愛してくれてありがとう


みなさん、今日は私たちのためにお集まりいただき誠にありがとうございます。沢山の人に祝福されること、大変嬉しく、幸せな気持ちで胸がいっぱいです。今日と言う日を境に親の元を離れ、新しい家庭を作って行くに当たり2人の人に伝えたいことがございます。本当はもっと沢山の人に一言ずつお伝えしたいことがあるのですが、今日は時間の都合上、2人に絞らさせていただきました。では、お聞き下さい。



お母さんへ

今日まで私を育ててくれてありがとう。父がいなくて本当はさみしかった筈なのに、私の前では一度も涙を見せなかった優しくて強いお母さん、私は、あなたと父の思い描いた娘になれたでしょうか。小さい頃は沢山イタズラをして怒らせてしまいましたね。アカデミーでのテストを黙って捨てていたことがバレた時は本当に怖かったです。時々、アルバムを見ながら父について話してくれましたね。お母さんから父の話を聞くことはあまりなかったのでとても新鮮でした。父の話をしている間のお母さんの顔は優しく、愛おしさに溢れていて、父とは写真越しでしか会ったことはありませんが、お母さんのその表情だけで父を愛することができました。沢山愛してくれてありがとう。お母さんが沢山愛してくれたから、私も自分の家族を愛せると思います。これからもよろしくお願いします。



お父さんへ

沢山のお母さんとお父さんの教え子の方々が私を気にかけ、面倒を見てくれました。誰が良かったとかそう言う話ではないのですが、一番私の側にいてくれた奈良シカマルさんに最後の手紙を送りたいと思います。父の最後を看取り、父から託された私を本当の子のように愛してくれてありがとうございました。また、忍としても一から百まで全てのことを教えてもらいました。母より多くの迷惑をかけたのではないかと思います。いつも母に私を寝かしつけると言って、こっそり父の話をしてくれましたね。本当は後で母に注意をされていたこと知っていました。それでもあなたが父の話を止めなかったのは、私に父のことを知ってほしい一心からだということ、今ではよく分かります。あなたは私の本当の父親ではありません、しかし、あなたの全てから父を感じることができました。あなたに守られ、愛されてきた私は常にあなたの中に父を見ていたのです。父から託された玉を、私を、愛してくれて本当にありがとうございました。勝手な話ですが、あなたを父と呼ぶことを許してください。ありがとう。



鳴り止まない拍手が会場に溢れる。ナルトは思わず涙ぐみ、鼻を啜った。

「シカマル...良かったな」

そう言って肩を抱き寄せると、溢れる涙を抑えきれないシカマルが肩を震わせ泣いていた。ナルトの言葉に返事をしようとしても嗚咽しか漏らすことができなかったが、ナルトにはシカマルが言いたいことがよくわかっていた。

涙でボヤけた視界の中、美しい花嫁姿の彼女を見つめ、どこかから見ているであろう師に、心の中でこう告げた。



(なぁ、見てるかアスマ...アンタの玉は、こんなに大きくなったぜ)

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