からあげに、ポテトに、ピザ。好き放題お腹に詰め込んでガバガバお酒を呷る。
久しぶりの陸は最高だった。
たくましくも海賊歓迎の酒場を実質借り切って飲めや歌えのどんちゃん騒ぎ。明日のことを考える者なんてここにはいなかった。
ふぅ、最高と空になったグラスをカウンターに置いて、おかわりが運ばれるまでの間に食料調達に向かう。
ほどよくアルコールがまわって普段の三分の一くらいの体重しかないんじゃないか、なんて都合のいい錯覚に陥りながら、取り皿を持ってわいわい騒がしいテーブルをいくつか回る。でんとソファの背もたれに両腕を広げ、擦り寄る柔肌から香る蜜のような香水の香りにでれでれと顔を緩ませ、うそみたいな冒険の話に適当なオチをつけて大口を開けて笑うみんなの隣でせっせと気になった料理をお皿に少しずつ盛っていく。時々、「飲め飲め!」と渡されるグラスやらジョッキやらに一口ずつ口をつけていって、パスタにソーセージ、チーズ、魚のフライ、ローストビーフと着実に好物ばかりを集めていって、あとポテトももう一回ほしいなと辺りを見回す。タイミングよく揚げたてほくほくの山盛りポテトが運ばれていったテーブルを見て、にんまりと口角を上げる。次はあそこだ。行儀悪く盛り付けたわがままプレートにポテトを盛る場所はあるだろうかと確認しながら、ポテトのテーブルを目指す。胃袋を破壊する勢いで思うままに食べているけれど、まあ健康面も美容面も一番初めに特盛のサラダを食べたから問題ないはずだ。
たどり着いたポテトのテーブルで見慣れたオレンジ色の帽子をちらりと見てからるんるんとポテトに箸を伸ばすと、突然肩にずしりと重みが乗った。
「わりィな、おれァこいつのなんだ」
ぐわんと体が沈んだ衝撃で落とした箸がカラカラとテーブルの上で転がる。そのまま体勢を立て直すように勝手に引き寄せられた体に、離れていく気配のない肩への重み。「まあ」と嬉しそうに目を大きくして口元に手を添える綺麗なお姉さんたちに、隣でへらへら笑う男。何となく状況を理解して、間に合わせの笑顔を作ってぺこりと会釈する。
「んじゃ、おれたちはあっちで」
あっち、とさっきまで私がいたカウンター席のほうを指す彼に肩を抱かれたまま、もう一度ぺこりと会釈をしてその場を去る。
「いつから私のものになってくれたの、エースくん?」
「バカ、おれはずっとお前のもんだっただろ」
「そうだっけ」
ポテトをのせそびれたお皿を真ん中に置いて、イスに腰掛けると同時にそれぞれお酒を注文する。うっかり長旅をして帰ってくると、頼んでいたはずのお酒はカウンターに結露の跡だけ残してどこかへ消えていた。
「……ありがとう、助かった」
はぁ〜、と疲労困憊といった様子で深いため息を吐く彼に思わずくすりと笑ってしまう。
「『次の島で一日荷物持ちする券』ね」
「安いもんだな」
かつ、とグラスを合わせて仕切り直しだとお互いぐびぐび飲む。
「──だいたいよォ、なんだってお前こんなとこにいたんだよ」
ジョッキを置いて魚のフライを食べた彼が何やら文句ありげに口を尖らせるので、「なんだってって?」と首を傾げる。
「お前が来るもんだと思って隣あけてたのによ」
「……そうなの?」
「そうだ」
ふーん、と何でもないように返事をしたかったけど、お酒のせいか締まりのない口は少し緩んでしまってごまかすようにお酒を飲む。彼の目はローストビーフに向いていたから大丈夫なはず。
「そういやさっき向こうで聞いたんだが、ここから少し行ったところに星みてェに光る砂浜があるんだと」
「へぇ。なにそれ、虫?プランクトン?」
光る砂浜か──と何度か見た青白く光る浜辺を頭でイメージしながらフォークにパスタを巻き付ける。
「いや、砂が光ってるらしい」
「へぇー」
砂が?と首を傾げながらもぐもぐとパスタを食べる。どういうことかまったくわからないけど虫じゃないなら見てみたい。けれど、あいにく今はそこそこお腹がいっぱいになってきたし、歩けば体重を三分の一くらいしか感じないほろ酔い状態だ。正直あんまり動きたくはない。明日かな、と好奇心をなだめてお酒をひとくち。
「んで、近くで売ってる『そらいろのかき氷』?ってのがそりゃもうとんでもなくうめェらしい」
「……ほう?」
自分でもびっくりするくらい低くキリッとした声が出た。しかし私はお腹いっぱいの身。おまけにほろ酔いでお尻はびっちりとイスにくっついている。なだめた好奇心が湧いてきそうになるのをぐっとこらえていると、隣に座る彼がごそごそとポケットを探る。
「さっきの礼もあるし、今ならおごってやらんでもないが、……行くか?」
「行く」
即決だった。空いていなかったようなお腹は途端にかき氷を求めているし、びっちりとくっついているかに思えたお尻は今にもイスと別れを告げそうだ。ほろ酔いで火照った頬だってきっとかき氷が冷ましてくれるだろう。そりゃあそうだ。貴重な"エースの奢り"でとんでもなくうまいかき氷を食べながら、星みたいに光る砂浜を見られるんだ。行かないはずがない。
そうと決まれば──と残った料理をふたりでぺろりと平らげてグラスを空ける。
すくっと立ち上がってカウンター越しに「ごちそうさまでした」と店の人に声をかけ、出口へ。するりと腰へ回った腕に違和感を覚えて首を傾げる。
「……なんで腰抱くの?」
「あ?あー……これはまァあれだ、ノリだ」
「ノリね」
まぁいいやと店を出る。真っ暗な空を見上げると、腰へ回っていた腕はすぐに離れたけれど、今度はあぶないからと手をつなぐ。幼い子どものようなそれが何だかくすぐったくてくすくすと笑っていると、少しだけつないだ手に力がこめられた。
じめじめと張り付くような暑さもきっとかき氷が冷やしてくれるはずだと、彼とふたり鼻歌まじりに暗い道を歩いた。
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