ずしっと背中にのった重みは愛おしいもので、胸の前で組まれた腕からふわりと香った彼の香水は少しだけさわやかな気分にさせてくれた。
外は灼熱である。
じりじり肌を焼く日差しから逃げて部屋にこもったはいいものの、船内だからといってそこまで涼しいわけではない。読書は集中できず、かといって寝る気分にもなれない。しかし動く気力はない。
そんなうんざりする暑さの中、愛しい彼と触れ合うことは確かにうれしいことだったけど、それも最初だけ。
「エース、暑い」
そう、彼は"火"だ。
メラメラと炎を纏っているわけではないけれど、それでもやはり彼は"火"なのだと思い知らされる熱さが背中を襲っている。
そしてその熱はたちまち体中を駆け巡り、汗を噴き出させる。ただでさえ熱かった体は、ものの数分で燃えるように熱くなった。
「……ん」
「いや、『ん』じゃなくて離れて?」
ぎゅうっと拘束を強め首元に顔を擦り寄せられて身を捩る。髪がくすぐったい、汗が気になる、暑い。
「なんだよ、お前までおれをジャマ者扱いすんのか?」
ねぇ早くと急かすようにぺしぺしと腕を叩こうとして、彼の言葉に固まる。
「う、それは……違うじゃん……」
すんでのところで止めた手をそっと彼の腕に添える。
反則だ。そんな言い方をするなんて。
今朝からの船での彼の扱いを思い出す。「寄るな」だの「あっちいけ」だの、もちろん本気で嫌がっているわけではないけれど、うだるような暑さにうんざりしていたみんなからからかい半分に散々避けられた彼はコタツにさえもフラれていた。
みんな決してエースが嫌なわけではない。しかし、暑すぎた。"火"である彼は、こうして度々かわいそうな目にあっていた。
「じゃあいいだろ」
声からは、彼がすっかり拗ねてしまっていることがわかった。
当然だと思うし、そんな彼に寄り添いたいとも思う。寄り添って、甘やかして、慰めたい。けれど──
「でも本当に暑いんだってば」
暑い。暑すぎる。とにかく今はそれ以外考えられないくらい暑い。早く燃えるような熱さから解放されたくてもがく。
「おれだって暑い」
「じゃあ離れてよ」
今度こそ腕を叩いて揺すって訴える。
しかしそんな私の訴えも、彼の「いやだ」の一言ではねのけられる。
「も〜〜〜」
解放されたくてたまらないのに後ろの重みはやっぱり愛しくて、仕方ない腹を括るかと小さく息を吐いて彼の腕をそっと撫でた。
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