──暑い。
じりじりと照りつける太陽にじっとりと汗をかき、肌が焼けていくのを感じてぱちりと目を開ける。
ぽかぽか陽気に眠気を誘われて甲板の隅っこにシートを敷いたのはついさっきのことのように思えるのに、一体いつの間にこんなに暑くなったのか。
信じられない、と寝返りをうつと日にあたり続けていた箇所がじんじんと熱を持っているのがわかる。
そしてそれはもちろん私の身体だけではなく、どうやら船もほかほかにあたためられているようだった。
シートを敷いていなければそう長くは触れていられないであろうほどのその熱は、さらに汗を噴き出させるというのに意外にも不快ではなく、何だかまた眠くなりそうな心地よさがある。
しかし残念なことに、簡単にもう一眠りとはいかなそうなくらいには喉が渇いている。
んん、と唸ってもう一度寝返りをうつ。
飲み物を取りに行きたいところではあるが、起き上がるのはとても面倒である。
我ながら呆れたダメ人間っぷりだなとは思うけど、どうしても起き上がる気にはなれず、何とか喉の渇きを忘れようと努力した。
そして努力の甲斐あってふっと意識が飛びかけた頃、頬にひんやりとした何かが乗せらてビクリとして再び重い瞼を持ち上げる。
「よぉ、こんなとこにいたのか」
ちら、と声のした方へ目を向けると私の頭の上にしゃがみ込んだエースがいた。
「……エース?」
「おう。サッチが心配してたぞ。ほら、これ飲めってよ」
私に見えるようにしてエースが持っていたグラスを揺らすと、カランカランと涼しげな音が響いた。その音に急激にさっきまでの喉の渇きを思い出し、目を見開いてカバッと勢いよく起き上がると「おわっ、危ねェな!」とグラスを引いた彼が笑う。
「ん」
「ありがとう……!」
渡されたグラスを思わず正座して受け取ると、手のひらからじわじわと熱が冷まされていく。ごく、と喉を鳴らして水を見つめていると、早く飲めよと言いたげな視線が投げられた。
もう一度お礼を言って、喉が痛くなるくらいにキンッキンに冷えたそれをゴクゴクと一気に飲み干してぷはっと大きく息を吐くと、彼は「そんなに喉渇いてたのかよ」と呆れたように笑った。
「うん、もう倒れるかと思った……ありがとう」
「礼ならサッチに言え。ったく、そんなになるまで何してたんだよ」
「え、寝てた……?」
へへ、と笑ってグラスに残っていた氷を口に含むと、眉を歪めてやはり呆れたような顔をしたエースが立ち上がる。
日差しが彼によって遮られて少しだけ涼しくなったな、なんて思いながらがりごりと氷を噛み砕いていると、ぽすん、と頭に何か乗せられた。
軽いそれを押さえて彼を見上げると、「被ってろ」と優しい声が降ってくる。
「いいの?」
「あァ。貸してやる」
「でもエースが暑いじゃん」
「おれァいいんだよ。お前より頑丈だからな」
フン、と鼻で笑って口角を上げる彼は何だか眩しくて、少しだけ頬の熱が上がったような気がする。
じゃあ有り難くお借りします、と照れ隠しの硬い言葉を吐き出してまた氷を口に含んで眩しい彼から目を逸らす。
「……悪くねェな」
「え?」
ぽそりと呟くような彼の声にまた顔を上げると、彼は何となくばつが悪そうに口を歪めて頬を掻く。
「いや、なかなか似合ってんなと思ってな」
そう言ってまたしゃがんだ彼はどこか照れくさそうで、どうしたんだろうと不思議に思いながら氷を噛み砕く。
「おれにも一つくれ」
あ、と口を開けるエースにグラスを少し持ち上げて「これ?」と聞くと、こくんと頷かれたのではい、とグラスごと渡す。
同じように氷を口に含んでがりごりと噛み砕く彼は「いやしかし暑いな」と汗で張り付いた髪をかき上げた。
「ね、ほんと暑いね」
日差しは強くなるばかりで、本当なら船内に避難すべきなんだろうけど、何となく今はそれが惜しいように感じた。
「……座る?」
「ん?あァ、悪ィな」
少し詰めると隣にすとんと腰をおろした彼と、何をするでもなくただ炎天下を過ごした。
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