輪廻の夜に出かけましょ!



「シカマル…なぁ、いいだろう?」

(……どうしてこうなった!?)

ここは木ノ葉の外れにある花畑。
時間はわからないが、あたりは月明かりしかない真っ暗闇、シカマルの耳に届くのは風と水の音、それと辺り一面に咲く花の香りが鼻をつく。目の前には自分に熱っぽい視線を送る愛しい恋人がいた。

シカマルがなぜテマリに押し倒され、迫られているのか。それもこんな花畑のど真ん中で…原因となる出来事は今日の朝から始まる。

輪廻祭当日の今日、シカマルとテマリは珍しくカップルらしいことをしようと互いに休暇を取り、ゆっくりと輪廻祭を堪能するつもりだった。因みにテマリは砂の技術提供の為に一週間程前から木ノ葉に訪れており、今回も例外なくシカマルが案内役を仰せつかっていたのだ。

随分と前から付き合っていたシカマルとテマリ、しかしテマリの先代風影の実子という立場もあり、そのことは公にされずにいた。だが、大筒木トネリによる地球滅亡計画をシカマル率いる小隊が阻止したことによって、シカマルの地位が劇的に上昇し、その名は他里の下忍にまで知られるようになった。そういったこともあり、2人を気遣った風影と火影の後押しで、ナルトとヒナタに続き2人は木ノ葉と砂、両国公認のカップルになったのである。

せっかく隠す必要が無くなったのだからと計画していたのが今回の輪廻祭デートだったのだ。まぁ、その計画は実行されずに終わったのだが…。

午前で仕事をすませ、午後からのんびりと木ノ葉の花畑を散歩し、夕方から輪廻祭に行こう。そう言ったテマリの表情がとても嬉しそうだったのが、シカマルはとても印象的だった。元来、冷静なシカマルと生真面目なテマリは互いに感情表現をすることが他の恋人達よりも少なく、本当にこの人は俺を好きなのだろうか?と何度か頭をよぎったことがある。それはシカマルにも言えたのだが、自分のこととなると見えにくくなるのは致し方ないのだろう。そんなことだから、彼女の嬉しそうな顔を見てシカマルはもっと楽しませてやろう、と決意を新たにしていたのだ。もちろん、シカマル自身も輪廻祭を楽しみにしていた。

だが、人生は思ったようにいかないものである。午前で終わらせる筈の仕事が新人の凡ミス、更に新人が1人で解決しようとしたせいで、これまた大きな問題となってしまった。テマリもテマリで、技術提供についての議論に巻き込まれてしまい、結局2人が会えたのは夜の9時を回った頃、もちろん、とっくに輪廻祭は終盤を迎えていた。

2人は憤りを隠さなかった。無言で酒を調達し、テマリが宿泊している宿へ向う。冷めているとよく言われる自分達だが、決して相手を愛していないわけではない、ナルト達の愛のあるイジリに対し寧ろフォーリンラブだってーの、とシカマルは心の中でボヤいてたりする。人の表現はそれぞれ、シカマルとテマリの愛情表現は公にするようなものではないというだけで2人はちゃんとお互いを大事に思い、愛し合っているのだ。

だからこそ、今回の計画が頓挫したことは許せない。

しかし、仕事は仕事、自分たちは上に立つ者だから仕方がない。

そういって割り切り、部下や同僚に当たらなかったところがこの2人らしいと言えよう。

まぁ、機嫌は最高に悪かったようだが…。

そんなこんなでひたすら無言で酒を開け、飲み続けていると時刻は10時30分になっていた。

「もうこんな時間か…明日、アンタ仕事だろ?」

「まぁね、そっちは?」

「言わなくてもわかるだろ、めんどくせえ」

「………泊まってくか?」

「…そーだな、そーすっか、ちょっと洗面所借りますよ、歯磨いてくる」

「あぁ、いいよ、私は机片付けとくから」

「りょーかいっす」

めんどくさそうにのっそりと立ち上がり洗面所に向かうシカマル。その背中は心なしか落ち込んでるように見えた。普段はめんどくさがりで輪廻祭のようなイベントを苦手とするシカマルが柄にもなく今日を楽しみにしていたことは知っていた。彼は一見めんどくさがりだが、本当は思いやりがあって、誰かの為に一生懸命になれる奴なのだ。そんな彼が自分の為に色々考えてくれていたのはテマリにはお見通しだった。

(互いに仕事が無ければ良かったんだがな…)

そう思っても過ぎたことは仕方がないのだろう。ただ、このまま体を重ねてもいい思い出にならないことは一目瞭然である。少し残念そうに唇を尖らせるシカマルを思い出しテマリは可哀想に思った。

何とかしてシカマルを楽しませたい。

せっかくの輪廻祭なのだから、こんなやるせない日はテマリだって御免である。机の酒瓶を片付けながらテマリは部屋を見渡し、何かがないか必死に探した。

「この酒は開けてなかったのか…我愛羅達の土産にでもするか」

そういって自分の荷物が入った鞄のジッパーを開ける。中には輪廻祭で着ようと思っていたよそ行きの服が入っていた。

「…これも着れず仕舞いだったな、ちょっと残念だ…そういや、シカマルは何を着るつもりだったんだ?」

意外と身なりに気を使うシカマルは今回もせっかくのデートだから、と服を入れた紙袋を宿に持ってきていたのだ。畳の間にちょこんと置かれた紙袋の中身が気になり、テマリはそっと中を除いた。

「ダッフルコートにジャケット、ネルシャツ、タイトパンツか…ブーツも持って来てるじゃないか…!」

年下の恋人の気合の入れように思わずクスと笑ってしまう。きっとよく似合っていたのだろう。しかし、男の割に細身なんだな、まぁ、あいつは頭脳派だし仕方ないか、と思っているとテマリはあることに気づいた。

(このサイズ…もしかして私とあまり変わらないのじゃないか!?)

そう、全てはここから始まったのだ。酒は飲んでも飲まれるな。日頃、弟たちに口を酸っぱくして言い続けていたこの言葉が今回ばかりは仇となったのである。


(あー、何であんなにノリノリになったんだ…酒の力ってこえーな)

好奇心に負けたテマリが俺の服を着た所で何かがおかしくなった。急に酔いが回ったのか爆笑し始めたテマリが俺に無理やり自分の服を着せ、メイクをし始めたのだ。最初は抵抗していたのだが何時の間にか楽しくなってしまい、されるがままになってしまった。

もう一度言おう、酒の力って恐ろしい。

 まぁ、結果から言えば、酒の力を借りて一気にテンションが振り切れた俺たちは、互いの服を着て夜の街に繰り出したのだ。もちろん、テマリの服を着た俺は髪を巻いてメイクもバッチリである。テマリは髪を下の方で結び、口紅とチーク、アイシャドウを落とした。

輪廻祭が終わり静まり返った商店街を2人で歩く、クスクスという自分達の笑い声だけが辺りに響いた。手はしっかりと繋いでいる。今日はテマリが男役だそうなのでリードしているのは彼女だ。

そうでなくとも普段からリードされている気がするが、この際気づかなかったことにしよう。

商店街を抜け、昼に行こうと言っていた花畑に着いた。花畑は湖を囲うようにして咲いていて、月明かりに照らされキラキラと光っている。

「へぇ…夜の花畑っていうのもいいもんっすね」

「そうだな…たまにはこんなバカみたいなことするのも楽しいだろう?」

「まぁ、悪くはないっすね…俺のこと気遣ってくれたんでしょ?」

「なんだ、気づいてたのか」

「そりゃ、アンタだってこんなバカするような人じゃないからな」

「ふぅん、まぁ、私もこのまま終わるのは嫌だったからな」

そう言って寝転がるシカマルに笑いかけると、シカマルは恥ずかしいのか頬を赤く染めて視線を外し、何気ない風を装ってこんな話を切り出した。

「知ってます?昔の人は月が綺麗ですねって言って愛を伝えたらしいっすよ?」

「へぇ、じゃあ今日の月は満月だし、絶好の告白日和ってやつだな!」

「ははっ、それもそっすね」

今度はシカマルがテマリに笑いかける。テマリは思わずドキッと自分がときめいたことに気づき、シカマルの顔をまじまじと見つめた。

(そういやコイツ、化粧したら凄く映えるんだな、元々美人顔だから余計に色っぽくなってる…)

「テマリ?どした?」

「…キス、したい」

「へ?」

寝転がるシカマルに覆いかぶさり、有無を言わさず口付けた。

「んっ、ふっ…ちょ、テマ、んっ」

「はっ、んっ…」

「あっ、んんぅっ…はぁ、アンタ、いっつもいきなりなんすよ…」

絡みついてきた舌は口内をしつこく舐めまわし、舌をチュッと吸い上げる。その他にも啄むように口付けたり、噛みつくように口付けたり、何度も角度を変えて行われた口付けはシカマルの体を熱く火照らすには十分だった。

「シカマル…なぁ、いいだろう?」

「ダメつっても聞かねーじゃねーか、とりあえずどいてくれ」

シカマルがなんと言おうとしているのかわかったテマリはしばらく考え込み、こう言った。

「それはダメだ」

「は?」

「今日は私が男役なんだから私がする」

「イヤイヤイヤ!何でだよ!?」

「もうこんなになってるのに?」

抵抗するシカマルのスカートの中に手を滑り込ませ、女性用の下着の中ですでに熱くなっている性器をギュッと握りしめると、シカマルはビクッと体を反らしテマリの手を掴んだ。

「オイっ!や、やめろ…ほんとにっあっ、ダメだって…!」

「何がダメなんだ?ん?言ってみな?」

ニヤニヤと笑いながら掴んだ手に力を込める。先ほどの口付けで興奮しているのか少し掴んだだけでシカマルの体はビクビクと震えた。

「あ、てまり…さわんなっ!」

「ヤダね、一回イキなよ」

そう言って掴んだ手を上下に動かすと体を駆け巡る快感に耐えられないのか必死にテマリの手を止めようと手を伸ばすシカマル。空いた手で両手首を地面に抑え込むと恨めしそうな目でこっちを睨んできた。

「んっ、キツくすんなよっ…!」

「ほら、いい声聞かせなよ、結構アンタの喘ぎ声好きなんだから」

「くっ、しゅみワリィ、なっ…んあっ!」

目に浮かんだ涙が余計にテマリを興奮させる。最初は出さないように我慢していた声も、もうそろそろ我慢できなくなってきたようだ。下着の中からもぐちゅぐちゅというやらしい音が聞こえる。

「やらしい音だな?シカマル」

「うっ、うぅんっ!いうなっ…あっ」

「本当…アンタって唆る」

「はっ、あっ、もうっ…い、いっちまう…てまりっ!!」

体を弓のように反らしガクガクと腰を震わせシカマルは呆気なくイッてしまった。頬は真っ赤になり口からは涎が垂れている。性器を掴んでいた手を離し、ネットリと手に付いた精液を舐めた。地面に抑え込んでいた手もいつの間にか解かれていて、シカマルは両手で顔を隠し、大きく肩で呼吸を繰り返す。

「はぁ、はぁ…」

「まだへばるんじゃないよ、こっからが楽しいんだから」

隠した手を退けてニッコリと微笑んでくるテマリに、これが自分の惚れた女か、とシカマルは恐怖を抱いた。しかし、今から抵抗して彼女を抱く力もない。それに正直なところこれから行われることに対しての好奇心がムクムクと湧いてきていた。あくまでも表面上は嫌がっている振りを演じているのだが。

「ホントにヤんのかよ…」

「当たり前だ、ほら、足開きなよ」

「くっそ…今日だけだからな!」

「え*、聞こえないなぁ*」

「アンタなぁ…!」

じゃれ合いのようなやり取りをしながらシカマルに足を開かせ、タイツ、下着を脱がしていくテマリ。スカートはたくし上げられ、先ほどの前戯で弄られた性器が顔を出した。

「でも、気持ちいいだろう?」

「うっせ…って!ちょっ、どこ触って!!?」

「どこって男はここを使うだろう?色の手ほどき受けていないのか?」

不思議そうに問いかけるテマリだが、手はしっかりと肛門に当てがわれている。思わず足を閉じたシカマルは既に赤くなっている顔を更に赤くして反論した。

「知ってるって!!だからってわざわざそんな所…!」

「心配するな、優しくする…力抜け」

ちゅっ、と閉じられた太ももに口付けると、シカマルは案外素直に足を開いた。期待しているのか、恥ずかしいのか、涙で潤んだ瞳でこちらを睨み、唇はキュッと噛み締められている。そんなシカマルの額にキスをし、ゆっくりと中指を挿入する。乾いた肉壁と熱い体温がテマリの中指を包み込んだ。

「今日のアンタっ…うっ、ホント、へんっ…」

「酒のせいかも、なっ!…入ったぞ」

「あ、イタッ、イタ、イっ」

爪が当たったのか少し顔を歪めるシカマル。テマリも予想外のキツさに顔をしかめた。

「キツいな…」

「うっ、ああっ、やだ、てまりっ…!」

なんとか動かそうとしたが余計に刺激になったようで、腰をくねらせて、痛みからのがれようとするシカマル、そんなシカマルの耳元に顔を近づけ、こう囁く。

「だから力を抜けシカマル、指が入らないじゃないか」

「そんなっ、いったって…んぅっ」

羞恥心と痛みからポロポロと小さな涙が流れ落ちてくる。テマリは器用にその涙を舐めとった。

「ガンバレ、ゆっくり息吐きな」

「はっ、あっ、むっ、むりだっ!」

「…仕方ないな」

最初と同じように口付けるテマリ。今度はシカマルも抵抗せず受け入れた。舌と舌が絡み合い、口の端からは涎がこぼれ落ちる。

「んーっ、ふっ…あ、ふ」

「ん、可愛いぞシカマル」

「だれがっ!ふぁっ、ん、んぅ」

だんだんと口付けに意識が集中してきたのか挿入されたままの指が少し圧迫感から解放された。テマリはそれを逃さずに人差し指、薬指と割り込むように押し込む。

「あっ!そんなっ、いっきに…ひっ!」

「三本…初めてにしちゃ上出来じゃないか」

酒のせいか何のせいか、テマリは普段は見れない恋人の意外な一面に加虐心が顔を覗かせていた。いつもはクールぶってる仏頂面の恋人が目を潤ませ、自分の下で喘いでいると思うと、どうしようもなく興奮してしまう。そして、その興奮をぶつけるかのように三本の指を折り曲げ、ナカを掻き回した。

「くっそ、おぼ、えて…ろっ、んあっ!」

「ふふ、どうだかな…あ、みーつけた」

快感でビクビクと震えるシカマルを見つめながらテマリは今日一番の笑顔で微笑んだ。挿入された指はシカマルの前立腺をグリグリと捏ねるように刺激し、今までの快感を上回る刺激にシカマルは自分でも聞いたこともないような高い声でよがった。

「や、あぁんっ!あっ!おかしくな、るっ!くぁっ!」

「…ホントに女みたいに喘げるんだな、知らなかった」

感心したようにシカマルをしげしげと見つめるテマリ、その満足げな表情はシカマルにとって悪魔以外の何者にも見えなかった。迫り来る快感と恋人に対しての恐怖心が体を余計に火照らせる。

「かんしんっ、してるばあっ、い、かよっ…!」

「あぁ、すまない、こちらに集中しないとな」

指を再び動かし始める。空いている手はシカマルの性器をしっかりと包み込み亀頭を刺激してやった。目をギュッと閉じ、唇を噛み締めながら快感に耐える姿を見て、何だ嫌がってないじゃないか、とテマリは心の中で呟いた。先ほどから止めろと言ってはいるが、その目は熱を帯び、自分が組み敷かれている屈辱にすら興奮しているようだ。もっと曝け出して、欲望のままに乱れたら良いのに…まぁ、そんなことを言ってしまえば本気で拗ねてしまうので口には出さないが…。

「うぁっ!そーゆーことじゃねぇっ!んぁ、んっ、あんっ」

「シカマル…好きだよ、愛してる」

そう耳元で囁くとシカマルのナカがきゅぅっと締まる。シカマルもシカマルで、テマリのジャケットを掴んで抱き寄せ、離れないようにしがみ付いてきた。

「あぁっ、てまっ、り…オレも、あいし、てるっ!てまり、てまりっ!」

「全部アタシに見せな…!」

「ん、うあ、あぁあぁっ!」

一際大きな声を出したシカマルは背中を大きく反らし、テマリの手の中に熱い熱を吐き出したのだった。


「もー、絶対こんなことしねぇ…!」

あの後、立てなくなったシカマルはテマリに横抱き…所謂お姫様抱っこで宿まで帰ってきた。本当はその場で怒ろうかとも思ったが、テマリの手があまりにも気持ち良かった上に、キチンと後処理までしてもらい何も言えなくなってしまった。それでもテマリに敷いて貰った布団に寝転びながら恨めしそうにブツブツと文句を言っている。文句を言いながらも心なしかスッキリとした顔をしているシカマルを見てテマリは面白く感じたのだろう、横に寝転がりバシバシとシカマルの背中を叩いた。

「ハハハ!まぁ、そう言うな凄く可愛いかったぞシカマル」

「男に可愛いとか言うんじゃねーよ…」

「男でも好きな奴ってのは可愛いく見えるもんさ」

口を尖らせる年下の恋人に優しく口付けるとまだ拗ねているのか、頬を膨らましプイっとそっぽを向かれた。

「アーハイハイ、ソーデスネ」

「拗ねるなよ泣き虫くん」

「うっせ!」

「そんなに怒るなって…可愛かったのは本当なんだし、お陰で私も…」

シカマルの手を自分の下着に滑り込ませる、そこはしっとりと濡れていて指に粘着質な液体が絡みついてきた。驚いた風にテマリを見るシカマルの耳元で今度はこう囁いた。

「こんなになっちゃうくらい可愛かったぞシカマル」

「…はぁ、アンタには敵わねーな」

「据え膳食わぬは男の恥って言うじゃないか」

「ったく、言ってろ」

ニッと笑うテマリに覆いかぶさり、口付ける。たまにはこんなバカなことをする日も良いかもしれない。さて、どのように仕返ししてやろうと頭を回転させながら、まだまだ明けない夜を満喫することにした。



次の日盛大に遅刻をしたシカマルとテマリは、珍しく二人揃って六代目火影に小言を言われ、昨晩がお楽しみだったことはもちろんナルト達の耳に入ったのであった。因みにこれ以降、どうにかしてシカマルを抱こうと試行錯誤するテマリと全力で拒否するシカマルの攻防があったとかなかったとか…。

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