つやが出てとろりと溶け出し、ふつふつと泡立ってほんのり焦げ目がついたら完成、と垂れないように急いで裏返して火傷しないように一瞬だけ間を置いてから、はむと頬張る。
「ん〜、おいし〜!」
とろける甘さが口に広がって、初めて食べたわけでもないのに幸せを噛み締めるように頬を押さえる。
ここ最近の私は、あったかとろり炙りチョコにハマっていた。唇についた溶けたチョコをぺろりと舐めとって、再び炙ってもらうためにぱきりと不格好になった板チョコを歯で割って整える。
「思ったんだけど。これってさ、エースを食べてることにならないかな?」
「は?」
指先でちりちりと下からチョコを炙ってくれている彼が意味がわからないとこちらへ視線を寄越す。
「だってこの"火"はエースでしょ?じゃあその"火"に炙られたチョコにだって少しくらいエースの成分が入ってるんじゃない?」
「あァ?……成分だァ?なんだそれ、入ってねェだろ。おれァこの通り減ってねェんだし」
またわけのわからん話を……と眉を顰めて火をおさめた指をふりふりと振ってみせるエースに、つまんないのと唇をとがらせる。
「なんだお前、……おれを食いてェのか?」
「んー、『食べたい』っていうより──『取り込みたい』って感じ?」
「……はあ?」
ますますわけがわかんねェとさらに難しそうな顔をするエースにまたチョコを差し出して炙ってもらう。
「取り込んでどうすんだよ?」
「どうもしないけど、『ずっと一緒にいる』って感じがしてなんか素敵じゃない?」
「すてき、ねェ……?わからねェな。んなことしなくたってだいたいいつも一緒にいるだろ」
「そうだけど……」
思っていることの微妙なニュアンスを伝えるのはむずかしくて、悶々としたまま焼けたチョコを彼に差し出す。
「食べちゃえばもっと一緒にいられるでしょ?」
「お前みてェな弱っちいやつに食われてたまるかよ」
ハ、と鼻で笑ってチョコを食べた彼につんとおでこを突かれて小さくよろめく。
「じゃあ強くなったら食べてもいいってこと?」
なにか言い返してやりたくて揚げ足取りみたいなことをして笑えば、負けじとに、と笑った彼に手首を掴まれてまだ炙っていないチョコがかじられる。
「そんときゃおれはもっと強くなってる」
諦めるんだな、とやっぱり笑ってひらりと手首が解放される。ちぇ、とふてくされていれば、ふにと唇に熱い何かが触れた。それが彼の親指であると気づいたときにはあごの下に添えられた他の指に上向かされていて、ぽかんと力の抜けた唇の端から熱い親指が入り込んでくる。強引に開かされた口を閉じることもできずに迫り来る彼の顔を見つめていると、するりと抜け出ていった指のかわりに今度は分厚い舌が入ってきた。
「ん、」
普通にしてくれればよくない?と頭の片隅で考えながら、反射的に縮こまった舌から力を抜いて甘い舌を受け入れる。流れ込んでくる唾液はチョコの味がして、鼻に抜ける息まで甘い。
ふわふわと思考がとろけて体から力が抜けていくと、小さく湿った音を立てて熱い唇が離れていく。
「これで入ったんじゃねェか?成分」
「なんか違う気がする……」
「違わねェよ、ガマンしろ」
何だか釈然としないまま頷いて手元のチョコに目を向けると、握ったままだったチョコは銀紙の中でぐにょぐにょに溶けていた。
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