懐かしい嘗ての淡い記憶は、おぼろげに。
それでいても鮮やかに温かく胸に残るものであった。
二卵双生児の双子の少年達。
兄は怖いもの知らずな程元気の良い男の子。
弟は気の弱く大人しく優しい男の子。
いじめっ子を前に泣く弟に
いじめっ子を追い返すべく目を釣りあげた兄。
自分の弱さに涙する弟と
自分の強さに孤立する兄。
仲は良いものの、彼らは対照的な兄弟であった。
そんな彼らが歩む中央にただ1人。
背の同じ程な髪の長い少女と思しき姿。
その子が一体誰なのか、親しかったのか。
全く覚えていない。
「なぁ、俺は悪魔なのか」
「もっと、強くなりたい」
少年たちの幼い頃の台詞が蘇る。
目を潤ませて、拳を握りしめた切な言葉。
「燐は燐だよ」
「大丈夫、雪男ならなれるよ」
彼女が何者だったのか覚えていない。
しかし、彼女があの頃。彼女が少年たちの
数少ない味方であったことははっきりと記憶の中に刻み込まれているのであった。