ささやかな願い

 普通、人間は自分たちの生まれた日を家族や友人と祝うらしい。
 自分の生まれた日を正確には知らず、誰かと誕生日を祝うということにもあまり馴染みのないイノリ・ペニーウォートにとってはピンとこない行事ではあるのだが、ペニーウォートにいた頃と違い自由の身なのだから、と背中を押されて今に至る。
 ——ユウゴの誕生日である。
 折角だからプレゼントを用意してみたら、なんて言われたがユウゴが何を貰うと喜ぶのか自信がない。
 自分が貰って嬉しいものなら相手も嬉しいのではないか、などと言われても自分には欲しいものなど思いつかない。ユウゴならイノリがくれるものなら何でも喜ぶのでは、と言っていたのは誰だっただろう。

「……ユウゴは誕生日に何が欲しい?」
「それ、本人に聞くのか?」
「私にはユウゴの喜ぶものが分からないし……本人に聞くのが一番確実だと思うから」

 アラガミ素材で良ければすぐにでも用意できるのだが、流石に素材を誕生日にプレゼントするのはあり得ないのだろうということは何となく分かる。
 ……ユウゴが欲しがっていれば別だが。

「俺も自分の誕生日なんて忘れてたからな」
「ユウゴも自分の誕生日を忘れたりするのね」
「まあ、ペニーウォートにいた頃は誕生日を盛大に祝うようなこともなかったし、今は忙しいからな」

 確かに最近は特に忙しかったし、誕生日のことを忘れても仕方ないのかもしれない。
 ならばユウゴへのプレゼントは疲労回復に効果のある食べ物のほうがいいのだろうか、なんてぐるぐると考える。
 食べ物の場合、イノリが自分では味見できないのでおいしいものをプレゼント出来ない可能性はあるのだが。

「私はユウゴがしてほしいこと、全部してあげたい」

 重い、なんて言われてしまうかもしれないけれどユウゴの為ならば何でも出来ると思っている。