久しぶりに見た顔に声を掛けると「付き合え」とだけ言われ、任務完了の報告を終え退屈な時間を過ごす予定だった私は今彼の部屋にいる。
上着を脱ぎネクタイを外す彼を横目に適当に部屋の中を物色していると、ふと目に留まった昔の写真。彼がこんなものを部屋に飾っているなんて意外だった。
まだ子供と呼べる頃に皆で撮ったそれは、何度見ても懐かしくて擽ったくなる。もちろん自分の部屋にも飾ってあるけれど、忙しい日々の中で最早風景と化したそれは、視界に入ることはあってもまじまじと見つめることはなくなっていた。
久しく味わっていない胸の温まる感覚にふ、と笑みを漏らせば、カランと軽やかな音が聞こえて振り返ると、髪を束ねた彼がソファに座っていた。
「なんだ、感傷にでも浸っているのか?」
優雅に脚を組み薄ら笑いを浮かべてグラスを回す彼に「まさか」と答えて、同じくソファに座る。
渡されたグラスを受け取って、「お疲れ様」と乾杯代わりに軽く持ち上げて口をつける。
「今回は随分長かったのね」
「まァな」
フンと鼻で笑う彼は上機嫌で、どんな任務に就いていたのかは知らないけれど、如何に満足いく結果だったのかは容易に想像がつく。
「それにしても、あなたから誘ってくれるなんて珍しいわね」
いくら任務が上手くいったからといって彼にとってそれは恐らく当然であり、それしきで誰かを部屋に招いて酒を飲もうと考えるほど気分が上がるとは思えない。たとえそれが昔馴染みであったとしても。
「何か特別な理由でもあるのかしら?」
さして緊張感のない笑みを唇にのせながらも、そんなことを聞いてしまうのは最早職業病かもしれない。別に理由なんてどうだっていい、確かにそう思うのに、一度気になってしまえば探らずにはいられない。そんな私に彼は瞼を伏せ口元に笑みを浮かべる。
「ほう……随分愛想がないな。昔馴染みと酒を飲むのに理由が必要か?」
そう言って向けられた瞳からは欲しい情報は得られなかった。流石だなぁ、と小さく息を漏らし今度はこちらが目を伏せて降参の意を示す。
「まァいい。──そんなに理由が欲しいなら女の喜びそうな理由でもつけようか?」
静かに、それでいて愉しそうにそう言った彼の手元でまた氷がカランと音を立てた。
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