首に咲くのは愛の花


夕方。住み慣れたアパートは夕日に照らされ、アーティストのデザインハウスの様に真っ赤なオレンジ色になっていた。たった一色の変化だけで人間の目と脳は本来の姿を忘れ、都合のいい記憶を結びつける。そんなことをぼんやりと思いながらシカダイは古びたドアに鍵を差し込み、がちゃりと開けた。開けた瞬間に覆いかぶさって来た体に身を預けると、ぐいと引っ張られ、柔らかくちゅっとリップ音が鳴る。扉を閉め、シカダイが顔を上げると唇を重ねて来た恋人のリョウギは嬉しそうに笑った。その笑顔にシカダイの心も熱くなり、笑顔を返す。そして互いにギュッと抱きしめ合う。服越しにでも感じる愛しい人の感触はシカダイの心をぽかぽかと温めてくれた。背中に回されていたリョウギの手が優しくシカダイの頭を撫で、シカダイは顔をあげた。すると自然と顔は近づき舌が絡み合う。弄る手は尻を掴み、互いに下半身をこすりつけ絶頂を誘い合った。

「ん、っ、ん、ぅ…」

「ッ、シカダイ、」

「ぁ、ぅ…リョウギ、首吸うなぁっ」

盛り上がり始めた頃にシカダイの優秀すぎる頭は、この間首についたキスマークを散々仲間に問い詰められたことを思い出した。またそうなるのは嫌だとシカダイはリョウギを押しのけようとするが、リョウギは知ったこっちゃないと歯を立て力を込めていった。しばらくするとちゅぱっと唇が離れ、噛まれた部分は赤く鬱血してキスマークとなっている。シカダイはやめてくれなかったリョウギを大きな瞳でギロリと睨んだが効果はなく、おかえり、と微笑まれただけだった。仕方なくただいまを返し、手を洗いに行った後シカダイはソファに座る。リョウギも当たり前のようにその隣にぴったりと体をくっつけて座った。

「…んだよ」

シカダイは怒ってます、というふうに眉を寄せてリョウギから距離をとった。リョウギは素早く距離を詰めて悪びれてもいない顔でテレビをつける。パッと映ったのは今流行りの海外ドラマだ。ミュージカル調の作品で所構わずキャストたちが歌い出し、部屋はその音に包まれた。2人でよく聞く曲がアレンジされていてリョウギは自然とそれを口ずさむ。いつもならシカダイも歌い出していたところだったが怒っているという意思表示のために口をキュッと真一文字に結んだ。

「そう怒らないでよ」

シカダイの不機嫌そうな顔に気づいたリョウギは笑ってシカダイを抱き寄せた。シカダイは抱き寄せられると眉をさらに寄せてリョウギを睨みつける。

「怒るっての、ば、ンっ、ふ、ぅ…」

シカダイはバタバタと足をばたつかせたが素早くリョウギに抑え込まれマウントポジションを取られた。まずいしまったと思いながらもリョウギの舌で口内が蹂躙されシカダイの頭は次第にぼんやりとしてきた。

「ぁ…ン、ぅ、ァ…」

「ふふ、スイッチ入ったねシカダイ」

頬撫でリョウギはガラス玉のような瞳でシカダイを捉える。リョウギの目に映るシカダイは真っ赤な顔で夢見心地な、そんな可愛い顔だった。シカダイは何も言わずにリョウギの襟を掴み引き寄せると深く唇を重ね合わせる。唾液が混じり合い、重力に従ってシカダイの口内に流れ込んで行く。それを飲み込みシカダイはリョウギの顔を確認し勝ち誇ったように笑った。

「顔、赤いぜ?」

「調子いいなぁ、さっきまで君が真っ赤な顔でとろんってしてたのに」

「うっせ、ン、ッァ、ア、は、ぁ…」

リョウギはシカダイの脚を持ち上げ、服越しに雄を擦りあった。布が雄を擦る刺激がなんとも言えない。摩擦で起こる熱も刺激となり二人を高めて行く。ぐちゅぐちゅと下着の中で卑猥な音がし始めジワジワとシカダイのズボンにシミができ始めた。

「シカダイ、お漏らししそうなんじゃないの?」

「あっ!ばか、ぁ、ん、ッん、ぁ、あぁあぁっ」

シカダイが一際大きな声を上げるとリョウギは楽しそうに擦り付ける力を強くした。衣擦れの音が大きくなりそれに合わせて淫らな水音も音量を増す。

「ひ、ぁ、ァ、ッ、りょ、ぎ、も、だめだ、っ、でる、ッ」

「は、っ、ぁ、ぼくも、でそう、ッ、ね、一緒にイこ?」

「あぁっ、ァ、アァン、ッ、ん、ぁ、あぁ、やだ、リョウギっ、ぁ、りょうぎぃ、ッ、ぃ、やぁ、あぁあぁ、*ッッ!!」

二人の腰が同時に震え射精が終わるとジワ、とシカダイのズボンにはシミが広がり液体が布を超えて溢れ出した。止めることができないそれはソファをビショビショに濡らし床に水たまりを作る。

「ぁ、っ、やだ、ァ…」

「大丈夫、おもらしするぐらい気持ちよくしたんだもん、ね、シカダイ?」

「ばかっ!なんで人が嫌がることばっかすんだよ!このおたんこなす!あんぽんたん!!」

慰めるようにシカダイの頭を撫でたリョウギをシカダイはぽかぽかと叩く。リョウギはにこにことしながらそれを受け止め、素早くシカダイの下を脱がした。

「ははは、僕が性格悪いの知ってるじゃないかシカダイ、君が泣いたり恥ずかしがったり挙げ句の果てにおもらしまでしちゃったら僕すっごーく興奮するんだもん」

「この変態ッッッ!!あ、ァ、っ、ちょ、ッ、ンンッ!」

今度は指だ。4本の指が容赦なく後ろに入りじゅぷじゅぷと中をかき乱していく、人差し指と小指で締まる内壁を無理やり広げられ一番敏感な前立腺を中指と薬指でぐりぐりと刺激される。体に電流のような刺激が駆け巡り腰が何度も震えた。

「アァッ!い、や、リョウギっ、そんな、ぁ、アァッ!」

「かわいいよシカダイ、本番行く前に気絶しそうだね」

「ぁ、あぁ、く、ぅ、ッ、りょ、ぎ、ッ」

シカダイの翠の瞳が涙で潤み始めた。そろそろだ。もう理性を手放す一歩手前、リョウギはニヤリと口角を釣り上げると折り曲げた二本の指を使い前立腺を押し上げる。それに合わせてシカダイの喘ぎはより高く、より大きく、そしてより淫らになっていく。

「シカダイっ、イって!イくとこ僕に見せてよ!」

「あぁあぁっ!アーッ!アァッ!イクっ、りょ、ぎっ、イクぅっ!!!」

ズリ、と膝が滑った。そう言えばシカダイが濡らしたまま拭かずにことに及んでたことを思い出しリョウギは慌てて手をついた。前のめりになって。

ということは、勢いが全て前にかかり、リョウギの体重も前にかかり、それはつまり、シカダイの中にある手にも、今にも果てそうなシカダイの前立腺にも全ての勢いがダイレクトに伝わったということで、

「アァアアァァーッッッッ!!」

もうこれは叫び声だ。あまりの快楽と痛みにシカダイは体を何度も痙攣させ涙を流す。ぐったりとしている体を見たらわかる、もう文句を言う気力も残ってないのだろう。リョウギは流石に罪悪感を感じ、腰を優しく撫でてやるとその度に腰がビクビクと震えた。

「ごめんね、すぐ抜くから…」

「っ、ぁ、ふ、ぅ…ァ、っ、りょうぎ、いいから、はやく、」

いれて、と唇が動く。リョウギは流石に迷った。だがこのままもシカダイを苦しめるだけかと思い直し、ちゅぷ、と亀頭を秘部に当てた。

「いくよ」

ちゅぷん、ちゅぷぷ、と中に沈んでいく。今日はイきすぎたせいか中が緩い。でも柔らかくて心地が良かった。太ももを持ち上げ軽くピストンを繰り返すと甘い声がシカダイから漏れ出す。早くしたり遅くしたり、色々なスピードで中を責め立てていくとシカダイはまるでオモチャのように喘いでいった。

「ひっ、あぁ、っ、アァッ、りょうぎっ、きもちいいっ、もっと、もっとしてッ!」

「もう、っ、淫乱みたいだよ、シカダイ?」

「いいっ、いんらんでいいからぁっ、りょーぎのいっぱいほしぃ、ッ!」

ポロポロと涙が溢れる。あの理性的で冷静なシカダイが涙を流し涎を垂らし、体中で快楽を受け止め喘いでいる、それだけリョウギは胸が踊った。肩や首、至る所に噛みつき刺激と快楽を同時に送るとシカダイの声はより一層激しくなる。もっととせがまれ、壊れるほど中を貫き暴いていく。

「アァッ!りょ、ぎ、ッ、ぁ、ン、はぁんっ!あぁあぁっ!りょうぎぃっ!」

「シカダイ、っ、中に出すよ、全部受け止めてねっ」

「あぁあぁっ!アーッッ!アァァーッ!りょうぎっ、りょうぎぃーっ!!!!」

ズンッ、と奥を押し上げた瞬間、シカダイの体が痙攣した。ギュっとナカを締め上げその刺激に従いリョウギも素直に快楽を体の奥底へとぷとぷと注ぎ込んでいく。

「あ、は、ァ…ぁ、ん」

「っ、…気持ちよかったね」

ぷしゅぷしゅとシカダイの雄から溢れ出す潮がまたソファを濡らした。洗濯の面倒さを想像すると萎えそうになったが、それをかき消すかのようにシカダイの背中や首にキスマークをつけていくと少し満足感が産まれる。

「………ふふっ、いーこと思いついちゃった!」

ニヤリと笑うリョウギにシカダイはもちろん気づかない。キスマークが判別出来ないほど首周りを赤くされてシカダイが怒鳴るまで後3時間。キスマークを付けすぎたせいで唇が腫れ上がったリョウギが仮病を使い仕事を休むまで後16時間。そしてそんな事態を引き起こすバカなリョウギを止める者は誰もいなかった。

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