ねぇ、

ねぇ、とどこか不機嫌そうな少女の声が聞こえた。
いなくなってしまったリンドウの代わりに新人でありながらその実力や人柄を認められ、第一部隊を率いることになった人物。
彼女が不機嫌そうな声や表情で話しかけてくることは別に珍しくない。

「オトハさん、僕や第一部隊の皆さんならともかく他の人だったら機嫌が悪いと思われますよ」
「いいのよ別に。レンが分かってくれるんでしょ」

何か嫌なことがあったわけでもなくオトハにとってはいつも通りである。
確かに不機嫌だと勘違いされたことは多々あるけれど、彼女はそれでも良かった。
数人でも自分のことを分かってくれる人がいるのだ。特に目の前の彼に理解してもらえているのなら。

「ところで僕に何か用ですか?」
「次の任務。ハンニバルの討伐なんだけど、その、手伝ってほしいのよ」

発見された頃は不死のアラガミ、と呼ばれ騒がれていたそのアラガミとの交戦経験はオトハにも何度かある。
不調の神機で仲間を庇い神機を壊してしまった嫌な思い出もあるくらいだ。
敵の強さを知っているだけに、戦力は多いほうが良いと判断したのだが。

「第一部隊ですぐに動けるのは私だけなのよね、残念ながら」

生憎、他のメンバーは任務や別の用事で出払っている。
防衛班に手伝いを要請することも考えたが彼らも忙しそうだ。
ハンニバルくらいなら一人で、とも思ったが当然ヒバリやツバキに叱られてしまった。

「一応レンと同じ新人のアネットとフェデリコも一緒よ。戦い方教えてほしいみたいで」
「分かりました。すぐに準備します」
「…………レン、頼りにしてるわ」

こんな無茶ばかりするリーダーを助けてくれるのだから。