「ユウゴ、見て。雪が積もってる」
この辺りで雪が積もっているのは珍しい。少なくとも今年はじめての雪ではないだろうか。
灰域種の討伐という、ハウンドにしかこなせない任務を終え、近くにミナトがあるから念のためにという理由で異変がないか見回りをしていた時のこと。見て、なんて言われて倒し損ねたアラガミでもいたのかと身構えてしまったがそうではないらしい。
つい最近までペニーウォートの牢獄に押し込められていた自分たちにとって雪は見慣れないものだ。仕事で牢獄から放り出されたとして、生き延びる為に必死だった。景色や天気に意識を向ける余裕などない。
穏やかな気持ちで雪を眺めたのは随分と久しぶりかもしれない、が。
「別行動しているジークとルルももうすぐ戻ってくる。遊んでいる暇はないぞ」
「わかってる」
二手に分かれて見回りをしよう、と提案したのはユウゴだった。ジークとルルは自分たちと反対側のエリアを見回りしていて、この辺で落ち合う予定になっている。
約束の時間はもうすぐだし、二人と合流したらそのままクリサンセマムの船へ帰還することになる。
雪が積もっているからと言って、特別なことは何も——
「…………。えいっ」
そんな掛け声と共に投げられた雪玉がユウゴの顔面に直撃した。
「お前なぁ……」
「よしっ」
「よしっ、じゃねえよ。本当にお前の行動は突拍子もないな」
精神のバランスを崩して塞ぎ込んでしまっていた昔の彼女を知っているので、あの頃と比べたら随分と良い兆候ではあるのだが。
決してそれが嫌なわけではないけれど、幼馴染の奇行に振り回されるこちらの身にもなってほしい。ユウゴは深く息を吐いた。