まったく良い時期に来たものだと、だらしなく緩む頬をそのままにクローゼットの前に立つ。
 停泊中の島ではどうやら夜にお祭りがあるらしく、出店もたくさん並ぶということで、今回は船番ではない私はもちろん行くつもりで楽しみだなぁなんて心躍らせていた。
 しかし今はそれとは比べものにならないほどに胸が高鳴っている。
 "一緒にいかねェか?"もう何度も脳内で繰り返している彼の言葉を思い出してはまたニヤニヤする。
 深い意味がないということはわかってる。それでも好きな人から誘われたのだ、嬉しくないわけがない。
 勝手にデートだと思うことにして、気合いを入れる。
 ──夜。ついにその時がきた。
 ドンドンと船内にまで響く太鼓の音を聞いていると、何だかとても緊張してきた。
 さっきまでの威勢はどうしたと情けなく笑い、ぐっと息を呑み部屋から出ると、壁に凭れ掛かって待つエースがいた。

「あっ、ごめん……!お待たせ」
「おう。行くか」

 ただ隣を歩いているだけだというのにこんなにもドキドキしてしまうのは、勝手にデートだと思い込んでいるからだろうか。

「お前今日何かいつもと違ェな」

 頬をぽりぽりと掻いて、どこか居心地悪そうに言うエースにドキリと胸が高鳴る。

「あ……ちょっとね!頑張っちゃった!」

 今日ばかりは動きやすさ重視の服をやめ、お気に入りの大きな花柄のワンピースを着た。そして当然メイクもいつもよりも丁寧に張り切ったし、髪型だって──。
 いい意味かはわからないけど気付いてくれたことが嬉しくて胸がきゅっとなる。でもあまりにあからさまに頑張りすぎたせいで同じくらい恥ずかしくもあって、へへっと笑い飛ばせば「……おれのためか?」なんて呟くような彼の声。

「へっ!?」

 驚きすぎて変な声が出た。

「……バカ、冗談だ。ほら、早く行こうぜ」

 そう言って少し前を行く彼の耳は真っ赤で、私の顔はきっとそれ以上に赤い。
 まだ船の上だというのにこんな状態で、帰ってくるまで果たして心臓は持つのだろうかと心配になった。

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