ソファに座って葉巻を燻らせている後ろ姿をああかっこいいなとしばらく眺めて、ドンッと勢いよくソファ越しに抱きつく。

「うおっ!?あっぶねェな、てめェ!」

 衝撃で前屈みになった彼に引っ張られて爪先がギリギリ床に触れるくらいの辛い体勢になってしまったけど、とりあえず「えへへ」と笑ってみる。

「ねぇパウリー、そのままひっぱって?」

 彼を捕まえたまま甘えた声で言えば、訳がわからないといったように舌打ちをした彼がさらに体を前に屈める。自動的にとずりずりと引き上げられる体に「すごい」と笑って背もたれに膝をつき、彼の後ろに少々強引に入り込む。
 ありがとう、と大きくて温かい背中にぴっとりとくっついて頬を緩めて瞼を閉じる。

「ったく、隣に座りゃあいいだろうが」
「んー今はこうしてたいの」

 後ろに私がいるせいで居心地悪そうに座るパウリーに「もたれてもいいよ」と言うと、「つぶれんだろ」とふざけているわけでもないトーンで返ってきた。

「つぶれないよ」
「ハッ、どうだかな」

 彼の雑そうに見えてとても優しいところが大好きだ。きゅうと締め付けられる胸が苦しくて、彼を抱き締める腕に力を込める。

「ねぇ小さい頃さ、指で背中に文字を書いて、何て書かれたか当てるって遊びしなかった?」

「あ?なんだ、その遊び」

 大して興味無さそうに答える彼に、体を離して「こうやってー」と指で背中に文字を書いてみせて説明する。

「なんて書いたかわかった?」
「ふね」
「正解!」

 くだらねェ、と鼻で笑う彼にむっとして今度はもっと難しいことを書いてやろうとキャンバスである彼のタンクトップを綺麗に伸ばす。難しいこと……何を書こうか。うんうん頭を捻ってやっと浮かんだ妙案に一人にやにやする。

「じゃあ次!」
「まだやるのか……」

 やる、と答えてゆっくりと彼の背中に文字を書いていく。"パウリー"と彼の名前を書けば「あ?なんだよ」と普通に会話できてしまうのが面白い。彼は意外とこの遊びが得意なのかもしれない。次いで"かっこいいね"と書いてみる。返事はない。

「なんて書いたかわかった?」
「わからねェな」

 フンと鼻を鳴らす彼が面白くてくふくふと笑う。どうやら成功したようだ。

「じゃあ次ね!」

 彼をからかうつもりで考えたけど、いざ書くとなると少し恥ずかしいそれに一度ぎゅっと手を握り小さく息を吐く。もぞもぞとむず痒くなってしまうそれを何とか書き終えて、伝わっただろうかと私よりもずいぶん高いところにある後頭部を見つめると、「……っ、口で言やいいだろうが」と苛ついたような声が返ってくるとともに、ぐいーっと彼の背中に押し潰された。
 わかりやすい照れ隠しがかわいくて「あははっ」と笑いながら、凭れてきた彼を受け止める。たった二文字の言葉でほんのり耳を赤くする彼がたまらなく愛しい。

「パウリー、好きだよ」
「……あァ、知ってる。さっき聞いたからな」

 フンとまた鼻を鳴らす彼に、緩みっぱなしの頬を擦り寄せる。毎日好きだと思っているのにどんどん好きになっていくのはどうしてだろう。葉巻の匂いすらも私の胸を締め付けていることを、彼は知っているのだろうか。
 ああ、ずっとこうしていたいな、でもそうしたら彼の腹筋が大変なことになるか……なんてぼんやり考えてまたくすくすと笑った昼下がり。

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