それでも君を選ばない


見慣れたトンガリ頭、それを掴んでタバコを咥えながらニヤリと笑った。トンガリ頭もとい、アスマのかわいいかわいい一番弟子は、髪を引っ張られ不機嫌そうに睨んでくる。奈良シカマル。それが少年の名前だった。

「ぶっ殺すぞ髭クマ野郎…」

「…お前ガチで睨むなよ、流石シカクさんの息子だわ」

シカマルの父・シカクそっくりの顔つきとあまりの殺気に手を離し、タバコを噛みながら髭をさすった。シカマルは書類でふさがった手の代わりに自由な足で俺の脛を容赦なく蹴ってくる。これがなかなか痛い。

「いって!何すんだよ!!」

「仕事の邪魔するからですよ、猿飛アスマ上忍」

「手前こんな時だけ敬語使いやがって…!」

痛みで涙目になった目を手で拭いシカマルを見ると、心底楽しそうなイヤラしい笑みを浮かべてこちらを見ていた。その小悪魔のような色気を醸し出す笑みに思わずゴクリと唾を飲む。

「な、なぁ…シカマル、今日ウチに……」

「ダメ」

「即答かよ…」

がっくりと肩を落とすとシカマルはまたあのイヤラしい笑みを浮かべる。前から薄々感づいてはいたが、どうやらシカマルは俺をいじめるのが好きなようだ。全く物好きな奴である。まぁ、そんな奴に骨抜きにされているのがこの俺なのだが…。

「仕事か?」

「いや、今日はゲンマさんちに泊まるから」

「はっ!?」

断られた理由を探ろうと質問をすると思わぬ答えが耳に飛び込んできてアスマは思わず大声を出してしまう。シカマルはうるさそうに顔をしかめてこう言った。

「んだよ…別にいいだろアンタのものじゃねーぞ俺は」

「馬鹿野郎そういう問題じゃ…」

「アンタも同じ穴のムジナの癖に偉そーに言うんじゃねーよ、黙ってろ」

説得しようと試みたが根本的な問題を指摘されアスマは言い返すことができず口を閉じてしまう。そんなアスマに満足したのかシカマルはヒラヒラと手を振り踵を返して去ってしまった。

「おい、シカマル!」

そう呼びかけてもシカマルが戻ってくることはない。あまりに大人びた部下にため息をつきたくなるが、大人びさせた原因が自分にあることがわかっているアスマはそのため息さえもグッと飲み込んだ。



■■■■■



里の商店街の裏手にボロい一軒家がある。そこに不知火ゲンマは一人暮らしをしていた。両親は他界していて、自由気ままな一人暮らしを謳歌しているゲンマの家にはたった今、ある客人が来ている。

「アッ、ん、ぅ、げんまさ、んッ!」

「気持ちいいだろ?」

「あっ、はいっ、きもち、ぃ、アッ、ンァッ、ひっ、ぅ、あ、ぁ、ッ!」

「はっ、ぁ、ホント…かわいいやつ」

ギシギシと軋むベッドに合わせ、少年はゆらゆらと揺れた。下からくる衝撃は快感を呼び起こし、自然と口からは甘い声が途切れ途切れに飛び出てくる。汗と涙と涎がぐちゃぐちゃに混じり合い、少年の体は艶かしく色気のある肢体としてゲンマの目に映る。12歳とは思えない色気を醸し出す大人びた少年に心を奪われつつも、震える手をごまかそうとキツく力を込めてゲンマの腕を握る姿にゲンマは少しだけ現実に引き戻された。結局、どれだけ大人びていても彼は12歳の少年なのだ。途端にゲンマは彼に対して愛おしさが湧いてきて、下から突くのを止めて体を起こす。

「っ、ふ………げんま、さん?」

不思議そうに真っ赤な顔でゲンマを見る少年が愛らしく感じる。ゲンマは優しく少年に笑いかけ、繋がったまま抱きしめた。

「………シカマル」

「………………?」

続きは?という顔でゲンマの抱擁に応える少年…もといシカマルだったが、こう真正面から裸で抱き合うなんて初めてのことでシカマルは少し戸惑った。しかし、肌を通して伝わる暖かい体温が段々と意識をまどろませ、うつらうつらと船を漕ぎ始める。

「眠たくなるのかよ、まぁ頑張ってるからなぁ、お前」

優しく頭を撫で、綺麗な黒髪を指に絡める。甘やかされたことが嬉しかったのか、シカマルは満足げに口を緩ませた。

「…まだ夜は長いんだ、そんな急いで気持ち良くならなくてもいいかと思ってな」

「…らしくないっスね」

「いつも優しいだろーが」

「それはないっス」

「ほぉ……?言ったな?今日はお前からイキたいって言うまでイカせねーぞ???とことん優しくしてやるよ」

ニヤリと笑うゲンマにシカマルはどう優しくするのかと首をひねった。どちらかというと酷くされるような言い方だったが、自分はどうされるのだろうか。少しの恐怖とその恐怖の中にある好奇心が顔を出しジッとゲンマを見つめる。

「そんな可愛い顔で見るんじゃねーよ」

「ん、ッ…………」

唇が塞がれ、ゲンマに体を委ねるとそこからは完全に主導権が彼に移った。ゲンマは本当に優しく緩やかにシカマルを抱く、いつもは無茶苦茶に突かれて喘ぎ過ぎで痛めてしまう喉も今日は全然痛まない。あ、ぁ、という甘い声が出るぐらいのものだ。至る所にキスをされて少しくすぐったいがゲンマの熱い視線にこちらも胸が高鳴ってしまう。応えるようにシカマルはゲンマの首に手を回し、自から口付けた。すると、ゆっくり、しっかりと奥までゲンマが入ってくる。

「ン……ッ、」

「狭くて熱いなァ、やっぱりまだ小さいからか?」

「ここって、大きくなるんスか」

「さぁな、でも体がデカくなんだから、伸びるだろ」

「なんスか、それ…ッ、ん、ぁ…あ、ア、ッ」

トン、トン、トン、とリズムよく奥を突かれ、じわじわと快感が広がって来た。頭はフワフワとして意識がぼんやりとしている。電磁波のようなピリピリとした快感が全身に広がり、シカマルは絶頂を迎えようとしていた。

「なぁ、いき、そ…っ、ん、ぁっ」

「イきたいか?」

「あっ、ん…いじわる、」

イきたいに決まっている。そう言いたげな切れ長の目をゲンマは見つめ返し、少し早めに中を突いていく。

「んっ、ひっ、ぁ、あっ、あっ」

「イきたいって言えよ、シカマル」

「んっ、ばかっ、あ、ぁ、だれが、いうかっ、んっ、ぅ」

まだ恥ずしさが抜けきってないのか、涙目になった切れ長の目がまたゲンマを睨んでくる。しかし、目は口ほどに物を言うとはよく言ったものでゲンマにはしっかりとシカマルが自分を求めていることがわかっていた。それならば話は早い。もう優しくする時間は終わりだと言わんばかりにゲンマはシカマルの腰をしっかりと固定し、急に激しく突き始めた。

「ひっ!!!ぁ、アッ!げんま、さっ、ん!いいっ、いぃよぉっ!」

「なら、もっと突いてやるよ…!」

シーツを握りしめ衝撃に酔いしれながらシカマルは小さな体で目一杯快感を受け止める。足はピンと伸びて快楽に染まっていることを示していた。その様子にゲンマは満足げに口角を吊り上げる。シカマルはそんなゲンマには気づかずひたすら喘いだ。もう絶頂が近い。

「ん、ぁ、アッ!ひぅっ!いっ、ぁ、あ、ああ、あアァッ!!!」

「くっ、ぅ…シカマルッ、!」

「ンァッ!あっ!げんましゃ、ん!ぁ、アッ、も、だめっ!」

「中に出す、からな…ッ!」

「ひぁっ!?ぁ、んっ、おれも、いくっ、いっちゃ……ッッッ!!!!」

奥の方で何かが弾けた感触がするとビリビリと快感が足へと伝わった。シカマルのピンと伸びた足の指はぎゅっと丸まりその快感でぶるりと震える。次に来るのはじんわりとした暖かさで下腹あたりがじんじんと暖かくなっていく。息に合わせて後ろの収縮も繰り返され、その感覚がダイレクトに体の反射反応として現れる。びく、びくり、と腰や足の筋肉が痙攣するのだ。そして最後にその全ての感覚が脊髄を通り脳へ到達するとぼんやりとシカマルの冴えた頭は靄がかかったように快楽に溺れてしまう。ゲンマはその瞬間を見逃さずシカマルの口に舌を入れようと覆いかぶさった。

「は、ぁ…はぁ、シカマル…」

「ん、んぅ、ふぁ…」

「……好きだ」

絡み合う舌と唇を離し、そう囁くとシカマルも真っ赤な顔で微笑み返して来る。

「……俺もですよ」

「まじか、付き合ってくれねーのに?」

「それでもおれが好きなんでしょ?」

すぐにいつもの調子を取り戻し、ニヤリと悪びれもせず笑うシカマル。ゲンマは彼のこういう小悪魔的なところが案外気に入っていた。しかし、肯定するのもなんだか悔しいので脇腹をくすぐってやる。

「生意気いうんじゃねーよ、ガキ」

「あっ!ばか、ちょッ、あははっ!あはははッ!ギブギブ!ごめんなさい!!」

「ゲンマさんごめんなさい大好き愛してる、は?」

「ひーっ!あ、あははっ!ゲンマさん、ごめんなさい!大好き!大好きだから!」

「愛してるがねーぞ」

「愛してます!愛してますから、ホントやめて!」

「うむ、よろしい」

「はぁー、ゲホッ、死ぬかと思った」

ゼーゼーと息が荒くなる。何度も呼吸を繰り返して息を整えるとゲンマがニヤニヤと笑ってこちらを見ていることに気づいた。どれだけ苦しかったかわかってねぇな?とシカマルは頭にきて眉間にしわを寄せゲンマを睨む。ゲンマはそんなことは知ったこっちゃないと含み笑いをしながらシカマルの脇腹を突く。

「お前くすぐられるの苦手だよな」

「…誰でもそうデショ」

「いや、お前は特に」

「…………こんな風にやらしく大人に触られてるからじゃないッすか?」

「ははっ、言うねぇ」

さわさわと体を弄っている大人のいやらしい手をぴしゃりと跳ね除け少し楽しそうにシカマルは答えた。またその小悪魔のような笑みにゲンマは機嫌をよくして何人に抱かれてるんだ?とシカマルの耳元で囁く。

「いや、アンタとあの人だけっすよ」

「なんだ、意外だな、もっと派手にやってるかと」

「好きじゃないやつとヤるなんてめんどくせー」

「出たソレ、本当に変なヤツだな」

中忍試験の試合中にもなんども聞いたおきまりの文句がシカマルの口からこぼれゲンマは待ってましたと言わんばかりに嬉しそうな顔をするとシカマルを抱き寄せベッドに寝転がった。ついでに頭を撫でてやる。するとシカマルは恥ずかしそうに唇を尖らせぶつぶつと文句を言った。

「撫でないで下さい…」

「好きなくせに」

「むぅ……」

*を膨らましたシカマルがかわいくて顔を近づけ唇を重ねる。シカマルは驚きながらも積極的に口づけに応えた。

「シカマル……」

「ん、ッ…ゲンマさ…ん」

「それで?アイツとは別れねーの?」

アイツ、その言葉でシカマルの表情が変わる。暗く後ろめたそうな顔で目線を下に落とした。

「……そろそろ潮時かなって思ってはいます」

「やけに冷静だな」

「頭だけっす、心ん中はぐちゃぐちゃで本当はどうしたいのか全くわかんねぇ……」

ぎゅっと唇を噛み泣きそうになっているシカマルの額にキスをするとシカマルは目線を上げた。茶色い潤んだ瞳がゲンマを見つめる。

「…まぁ、この状態が続こうが続かまいが、俺はお前が好きだし抱きたいと思うぜ」

「………ズルいっすよ、ゲンマさん」

「そんな俺が好きだろ?」

「……………」

シカマルは答えずにゲンマの腕の中へ潜り込む。スン、スンと鼻をすする音が聞こえるのでおそらく泣いているのだろう。難儀なことだ。かわいそうに、とシカマルを抱きしめた。

不知火ゲンマは奈良シカマルが好きだ。IQ200の切れ者で、戦略や交渉が得意。普段の口癖からは自分のことしか考えてないような印象を受けるが実は場を見て全てを掌握している所がそうだ。シカマルは誰が相手でも同じ土俵には立たない。いつも高台の上でのんびり昼寝をしながら大局を見ている。そんな12歳にはふさわしくない子供の時たま見せる子供らしい顔、かと思えばすぐに小悪魔のような笑みで相手を駆け引きに引き込む抜け目のなさ、セックスの時は必ず手か腕を握り必死に耐えてるいじらしさも、キスが好きな癖にして欲しいと言えない天邪鬼な所も、本当に好きな人に好きだと言えない愚かさも、全てが尊く愛おしい。

まだ自分の胸の中ですすり泣く少年をきつく抱きしめゲンマは耳元で優しく囁く。

「俺はお前の味方だ」

シカマルは何も言わなかった。ただ、すすり泣く声が嗚咽に変わり腕を伸ばしてゲンマにすがりついてきた。やるせなさが涙交じりの声に詰まっていて、そんな弱い部分を自分に見せてくれるシカマルのことがまた好きになってしまう。

いいんだシカマル。俺の想いに応えてくれなくても、俺にすがりついて泣いてくれてるだけで俺はお前のためならなんでもできてしまう。俺のことなんか気にするな。自分のしたいように、生きたいように人生を歩め。

いつも心の中でしか言わないシカマルへの思いを今日も呟く。いつかシカマルが自分で人生を切り開いて行くその時まで、ゲンマはシカマルの帰る場所でいると決めているのだ。



■■■■■



朝、ゲンマの家から2人は別々に出た。違う道で仕事に向かうのだ。ゲンマは内勤、シカマルは久しぶりに10班の班員として任務に出る。寒空の中、ポケットを両手に入れて体を縮こませながら集合場所の里の大門まで歩いて行く。

(あーあ…泣いちまった。いのとチョウジにバレねーわけねーし…さて、なんて言い訳をするか…)

厄介なのはあの髭クマだが、まぁ何となるだろう。シカマルは昨日のアスマとのやりとりを思い出し、道端にあった小石を蹴った。八つ当たりだ。小石を蹴るぐらいしかできないが、あの大人の腐った根性を叩き直したいという思いを込めて蹴る。シカマルはアスマと出会い初めて大人とは自然になるものではないと学んだ。体が大きくて年を重ねていても子供のような大人もたくさんいる。アスマがそうだ。アスマは弱い。シカマル達を守れるぐらい強くはあるけれど、心は強くなかった。それに気づいた時にはもうシカマルはアスマの逃げ場の一つになってしまっていた。

(便利だよな。子供だし、男だから中に出しても赤ん坊はできねぇ)

こつん、こつん、と小石を蹴っていると、小石はそのまま川に落ちていってしまう。

「…………俺もあの小石みたいに上がってこれないんだろうな」

誰かが救い上げてくれない限り。自分はもうあの川の底からは出てこれない。深い深い光も届かない川底で冷たくなって溺れて行くのだ。

「シカマルー!おはよ!」

「うぉっ!い、いの…!」

バチンッ!といのに背中を叩かれシカマルは驚いて振り返った。いのはしてやったりと笑顔を見せたが、シカマルの顔を見て様子がおかしいことに気づく。

「何、アンタ泣いたの?」

「あ、いや、なんでもねーよ」

「…どうしたの?仕事つらい?いじめられてるの?」

心配そうに顔を覗き込んでくるいのを見て、シカマルはふるふると首を振った。

「……大丈夫、いじめられてねぇよ、仕事は大変だけど、やりがいあるし」

いのは少し黙った後、困ったように笑う。普段は姉御肌で言い方もかなりキツイいのがごくたまに見せる優しい顔だ。

「アンタがどれだけ大変か、私には想像しかできないから……」

いのがシカマルの手を優しく握った。そして驚くシカマルに笑いかけていのはシカマルの手を引いて歩き始める。

「いの…」

「せめて私とチョウジの前ではめんどくさがり屋のシカマルでいなさいよね、そうじゃないと私がめんどくせーから!」

にっこりと笑ういのの笑顔を見てシカマルの心はぎゅう、と締め付けられた。確かな情をいのから感じたからだ。

(ゲンマさんと、同じだ…)

パタパタと涙がこぼれ落ちる。猪鹿蝶には確かに自分の居場所があって、ありのままの自分を認めてくれる仲間がいる。嬉しくて涙が止まらなかった。

「シカマル、泣かないでよ…滅多に泣かないアンタが泣いてたら私まで泣けてくるじゃない」

「こっち見てねぇのに、よくわかるよな…」

「馬鹿ね、猪鹿蝶に隠し事なんてできるわけないでしょ、お見通しよ」

遠くからチョウジがやってくるのが見えた。いのはそれに気づくと我慢できずに声を上げて泣き出し、チョウジが慌てて駆けてくる。どうしたの二人共?と心配そうな顔で聞いてくるチョウジに二人して抱きついた。

「いの、シカマル、何があったか話してよ…」

「なんもねぇ…ぐすっ」

「何にもないから泣いてるのよ*ちょうじぃ**!!!」

「……仕方ないなァ、ほら、行こうよ?アスマ先生待ってるよ」

チョウジはいのとシカマルの間に入り二人の手を引いて歩き始める。いのもシカマルも空いてる手で零れ落ちる涙をぬぐいながら歩みを進めた。

(いの、チョウジ、ごめん。ゲンマさん、ごめんなさい。みんな、ごめん。)

こんなにもありのままのシカマルを認めて愛してくれる人たちがいるのに、自分はそこから離れる道を選んでいる。覚悟しきれていないのにその道を歩いてしまっている。ただ一時の感情だけがシカマルの背中を押しているのだ。ごめん、ごめんなさい。謝っても謝りきれないが口にも出せない。口に出せない感情が涙に変わってこぼれ落ちて行く。もうそれなら全てを流してしまおう。もうシカマルは涙を拭うことはしなかった。



「…………お前ら何泣いてんだ、手まで繋いでよ…なんかあったか?」

集合場所で待っていたアスマは部下三人のひどい顔を見て心配になってしまう。しゃがみこみ、三人の顔を見るが、三人共事情を話すつもりはないようだ。アスマはため息をつき三人の頭を撫でると立ち上がる。

「俺さ、今日紅怒らせちまってんだ。というわけで今から俺は謝りに行ってくる。お前らはそれまで待機、スッキリしたら顔洗ってしゃんとしとけよ」

じゃ、と片手を上げてアスマは熊のようにのっそりと歩き出してしまう。シカマルはじっとその背中を見つめた。涙は止まりかけていて、瞼が痛い。シカマルは乱暴に目をこすり涙の跡を消そうとした。

「馬鹿ね、そんな乱暴にこするもんじゃないわよ、ほらこっち向いて」

川でタオルを濡らしてきたいのがシカマルの顔を拭く。シカマルは抵抗せずにされるがままになった。ひんやりと冷たいタオルは熱を持った目を冷やし、シカマルの思考もだんだん落ち着いて行く。

「……………いの、チョウジ」

「甘栗甘!ね、チョウジ、食べたいわよね?」

「へっ?」

「いいねぇ、甘栗甘食べたいなぁ」

目を丸くするシカマルを他所にいのとチョウジは甘栗甘で盛り上がってしまう。一人取り残されたシカマルは事情が分からず首をひねった。

「シカマル*私、甘栗甘食べたいなぁ**」

「いや、こんな時間じゃ開いてな…」

「もう準備は始まってるから裏の戸口から尋ねたら大丈夫だよシカマル」

「………行ってこいってことかよ」

「「そゆこと*」」

ゆるりとナイスガイポーズを決める二人をみてシカマルは思わず吹き出してしまう。

「わかった、買ってくる」

笑ってそう言うシカマルに二人も笑顔を返す。

「気をつけてね!」

「シカマル羊羹もお願いしたいなぁ」

「注文多すぎだろ、ったくよ」

片手を上げてシカマルは軽やかに駆けていく、その背中が見えなくなった頃、いのとチョウジは顔を見合わせ安心したように笑いあった。

「よかったね、いつものシカマルだ」

「ホント、世話がやけるんだから」

「ねぇ、いの」

「わかってるわよ、早くアイツに追いついて隣に立たなくちゃね!」

なんて、二人が話していることは全く知らずにシカマルは甘栗甘で団子と羊羹を貰って、来た道を戻っていた。因みに団子は蜜たっぷりでスプーンも3つつけて貰った。残った蜜を三人で分け合うのだ。少し意地汚いけど、猪鹿蝶でみたらし団子を食べる時は必ずそうしている。あの2人の喜ぶ顔を想像してシカマルは少しだけ口角を上げた。

「シカマル」

聞き慣れた声がシカマルを呼び止める。

「…アスマ」

「すっきりしたか」

「………わりぃ」

ぽんぽんと頭を撫でられ二人は一緒に歩き出す。アスマの*にはお馴染みのもみじ跡がどこにもなくて、シカマルの為にアスマがわざわざ嘘をついたことがすぐわかった。

「んで、なんで泣いてたんだ……って、まぁ大方は察しがつくけどよ」

「………………わかるなら、いい加減やめようぜ、この関係」

ザァ、と二人の間を風が吹き抜ける。アスマは何も言わなかったし、シカマルも何も言わなかった。しばらく沈黙が続くが、シカマルが痺れを切らしてアスマを責めるようにこう言った。

「……なんとか言えよ、大人ならハッキリしなきゃいけねーんじゃねーの?あの人か、俺か、いい加減選んでくれよ…」

もうこんな思いは嫌だ。シカマルはそう呟いて俯いてしまう。アスマも困ったような顔をしていた。困るのはこっちだ、とシカマルは心の中で悪態を吐く。あぁ、こんな情けない男をどうして好きになったのだろうか。

「……なぁ、シカマル」

「…んだよ」

「今日さ、うちに来いよ…ちゃんと話そう」

まっすぐとアスマの目がシカマルを捉えた。あんなに苛立っていたのに、この目で見られてしまうとシカマルはすぐに折れてしまう。自分の悪い癖だ、とシカマルは舌打ちをした。

「…………わかった」

なにを話すと言うのか、答えはもう出てるのに、シカマルはそう思いつつも素直に頷き、先を歩くアスマの後を追った。



■■■■■



その日の晩、任務も長引かず、早々に帰宅したアスマは簡単に夕食を済ませシャワーを浴びた。シャワーを浴びたのはなんというか、期待をしているわけではないということはわかって欲しい。ただ、どうなるかはわからないが、どうにでもなってしまえというか、押し切ってしまえば彼がまた自分を許すんじゃないかという甘い考えだ。アスマ自身も結局どうすればいいのか皆目見当がついていない。目を閉じれば微笑む彼女と彼の姿が見える。いっそのこと三人でいれたらいいのにと叶いもしない妄想にアスマはため息をつき、ぶくぶくと湯船に潜った。

「おい、入水自殺かよ」

「シカマル」

ガラリと戸を開けて、さも当然のようにシカマルがいた。一応ここは猿飛アスマの自宅で奈良シカマルの自宅ではないのだが、これだけ様々な関係を持ってしまった今ではこの古びた一戸建てが奈良シカマルの居場所の一つであることは間違いない。シカマルはため息をついて裸足で浴室に入ってくるとめんどくさそうに腕を引っ張ってきた。

「何だよ」

「バカアスマ、顔真っ赤だぞ、早く上がれよ」

そう言われてふと浴室の鏡を見ると確かに真っ赤になった自分の顔が映った。これは確かによろしくない、と素直に手を引かれて浴室を出るとバスタオルを放り投げられ、ついでにTシャツと短パンも放り投げられた。最後にぺしょり、と下着が床に落とされる。なんだがそれが未成年に手を出した自分を責めているようで、思わず笑ってしまった。その笑い声が聞こえたのか「バーカ」と拗ねたような声が聞こえ、より一層声をあげて笑った。

「ほら」

「さんきゅ…て、ぬるっ」

シカマルが差し出して来たコップに冷たさを期待して一気に口に含んだのだが、意外や意外、ただの温い常温の水だった。期待はずれで思わずソファに座るシカマルに非難の目を向けるとシカマルはシレッとこういった。

「体を冷やしちゃダメなんだぜ、水分は温度関係なしに体に必要なんだから、こんな時こそ常温で飲むんだよ」

「へーへー、天才さまの仰せのままに」

「喧嘩売ってんのか、あぁ?」

「ちげーよ…」

またこの間と同じヤクザ顔負けのドスの効いた声で凄まれ思わず距離を開けた。シカマルも半分冗談だったようで直ぐにいつもの雰囲気に戻り、二人の間には沈黙ができてしまう。そしてまた、その沈黙を破ったのはシカマルだった。

「なぁ」

「んー?」

気の抜けた返事、シカマルはそっぽを向きながらこう聞いてきた。

「なんでさ、この家に紅先生入れないの」

「なんでだろうなぁ」

変わらず気の抜けた声を出す俺をシカマルは少しだけ見つめもう一度聞いてきた。

「赤ん坊もできないのになんでいつも中に出すの」

「…なんでだろうなぁ」

少し黙ってそう答えるとシカマルは足を抱え込んで俯いてしまう。そして震える声で恐る恐るこう聞いてきた。

「なんで俺をこんな風にしたんだよ………」

「…………それは、」

言葉に詰まる。シカマルも何も言わない。アスマの答えを待っている。シカマルはアスマの臆病さを知っている。でもこういう時は決して助けてくれない。こんなとこは彼女とちょっと似ていると心のどこかで呑気に考えていた。ただ、次の瞬間耳に入ってきた泣き声にアスマは現実に引き戻されてしまった。

「ひっ、く…ぅ、うぁ、う、ぅ…ッ」

「お、おい…シカマル……」

手を伸ばしたが、涙で濡れた手で弾かれてしまう。アスマが驚いて目を丸くすると、シカマルは背を向けて蹲ってしまった。

「なんで、なんで…!」

嗚咽が混じった声でシカマルは叫ぶ。アスマはじっとその声を聞いた。

「卑怯だ、卑怯だよアスマは…、なんで何にも言わねーんだよ、俺をこんなにしたのはアンタだろ、なんで俺から逃げんの、なんで向き合おうともしてくれねーんだ」

何も答えないアスマに腹が立つのかシカマルは乱暴に髪を解いてゴムを投げつけた。生憎ゴムではたいした威力もない、情けなくフローリングに落ちるゴムをアスマはぼんやりと目で追った。

「またダンマリかよ………最低だよ、アンタ」

「……そう思うなら、なんでお前は俺から離れないんだ、他にいい奴もいるだろう」

アスマが思わずこぼした一言にシカマルは勢いよく振り返った。そして今まで見たこともないような顔をでアスマを睨みつけた。

「ッ!!馬鹿野郎ッ!!」

「オイッ、こら、やめろ!」

アスマに飛びかかり馬乗りになったシカマルは容赦なく拳を振るってくる。その拳を避けようと身をよじるが流石はシカマルも忍の卵、中々簡単には避けさせてくれない。抵抗するアスマに苛立ち青筋を浮かべながらシカマルは今まで溜め込んだ感情をどんどん吐き出していく。

「やめるかよ!臆病なアンタなんか大っ嫌いだ!!思わせぶりな態度ですることしといて、いざとなったら逃げ腰のアンタなんか俺が知ってる大人の中で一番カッコわりぃよ!!!」

はぁ、はぁ、とシカマルの荒い息遣いが聞こえた。アスマはじっとシカマルの顔を見る。口を真一文字に結んで泣くのをこらえているが、茶色い瞳には映画のワンシーンのような涙の膜が張られ、大粒の涙が今にもこぼれ落ちてきそうだ。

(そうだ…そういやこいつ、本当は泣き虫だったなァ)

シカマルは力の入らない手でアスマのTシャツを掴む。ぶるぶると肩が震えれば手も震える。震えはもう止まりそうもない。シカマルはやりきれない思いを声に乗せて、全てをぶつけてきた。

「だけど、だけどさぁ!期待すんだよ!ここに紅先生を連れてこないこととか!男は俺が初めてってこととかさ!!…毎回、中に出すのも本当は腹めちゃめちゃイテーよ、…でも、アンタが赤ん坊を作れるはずのない俺に出すのは、何か意味があるんだろ…?」

「…シカマル……」

「どれだけ情けなくても、アンタが好きだ、いくらゲンマさんに慰めてもらってもアンタといるのじゃワケが違う…………俺はアンタから離れたくない…!」

離れたくない、シカマルはハッキリとそう言い切った。しかし、アスマの何とも言えない表情を見てシカマルも困った顔をし、ぽたぽたと涙を流しながら笑った。アスマは上半身を起こし、シカマルの頬を優しく撫でる。そうするとシカマルは大人しくその手にすり寄ってきた。そして落ち着いた声で呟く。まだ涙は止まらない。

「でも、現実はそう簡単じゃねーし、決めなきゃいけないのはアンタだから…俺はもうアンタの側から離れるつもりはないけど、アンタが俺に消えて欲しいと思うならいつでも消えるぜ…?だから、アンタが決めてよ、アスマ……」

俺を求める12歳の少年。あの言葉で俺の記憶は途切れている。気づけば一人きり真っ暗な部屋の中でソファに倒れ込んでいた。どうやら少年のたった一つの願いを、俺が叶えることはなかったようだ。雁字搦めにして羽をむしり取ったのは俺なのに、飛べない羽を持った少年を、俺は谷底へ突き落とした。もしこの世に神様がいるなら、神様はきっといつかこの臆病で愚かな俺に罰を与えるだろう。地獄より恐ろしい罰を。

(今でもいいから、早くそうならないだろうか)

頬に流れる涙には気づかないふりをしてアスマは真っ暗な天井を見つめ続けた。



■■■■■



「よう、シカマル」

「どうも」

午後11時50分。任務服を着たまま、傷だらけでシカマルはゲンマの家を訪ねた。ゲンマもシカマルを快く招き入れる。ゲンマは当然のように客人にお茶を淹れるようなことはせずにシカマルの唇を塞いだ。そのまま畳の上に押し倒し馬乗りになってシカマルの動きを封じ込める。シカマルは素直に口を開けゲンマと舌を絡め合った。息苦しさに体はだんだん火照り、脳はぼんやりと理性を手放していく。ここ三年程、ゲンマとシカマルは付き合っていた。だからこうしてセックスをするのも何ら不思議ではない。例えシカマルが愛していた男の仇討ちの後だったとしてもだ。ゲンマはあの男が嫌いではなかった。むしろ好きだったように思う。それはきっと、シカマルがあの男を愛していたからだろう。でも今のシカマルの瞳にはあの男は居ない。空っぽの瞳がゲンマを見つめていた。

「シカマル」

「…なんスか」

「今日は、どうしてほしい?」

何気なく、そう聞くとシカマルは少し考えてからこう言った。

「朝まで抱いて、後、全部中に出して」

「中に出すのはいつもだけどよ、体力持つかね…」

「へばったら俺が乗りますよ」

何ともない、という顔でシカマルはそう言った。その表情が何とも言えなくて、今すぐ抱きしめてしまいそうになる。だが、それをぐっと堪えて血生臭い任務服に手をかけた。抱きしめたところであの男は戻ってこないのはわかっていたし、それをしてシカマルにあの男がいないことを感じさせる方が嫌だった。周りの大人に無理やり大人にされてしまった可哀想な青年の瞳はまだ少し淀んでいる。区切りをつけたと言っても心の整理はつかないのだろう。いっそのこと何もかもを忘れさせてやろうとゲンマはひどく激しくシカマルを抱いた。シカマルが思わず泣き出してしまうぐらいひどく抱いて、やめてと泣き叫ぶ声も全部無視して、本当に夜が明けるまでシカマルを抱いた。体力が持ったのは奇跡だと思う。ぐったりとベッドに倒れこむシカマルからゆっくりと腰を引くと溢れんばかりに注ぎ込んだ白濁が一緒に漏れ出し糸を引いてシーツに落ちていく。

「ッ、く、ァ…!」

「こりゃヤりすぎたんじゃねーの、大丈夫か?」

「……あん、たがやったんだろ…」

「お前がそうしたいって言ったんじゃねーか」

「…やめろ、って言ったのに」

「もっと、って意味かと思って」

嘘だ。わかっていた。本気で言っていたことぐらい、でもやめなかった。俺がしたくてそうしたのだ。中指と薬指を入れ、中に入った白濁を掻き出そうとするとシカマルはぽつりと呟いた。

「……なぁ、ゲンマさん」

「ん?」

「なんで、ゲンマさんって俺の中に出すの?赤ん坊なんかできないのに」

「そりゃあお前が好きだから」

なんで?と不思議そうに聞くシカマルにゲンマはさらりと答えを告げた。シカマルは頭はいいのにこういう人間の感情的な部分がわからない時がある。IQがあまりにも高すぎると通常の生活を送るのは難しいという論文もあるし、シカマルも恐らくそうなのだろう。考えもせずに答えを告げたのが尚更不思議だったのかシカマルはゲンマによって掻き出される白濁を見ながらまた質問を繰り返す。

「…中に出すのが気持ちいいとかじゃなくて?」

ゲンマはどう言えばシカマルが理解できるのかしばらく考えたが、あまりうまい言葉が見つからず、幻想的なことを口にしてしまう。

「セフレならそーだろーけどよ、お前のこと好きだもんなぁ俺…ありえねぇけど、中に出してると本当に赤ん坊できんじゃねぇかって思うんだ」

そう、よく思うことがある。このまま中に出し続けたら一回ぐらい奇跡が起きてもいいんじゃないかと。シカマルの腹が大きくなって赤ん坊ができました、じゃあ結婚しましょうってなったらどれだけ幸せなんだろうと、ゲンマはシカマルの中に出す度にそう思うのだ。いや、順序的にはよろしく無い展開なのだが、段階を踏むということが難しい関係である以上既成事実が必要となってくるのは否めない。もちろん、シカマルといれるだけで十分幸せだが、シカマルと自分の子供がそこにいるとするならそれ以上の幸せは無いと思うのだ。

「…赤ん坊なんかできても、男同士だぜ?」

「じゃあ、なんでお前は男に抱かれてんだよ」

「それは…」

ぐ、とシカマルは黙り込んで俯いてしまう。ゲンマは汚れていない方の手でシカマルを優しく撫で、さも当たり前のように喋り始める。

「もう性別なんか大した問題じゃねーだろ、世間体とか色々現実を見たら厄介なことはあるけどよ、少なくともお前とこうしてる時にそんな余計なこと考えねぇ、考えるのはお前が好きだってことと、お前と一緒にいたい、繋がりたいってことだけ」

「………………」

かぁあ、と顔を赤くしてゲンマの告白を聞くシカマルが可愛くて思わずゲンマは笑ってしまう。

「んだよ、顔真っ赤にして」

「うっせ…」

「なぁ、シカマル…いいこと教えてやるよ」

「…………なに、」

恥ずかしがってそっぽを向くシカマルにゲンマは何気ない話をするかのように話しかける。シカマルは赤い顔を少しだけこちらに向けゲンマの話を聞こうとした。

「…アスマもきっと俺と同じ理由だぜ、お前との赤ん坊欲しかったんだよ」

アスマ。という単語を出しただけでシカマルは顔を強張らせてしまう。ぎゅ、と拳を握り唇を噛み締めると震える声でこう聞き返してきた。

「…………なんでわかるんだよ」

「んなのわかりきったことじゃねぇか、だからお前を手放さなかったんだろ、アイツも、俺も」

「…………」

シカマルを都合のいい性処理道具だと思ったことは一度もない。愛しているからこそ、シカマルを抱いたし、側に置いたのだ。それはきっとアスマも同じであっただろう。アスマもゲンマと同じように、頭が良くて、たまに子供っぽくて、それでも大人の中で背伸びをして戦う彼が可愛くて愛おしくて仕方がなかったのだ。ただ一つ、ゲンマがアスマを責めるとしたら、アスマの臆病な部分だろう。シカマルか彼女か、どちらかを選び取る勇気が出なかった。そういう優しい男なのだ。誰も傷つけたくないが故に、一番傷つけたくない者を傷つけてしまう。最悪で最低の優しさだ。シカマルはなにも言わない。きっとわかったのだと思う。そしてゲンマはゆっくりとため息をついた。この話をしてしまったということは全てが終わるのだ。ゲンマはまた何気ない話をするかのように口を開いた。

「シカマル、俺たち…」

「ゲンマさん………俺と、別れてください」

「……あぁ、そうすっか、俺もそろそろ潮時だ」

シカマルに遮られて言えなかった言葉はシカマルの口からこぼれ落ちた。結局、ゲンマがどれだけアスマを責めようとシカマルはアスマが好きで、アスマの情けないとこも全部ひっくるめて愛してしまっているのだ。そんなのこととっくの昔にわかっていた筈で、それでも構わないと思って付き合っていたのだが、今この瞬間ゲンマの心臓は握りつぶされるような鈍痛がしている。大人ぶってわかったフリをして、ゲンマも自分に嘘をついていた。自分でそのことに気づき、静かに涙を流すシカマルの横でゲンマも涙を流した。互いに涙を拭うことはしない。そして互いの涙も拭わない。それが二人が選んだ道だった。

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