜けた。その刺激にすら声が漏れて、行かないでと縋るように愛液が零れてシーツを汚していく。
「す、好きじゃ……」
「好きじゃん。挿れて、抜いただけでイッちゃうくらい」
だから。
「今度は小エビちゃんが満足するまでハメてあげる」
言って、緩やかな絶頂を迎えたばかりの膣内にフロイドのペニスが捩じ込まれた。
「っ、ああぁあっ!」
今度は息をする暇もないほどに早急なものだ。パチ、と肌同士が当たって高い音を響かせる。
「あっあっ、ひっ、あああぁっ! そこ、だめ、だめぇ……っ!」
何度も何度も奥まで犯されて、腰が下がりそうになったら持ち上げられて、逃げ場もない。強制的に絶頂へと昇らされているような感覚に目の前が白くなったり黒くなったりと忙しい。
監督生は、どうにか近くにあった枕へと手を伸ばす。後ろから容赦なくやって来る快楽を少しでも逃そうと強く握りしめて顔を埋める。
(だめ、だめっ、うしろから、されるの、っ、だめ、頭、おかしくなっちゃう……ッ)
だから苦手なのだ。自分の体が自分のものじゃなくなる気がして。
突き上げられるたびにぐちゃぐちゃと淫靡な音を立てているのは、ローションだけのせいじゃないだろう。愛液が溢れて止まらないことくらい自覚している。
「フロ、イドせんぱ…ッ、また、イく、イッちゃいます……!」
「ン、いっぱいイこうね、小エビちゃん」
「アッ! やだ、つよくしないでぇ、おく、グリグリしちゃ、やぁっ、……ひ、アッ、アァーッ!」
ガクン、とオーバーなほどに跳ねた体を押さえ付けるようにフロイドが圧し掛かってくる。
「小エビちゃん」
自分よりも大きな体で包み込まれた。
逃げ場がない、ではなく、ここが居場所なのだとフロイドが言い聞かせてくれているようだ。
「小エビちゃん」
いつもより鼓動の早い心臓の音が体中に響く。
欲に濡れて、男らしい声色になるこの瞬間がなによりも好きだ。きっと誰も知らない。自分だけが知っている声。
きゅう、と心臓が高鳴る。
「あ、あぁ……っ、あ、んん……ッ」
激しいピストンから、子宮口にねっとりとキスするような動きに変わって、絶頂を迎えたばかりなのに簡単に甘やかな絶頂を繰り返す。顔を埋めた枕は、涙でぐっしょりと濡れてしまった。
「小エビちゃん、すき、だいすき」
「ん、んん……っ」
体力の限界が訪れている頭では頷くことしか出来ない。
それでも、すき、かわいい、だいすき、と何度も繰り返されてはじわじわと熱くなってくる。
「も、わかりました、わかりましたからぁ……!」
「まだだぁめ」
もっと聞いて、と髪の毛を払って耳の中へと直接吹き込まれる。
「オレも、小エビちゃんに逢えないの寂しいし、すげぇ退屈」
「ひあ、あ、ああっ」
長い舌で器用に耳孔を舐められて、くちゅくちゅと響く水音が気持ちいい。
「ずーっとぎゅーってしたかったし、チューしたかったし、エッチもしたかったし」
子宮口から離れて、今度は浅い部分を擦られる。
時折、じゅぽっと音を立ててペニスが抜けると、追い掛けるように少量の潮が漏れる。
そして再びゆっくりと挿れられると、意味を成さない嬌声だけが零れていく。もう頭の中も、耳も、心も、全部がフロイドの声で満たされて、小さな隙間もない。
「オレね、ずっと離れてんのにこんなに誰かのことばっか考えてたの初めてかも」
そして。
「小エビちゃんにだけ特別。愛してるって言ってあげる」
囁かれた愛の言葉に、今度は監督生が顔も耳も体も真っ赤にする番だった。
好きも大好きも、ツガイになろうねも、沢山言われたけれど、愛してるは初めてだったのだ。
「せ、せん、せんぱ、」
思わず振り返って、はくはくと口を動かした。
なんて返事をすればいいか分からないけれど、どうしようもなく嬉しくて、幸せで、脳が蕩けてしまいそうだった。
茹でた海老よりも真っ赤になっている監督生を見て、フロイドがあはっと声を出して、目を細めて笑う。
「小エビちゃんこそ照れてんじゃん。これで、おあいこ」
きっと、揶揄ったことを根に持っていただけ。
けれど、目が合ったフロイドの滑らかな頬も負けず劣らず赤くなっていたので、もう私の負けでいいですからと言って監督生はキスを強請ることにした。
***
フロイドが二つ目のスキンの口を縛る頃には、監督生は腰が立たなくなっていた。下半身がこうも言うことを聞いてくれないほどになってしまったのは、久しぶりだ。
それでも汗を吸った制服を脱いで洗いたいし、シャワーも浴びたい。フロイドにそれを言った結果、監督生は手取り足取り介抱されて、後ろから抱き抱えられるようにして湯船に浸かることとなった。
監督生からすれば温い温度と狭過ぎるお風呂にはもうすっかり慣れて、ぴったりとくっついた素肌が心地よい。はあー……、と気の抜けた声を出した。
「小エビちゃんのおっぱい柔らかい」
「こら、一緒に浸かるだけだって言ったじゃないですか」
「ンー?」
「あっ、っ、もう、先輩! どこ触ってるんですか!」
「言っていいの? 小エビちゃんいつも嫌がるじゃん」
「言っていいわけないでしょう!?」
「えー、なにそれぇ」
むすぅ、と背後で唇を尖らせているフロイドの指は、それでもツンと主張している乳首を摘まんでくる。
それなりに大きさはあると自負しているのだが、フロイドの規格外に大きな手に包まれると随分と小さく見える。
(……アズール先輩、胸が大きくなる魔法薬とか作ってくれないかな)
考えて、まずアズールに願いを伝えるのが恥ずかしいという結論に至って却下した。
「あ、小エビちゃんなんか余計なこと考えてない?」
「胸が大きくなりたいなって」
「オレは小エビちゃんのこのおっぱい好き」
「じゃあこのままでいいですね。先輩が気に入ってくれてるなら無理に弄る必要はないですし」
「なにそれ。すげー可愛い」
「ま、先輩だけのおっぱいなんで」
「じゃあ名前書いていい?」
「水性マジックなら」
「魔法使って印字するのは?」
「……無色なら」
「やったー」
子どものように嬉しそうな声を上げるのに、がぶりと項を噛んでくる歯は獰猛以外の何物でもない。それでも可愛いと思ってしまうので、自分はもう末期なのだろう。
「小エビちゃん、オレ、こっちも好き〜」
しかし徐にクリトリスへと伸びてくる手は頂けない。
あっと声を上げるより前に、フロイドの左手が媚肉に隠れているそこに触れた。
「も、もうシないって……!」
「小エビちゃんが可愛いこと言うからヤりたくなっちゃった」
親指と人差し指で摘まみ、そのまま扱かれて腰が揺れる。ちゃぷん、と浴槽の中の湯も揺れる。
「ンッ、それ、すぐイッちゃうから、だめです」
「好きなだけイッてもいいよ」
今度は皮の上から押し潰すように捏ねられて、右手の指先では何度も乳首を弾かれる。二か所も同時に弄られてしまっては、洗ったばかりの膣口からまたとろとろとした愛液が溢れていく。
前のめりになると顔が浸かってしまうので、監督生は後ろのフロイドに凭れた。すると、胸から離れた右手に足を広げるよう誘導された。元より力が入っていない足は簡単に開いて、フロイドの両手を許してしまう。
「や、指、ナカに挿れないで……っ、こすっちゃ、やだぁ」
左手の中指で内部のザラザラしたところを擦られて、右手でやんわりとクリトリスを撫でられる。内腿が震えて足を閉じようとすれば「だめ」と耳に声を吹き込まれて言われるがまま。
「気持ちいいでしょ、小エビちゃん」
「あっあっ! きもちいい、です……ッ」
「ここと、ナカ触られるのどっちが好き?」
ここ、とクリトリスを強く捏ねられて甘くイッてしまった。
「やっぱりこっちが好き?」
「ん、ぁ……、どっち、も、すき」
「そっかぁ」
はしたない期待を込めてそう言えば、全部分かっていたフロイドが二本目の指を挿入した。そのまま、傷つけないように、しかしきっちりとナカを引っ掻きながら出し入れを繰り返す。 浅い絶頂を迎えたばかりの体はすぐに限界を迎えて、それからどうしようもなくキスがしたくて振り返った。
「ちゅーしたい?」
「はい」
いいよぉ、と。水に濡れた前髪を掻き上げているせいでいつも以上に色気が増した顔が綺麗に笑う。
監督生はいつもの癖で長い髪へと手を伸ばし、しかしそれすらも後ろへと流されているのだと気付いて恥ずかしくなる。
すると。
「小エビちゃん、今はこっちね」
引っ込めようとした手は掴まれて、滑らかな頬が擦り寄ってきた。大きな人魚が甘えてくる姿に、ぐうと心臓が締め付けられる。思わず唸るように「すきです」と言った。
それから、二度、三度とキスを繰り返し、
「そろそろ出よっかぁ」
と、フロイドが言うものだから監督生は目を丸くした。
「ん?」
思っていた反応と違うことにフロイドが首を傾げるので、もごもごと言い辛そうに口を動かして「先輩は、いいんですか、その……」と視線を下げる。
視線の先にあるのはフロイドのペニスである。
背中に当たる感触で勃起しているのは分かっていたし、てっきり一回セックスをしてから出るのだと思っていたのだ。
しかし、フロイドは「小エビちゃんのえっち〜」と言いながら頬を柔く抓るだけだ。
「だっ、だって、ずっと背中に当たってたから……!」
「当たってたからって見ちゃダメじゃん。オレだって恥ずかしいし?」
「絶対嘘ですよね?」
「まぁた意地悪されたいの? 小エビちゃんは」
「むぐ」
今度は鼻まで摘ままれて変な声が出た。その声にフロイドはケタケタ笑ってから、流石にバスルームにまでスキンは置いてないと言った。
「つけないと、小エビちゃんすぐに稚魚ちゃん孕んじゃうでしょ」
「えっ!?」
「……なにビックリしてんの?」
「い、いや、先輩がまさかそんな常識的なこと言うとは……」
「そんなに締められたいの? いいよぉ、全力で締めてあげる。小エビちゃんだけトクベツ」
「あっまってむり、これしぬやつ!」
両腕、両足が全身に絡みついてきて監督生は早々にギブアップを宣言した。それでもフロイドが離してくれることはなくて、しかし力は随分と弱くなったのでハグへと移行してくれたようだ。再び背中をフロイドに預けて、のんびりと湯の中で揺蕩う。
暫くバスルームに沈黙が落ちて、それから監督生が呟くように話し始めた。
「……ちゃんとゴムつけてくれてるの、実は有難いなぁ、っていつも思ってました」
思い返せば、初めての日から欠かさずスキンをつけてくれている。こちらからお願いしたことはないが、いつもフロイドの手がスキンに伸びるから勝手に安心し切っていた。
ちゃんと考えがあってそうしてくれているのだと知ると、胸が擽ったくて仕方ない。
「ンー、まぁ、いつか絶対孕ませようとは思ってるけど、」
「思ってるんですね」
「ウン。当たり前じゃん。……でも、それは今じゃないってのは俺だって理解してるし」
「……」
「オレとの稚魚ちゃん作って小エビちゃんが喜ぶならいいけど、小エビちゃんが泣くならダメじゃん。オレ、小エビちゃんを泣かせたくて一緒に居るわけじゃないからね」
でもエッチしないって選択肢はなしね、オレが泣く。
わざと明るい声色でフロイドが言った。それが照れ隠しなのか、思い詰めないように気を遣ってくれているのかは分からないが、監督生もフロイドに倣って「私も先輩泣かすのは不本意なので」と明るい声を出した。
けれど。
「オレと幸せになろうね、小エビちゃん」
なんて不意打ちで言うものだから、鼻の奥がツンと痛くなって、ひくりと喉が鳴った。
なんだか、しばらく会ってなかったからなんて理由では到底追いつかないほど甘やかされている気がする。
背中を向けていても、音で理解したのだろう。やっぱりもう少しここにいよっかぁ、といつもよりも間延びした穏やかな声が背中をゆったりと撫でた。
監督生は、うんと頷く。好きですと言ってフロイドの手を繋ぐ。
心の中で、そっと赤い糸を固く結び直した。