※事後


 覆い被さるように倒れ込んだおれの頭を好き放題撫でて慣れたように下から抜け出していく身体を、今日もおれは止めることができなかった。

 キンッと耳に残る音が響く。それからすぐにシュボッと着火の音。
 布団にくるまってベッドの縁に腰掛ける背中は、さっきまではおれの指先一つの動きを拾ってはビクビクと震えてたはずなのに、コトが終われば素っ気ないもんで、今はただ苦いだけの葉っぱに夢中だ。
 熱気のこもる室内、静かに揺れるランプだけが部屋を照らしていた。
 気だるげに煙草を銜えて乱れた髪を耳にかける仕草が好きだった。火をつけてやろうと思うのに、身体が思うように動かないことがよくあった。

「なァ」
「ん?なに?」
「おれはお前のこと、愛してるのかな」
「それ、私に聞く?」

 ふふっ、と吹き出したように笑って煙を吐き出しながら灰皿に伸ばされた手は、簡単に折れちまいそうなくらい細いのに、触れた途端に頭に上る熱がいつもそんなことは忘れさせる。

「おれはお前に触りてェと思うし、お前になら触られてェとも思う。ただこれが愛してるってことなのかは正直よくわかんねェ」
「そっか」

 軽やかな声だった。もわもわと形を崩した煙が、笑っていることを表していた。

「まぁエースの気持ちだからね、私にはわからないよ。でも──」

 それが愛してるってことなら私は嬉しいけどね、とまた煙を吸って吐く背中を見つめる。

「……うれしい?」
「嬉しい」

 灰皿に伸ばされた手がランプの灯りを遮る。僅かな風にゆらゆらと揺れる心もとない火は、まるで今のおれのようで見てられなかったからちょうどよかった。

「……わかってねェな。おれみてェな奴に愛されたらお前だってきっと後悔する」
「そうね、そうかもね」

 また情けない火が部屋を照らす。いい加減顔を見たくもなったが、相変わらず身体は怠いまま。

「でもしないかもしれない」

 弾むような声。曇り一つない、希望に満ちた"今"だけを見ているような声だった。ハ、と小さく笑って息を吐く。

「バカだな、お前。逃げんなら今のうちだぜ?」
「かかってこいってんだ」

 ふん、と笑って煙草を揉み消しながら似合わないセリフを吐く背中に手を伸ばす。
 もしこの手があの背中に届いたら、振り返ったあいつはどんな顔をしているだろう。

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