「エース、暑い」
うだるような暑さの中、本を読んでいると後ろから熱の塊に抱き締められた。ただでさえ汗ばんでいるというのに、彼がくっ付いた背中はもはや燃えるように暑くてまたじわじわと汗が噴き出してくるのがわかる。
「そんなこと言ったってどうしようもねェだろ」
「いや、離れてくれれば済む話です」
「そいつはできねェ相談だ」
「はぁ?ちょっとー、もう本当に暑い」
後ろで楽しそうに笑う彼に身体を揺らして放してくれのアピールをする。
けれど拘束が解かれることはなく、かえって密着されてしまったような気さえする。
本を読むのをやめて抵抗すれば抜け出せるかもしれないが、今はどうしてもそれができない。何せいいところなのだ。
ふぅと息を吐いて彼を振り払うことを諦めて本に集中する。
しばらくは彼も後ろから文字を追ってみたようだけれど、すぐに飽きたのか、ぽふっと肩口に顔が埋められた。
もう少し、もう少しだけ待って──と焦りながらも読み進めていると、物語がクライマックスを迎えようとしたところで、かぷり、と突然うなじを噛まれた。
「っ、」
驚いて肩を跳ねさせると、くつくつと満足そうに笑う彼。
悔しくて何か言ってやりたい気持ちになったけれど、それはそれで悔しいので、もうこうなったら反応したら負けだ、と無視して本の続きを読むことにした。
するとまたかぷりと噛まれる。
当然気は散るけれど、来るとわかっていれば何てことはない。この勝負、勝ったなと内心ほくそ笑んでいると、べろりと噛んだところを舐められて思わずまたビクリとする。
「ちょっ、と……!もう少し待ってってば!あと少しなんだから!」
「あァ、気にせず読んでてくれていいぜ?おれも好きにしてるからよ」
フンと笑う彼は本当にたちが悪い。
ぐつぐつと体温は上がるばかりで、本の内容なんてこれっぽっちも入ってこなかった。
←/top