青い空、白い雲。宝石を散りばめたような輝く白い砂浜に、それをさらう透き通った波。頬を撫でる風は生ぬるく、太陽は容赦なく肌を焼いたけど、木陰は幾分涼しく快適だ。
流木に座りながら、ザザンと寄せては返す波をただ二人でぼんやりと眺めていた。あたりに人けはなく、海鳥の鳴く声がする。
「よかったの?こっちに来て」
「あ?」
流木に手をついて足を投げ出す。ひんやりとした砂にかかとが埋まって気持ちいい。足についた砂はいつの間にか乾いた色をしていて、ためしに足下の砂を踏みしめてみると、陰なこともあり多少湿気てはいるけれどそれでもさっきまでよりもずっとサラサラしている。
「みんなきれいなお姉さんにお酒注いでもらえるって張り切ってたでしょ」
「あー」
美しい海をもつこの島は、どこもかしこも美人ぞろいで有名だった。訪れた者は皆ここを天国だと称し、土産に"
永久指針"を買って行く者も少なくはないらしい。
そんな美人ぞろいの島の中でも、特に選りすぐりのお姉さんたちが集まるというお店にみんなこぞって出かけていった。息を呑むほど美しい自然と共存していることが不思議なくらいきらびやかで栄えた街は、金さえ出せば海賊だって歓迎してくれるらしい。
だけど私はまずは海のほうに興味があり、こうして白くて美しい砂浜を散策していた。お酒を飲むにはまだ明るいし。
そしてエースも、なぜだか私と一緒に海を眺めていた。浅瀬で波を堪能している間も、ブーツを履いたままの彼は退屈ではないだろうかと気にはなっていたけれど、なんとなく聞けずにいた。
「いいんだよ」
「そう?見たこともないくらいきれいなお姉さんたちにモテモテだったかもよ?」
にやにやと口元を緩ませて彼の後悔を煽ってやろうと言えば、彼の眉間にしわが寄った。しかしそれからすぐに小さくふ、と笑って挑発的な目が向けられる。
「きれいなおねーさんにモテたってしょうがねェからな」
さわさわと木の葉が揺れる。
「そんなこと言って〜。いつも満更でもないみたいな顔してるくせに」
「してねェよ」
「してる」
「してねェ」
はいはい、と笑って足元に目を向ける。私たちを覆ってくれている影も少しずつ狭くなってきた。じきにここにも日が差すのだろう。その前に──とリュックから水の入った水筒とサンドイッチを取り出す。
「はい」
「お、気がきくな」
「でしょ」
ふふんと笑ってタオルで手を拭いてから、ぬるい水を飲んで「いただきます」と二人でサンドイッチを頬張る。ハムとレタスとチーズを軽く焼いたバゲットで挟んだだけのシンプルなサンドイッチ。だけど、おいしい。パリパリ、シャキシャキと気持ちのいい食感の先にはハムの塩気と旨味、それにまったりとした濃厚なチーズの味わいがある。景色も相まってか、本来の味以上においしく感じている気がする。
「ん、うめェ」
「よかった」
寝る間もなくぺろりと平らげたエースを見て、この景色を見ていられるのもあと少しかもしれないと思いもぐもぐとやや急ぎ気味に口を動かしながら海を見る。
「おれは、お前がいるからこっちにきた」
静かな波が打ち寄せて、引いていく。
熱を帯びたような声色に、何と返したらいいかわからなくてサンドイッチを飲み込むのに少し時間がかかった。
「私も、エースといると楽しいから、うれしい」
もっとほかに言い様はあったと思う。
だけど、どうやっても胸にある思いすべてをうまく伝えられる気はしなくて、ばかみたいに手近な言葉を並べた。
「……おう」
「うん」
でもそれでよかったんだと思えたのは、私たちの間に流れる空気が変わらなかったから。
「食ったら余計に腹へったな」
「言うと思った」
くすくすとどちらからともなく笑って、先に宴会を始めているみんなのところへたかりに行こうと、彼の口に残りのサンドイッチを押し込んだ。
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