ダンダンダンッと破る勢いでドアが叩かれて、重い瞼を持ち上げてうっすらと目を開ける。
 まだ返事はしていないはずだけどバンッと無遠慮に開かれたドアからは、想像通りの鮮やかな色がのぞいた。そのままズカズカと入ってくる彼を見て、欠伸を漏らしもう一度目を瞑る。

「おい起きろ」
「……やだ」
「あ?」

 心地よい気候のせいか、一度は目を開けたもののどうにも眠くて仕方がなかった。
 バタバタとみんなが走り回っている気配はないし、彼も慌てた様子ではない。となるとまだこれといってやることもないはずだし、今が何時かはわからないけどもう少し眠っていたい。
 悶々とそんなことを考え"彼が起こしに来た"という事実からは目をそらし、怒られる覚悟で布団を肩まで被り直す。

「さっさと起きやがれ」
「やだ」

 ピキピキと青筋を立てる彼の顔は容易に想像できたけど、どうしても起きる気にはなれなかった。

「……もうすぐ島につく」

 布団を剥ぎ取られることもなく、落ち着いた声で話されたそれに、瞬時に思い起こされるのは前回の島を出てしばらくのことだった。



「ねぇキッド、たまにはデートしたいな」
「あァ?」

 冒険に忙しい私達に二人でのんびり島を回っている暇なんてないのは百も承知だ。みんなで新しい島に降り立ってあちこち見て回るのはもちろん楽しいし、彼の首にかかっている懸賞金の額だってよくわかっているつもりだ。だけど、仲良く肩を寄せ合って歩く恋人達を見て、少しだけ羨ましいと思ってしまったのだ。

「少しだけでいいの!ほんのっ、ほんの少しの時間でいいから、次の島!二人で回れないかな……?」

 私の必死さに圧倒されたように何も言わなかった彼は、しばらくして「……考えとく」とぶっきらぼうな言葉を残して去っていった。断られなかったことが嬉しくて、その日は緩む頬を抑えるのが大変だった。
 そして今、その"次の島"が予定より早く目前に迫っているというのだ。さらには彼がこうして起こしにきてくれたということは──。

「……えぇっ!?ちょっと!どうしてもっと早く起こしてくれなかったの!?」
「あァ!?だから今起こしてんだろうが!」
「いや、そうだけどさぁ……!」

 バサッと起き上がりパニックから彼に理不尽な怒りをぶつけてふと我に返る。

「あ……!あ、のさ……」

 勝手に早とちりしてデートだと思い込んでしまったけど、そういえば返事はもらってないんだった。
 改めて確認しようと言葉を発したはいいが、うまく続かずに視線を彷徨わせる。

「言っとくが、待つ気はねェぞ。さっさとしろ」

 そう言って背を向ける彼をぱぁっと花が咲いたような気持ちで見つめる。
 嘘みたいに消えてしまった眠気に鼻歌をうたいながら大急ぎで準備を始めた朝。

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