ガールズトーク
「サラダ、今日カルイさん達とランチ食べにいくからでかける用意しておいてね」
「…ハーイ」
私、うちはサラダは今とてつもなく憂鬱だ。たった今、母に連れられてランチに行くことが決定してしまった。ランチは嫌いだ。自分と同じ名前のサラダを食べるせいもあるけども、それよりも嫌いなのは母親同士の井戸端会議というやつだ。(以前、母にそう言ったら、井戸端会議じゃなくてガールズトークだと訂正された)やれ、うちの旦那はこうだの、お宅の旦那はどうだの…私にとってはどうでもいいことばかりである。
(ママもパパが家にいないのに、よくあんな話聞いていられるわ…)
「サラダー、行くわよー」
「はぁーい!今行く!」
一階の玄関から自分を呼ぶ声が聞こえ慌ててピンクのカーディガンを羽織り、階段を駆け下りた。まったくいつの間に用意をしたのやら…一度ぐらい様子をみてくれても構わないと思うのだが、それを言うと「アンタってまだまだ子供ね〜」とニヤニヤしながら言ってくるので絶対に言わない、絶対に。
今日のランチは最近オープンしたばかりの流行りのお店。因みにパパがいる時は絶対にこんなお店には来ない。だってうちの中心はパパなのだから、パパはこんなオシャレな雰囲気のお店に入ろうとしないし、パパがそう思うのもママはわかっているからわざわざ行こうとはしないのだ。本当は私だってこんなお店より近くの定食屋さんのほうが好きなのだが、私の意見を仰ぐことのないママはそんなことは一切知らない。
(めんどくせーけど親の金で生きている内は親の言うこと聞かねーとな)
なんて、あのキザ野郎が言っていたが、案外間違いではないのだろう…。お金のことを持ち出されてしまうと子供は反論すらできないのだから…。そのわりにはボルトとイタズラをして木の葉丸先生に怒られているシカダイなのだが…。
(めんどくせーめんどくせーって言いながら面倒なことしているわよね…男って本当にバカ)
「あ、サクラー!こっちこっち!サラダちゃんも来たのねー」
「ごめんねー待った?」
「さっき集まったばかりだから気にしないでサクラさん」
「何だ、今日は女子ばっかりだな」
「ホントだな!じゃあ、今日は女子会つーことで〜」
「「「「「「「「かんぱーい!!!」」」」」」」」
メニューを見始めた母親達をよそにお子様向けのメニューを開くサラダ。横からチョウチョウとヒマワリが覗き込んできた。
「サラダが来るなんて珍しいね」
「今日は午後なにも無いってママに言ってたのよ…迂闊だったわ」
「あらら〜ご愁傷サマ、あちしは一杯ご飯食べれるから良いけどー」
「アンタはそれで良いじゃない…ヒマワリ、どれが良い?」
常に食欲を追い求めるチョウチョウに少し呆れ、サラダはメニューを見ながら唸っているヒマワリに話しかけた。
「んーとね、ヒマワリスパゲッティが食べたいなぁ」
「いいねぇ、あちしもスパゲッティとかにしよーかな、でもハンバーグも捨てがたい…」
「チョウチョウはママたちのメニュー見た方が良いんじゃないの?ていうか、私もだけど」
「そだねー、ちょっとママに見せてもらおーっと」
「ヒマワリも、みんなと同じがいいなぁ〜」
母親達の輪に入っていったチョウチョウを見て、ヒマワリがねだるようにこちらを見てくる。頼むからそんな目で見ないでほしい。みんな、ヒマワリのこの目に弱いのだから、私だって例外じゃない。
「ヒマワリ食べきれないでしょ、無理しちゃダメよ」
「でも…ヒマワリも一緒が良い!」
「…わかったわ、じゃ、あっちのスパゲッティを私と半分に分けましょ?それで良い?」
「うん!ありがとう、サラダお姉ちゃん!」
ニコッと笑うヒマワリに可愛さを感じたと同時に、良くない輩がヒマワリに寄ってきそうだなと感じる。それは一時の気の迷いかもしれないが、将来的に実現してしまいそうで、良くわからない悪寒が走った。
「サラダちゃん、ヒマワリ、何食べるか決まった?」
「お母さん、私、サラダお姉ちゃんとスパゲッティ食べる!」
「そうなの?でもお子様ランチのスパゲッティじゃサラダちゃんお腹すくでしょう?」
大丈夫なの?という顔でこちらを見てくるヒマワリの母・ヒナタにサラダは笑いかけた。
「大丈夫ですよ、大人用のスパゲッティを分けようって約束しているので」
「そうなの、ありがとうサラダちゃん」
「みんなー注文するから順番に言ってねー」
そう言ったサクラが店員を呼び、みんな順番に注文していく。因みに今日、ランチを食べに来ているのは、チョウチョウと母のカルイ、ヒマワリに母のヒナタ、サラダとサクラに、テマリ、いのといった面々だ。テマリといの、ヒナタの息子である三人は、今日は来ていないようだ。大方遊ぶ約束でもしていたのだろう。注文が終わり、店員がテーブルを離れるとすぐに母親達のお喋りが再開された。またか…と思いうんざりしていると、いのがサラダに声をかけてきた。
「ねぇ、サラダ、ちょっとお話しましょうよ!」
「話…何の?」
「ぶっちゃけさーサラダって好きな人とかいるの?」
「…なっ、何言って!!」
ニヤニヤとした顔をしているいのを見て、サラダは確信した。「この人、ママと同じだ…!」と…。因みに、ヒナタやカルイ、サクラも興味津々といった顔でこちらを見ている。唯一、テマリだけは困ったような顔をしていたが止める気はないようだ。
「言いなさいよ〜いのじんとシカダイに、ボルト、誰が好きなのよ〜?」
「そんな…好きな人とかまだいないし!」
「へーふーんほー」
「いのさん絶対信じてないでしょ…」
「そんなことないわよ〜」
ニコニコとしながらそう言ったいのだが、その笑みが逆に信じられないサラダであった。じとーっといのを睨んでいると今度はカルイが思いついたように話を始めた。
「そういやさー、ウチらの中では誰が一番モテるんだ?」
「そういや、シカダイもそんな話はしないから知らないな…」
「何それ、私も気になる気になる!」
「やっぱり、いの所のいのじんくんはモテモテじゃないの?あの顔だし」
「私もちょっと気になる…かも」
一気に話に食いついてきた母親達に気圧されるサラダだったが、それまでポテチを食べていたチョウチョウが急に手を挙げる。
「では、これよりあちし、チョウチョウとサラダによるモテモテ男子のデータ報告会をしたいと思いまーす!」
「ちょっと!チョウチョウ!?」
盛り上がる母親達を更に盛り上げたチョウチョウに詰め寄るが、本人は楽しければ良いようで「大丈夫―大丈夫―」とブイサインを送ってきた。ヒマワリだけが話についていけず頭にクエスチョンマークを浮かべている。
「………はぁ、仕方ないわね」
「じゃあ、ママ達は誰から知りたい?」
「そうね…やっぱりママ達の予想としてはいのじんくんが一番モテそうだなぁって思っているけど、実際どうなの?」
そういったサクラに「わかってるじゃなーいデコリーン!」といのが嬉しそうにしていたが、サラダとチョウチョウは告げなければならなかった…現実を…。
「そうね…確かにいのじんはルックスだけなら百点だわ」
「でもちょっと性格と口調に難アリってカンジ〜」
「へーそうなの、どういったところがダメなの?」
と聞いてくるサクラの後ろで、さっきと打って変わって落胆しているいのがいたのだが、それは置いておこう。
「モテないわけじゃないけど、口調が毒舌だし」
「オマケにちょっとヒステリックだから、第一印象でイケメンからの変な人に変わりやすいよね」
「そうそう、残念すぎるわ」
うんうんと頷きあう二人を見て、母親達も確かに…と心を一つにした。
「そうねー、あの毒舌だけは遺伝させたくなかったけど…勝てなかったわ」
「それを言うなら、うちのシカダイも面倒を嫌がる所はそっくりだよ」
「ボルトもイタズラばっかりしてるし…そういやボルトはどうなの?」
「ヒナタも気になるわよねー」
「え…そ、そうだね、どうかな…?」
不安そうに聞いてくるヒナタを見て、二人は申し訳なく思った。同級生の母親の中でも百点…いや、二百点の彼女を悲しませたくはなかったのだが、致し方ない。
「ボルトは…あきらめないど根性は良いけど…」
「毎日イタズラばっかりしてるから…でも、あちし努力家な所はかっこいいと思うよ!」
「まぁ、目は離せないわよね…」
「あ…やっぱりそういう感じなんだ」
「さっすがナルトの息子ね…」
「やっぱり、うちもナルトくんにそっくりみたい…」
「何だかコメントしづらいな…」
ナルトをアカデミー時代から知っているサクラ、いの、ヒナタと中忍試験の時に知り合ったテマリは微妙な顔をしながら口ぐちにそう言った。カルイは他里出身な上、かなり後に知り合ったせいか、やっぱりってどいうことだ…?という顔で首を捻っていた。
「じゃあ、シカダイはどうなの?」
「うちの奴はボルトと一緒になってイタズラばかりしているからな…」
「それは誤解よ、テマリさん」
「ん〜シカダイはアカデミーじゃ一番モテモテの人気no.1だよね」
「「「えーーー!」」」
驚いてこちらに詰め寄ってくる三人に続き、ヒナタとテマリが驚いたように呟く。
「そ、そうだったんだ…すごいねシカダイくん」
「アイツが??母親ながら信じられないけど…」
「シカダイのお母さん、シカダイって成績はアカデミートップだし」
「顔もいのじんに並ぶイケメンよね」
「それに奈良家の当主の息子でしょ」
「シカマルおじさんは火影補佐だし」
「アカデミーの先生達にも一目置かれてるもんね」
順番にシカダイのモテ要素を挙げていくと、母親達は皆、確かに…ともう一度心を一つにしたのだった。
「それに、ここにもシカダイのファンがいるしね!」
「ちょっ…あたしじゃないからね!」
全員の視線がサラダに向けられたが瞬時にサラダはそれを否定した。
「じゃあ、誰なんだよチョウチョウ?」
カルイがしびれをきらし、娘にそう聞くとチョウチョウはニヤリと笑ってこういったのだ。
「さっきから一言もしゃべってないじゃない…ヒマワリちゃん?」
「………な、なんでわかったの?」
顔をトマトのように赤くしたヒマワリは、母親達に問い詰められ、落ち着いて食事もできなかったのであった…。
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