「……どう、かしら」
頼まれていた素材を集めてきたのだけど、といくつかの素材を差し出しながらイノリ・ペニーウォートは幼馴染であるユウゴの顔を覗き込む。
確か先日必要だと言っていた素材はこれで全部だった筈だ。自分たちのミナトを作る上で後々必要になってくる素材が不足しているので今のうちに集めておきたいが最近はハウンドへの仕事の依頼も増えてきて人手も足りないからどうしたものか、と悩んでいたユウゴにだったら自分が行ってくると声をかけたのだ。
ハウンドの鬼神とまで呼ばれる——尤も本人はその呼ばれ方を好まないようだが——イノリ個人への依頼も多く、普段から限界ギリギリまで働いているイノリに別の仕事を増やすことを幼馴染は最後まで渋っていたのだが、見かねたニールがイノリへの依頼のいくつかは自分が代わりに引き受けると申し出たことで素材集めはイノリに割り振られることになったのだ。
……元々の自分の仕事を、自分と同等の戦闘力を有する数少ないAGEとはいえ弟のように思っている年下の少年に任せることになってしまうことにもイノリはあまり良い顔をしなかったのだが。
「ああ、今のところはこれだけあれば十分だ」
「……そう、良かった」
「ところで、イノリ。俺が見てないところでまた無茶してないだろうな」
イノリは目を離すとすぐに無茶をして怪我をして帰ってくる。生まれてからずっと道具のように扱われてきたから自分の命に対する執着も実感も薄いのだ、と昔そんなことを言っていたような気もする。
それでも最近は随分と改善されたほうではあるけれど。
「ん、大丈夫」
「……お前の大丈夫は大丈夫じゃないことも多いから心配してるんだけどな」
「今回は本当に平気」
「まあ見た目で分かる怪我や体調不良はなさそうだが、念のためメディカルチェック受けておけ。クレアもお前のこと気にしてたんだぞ」
今回の仕事は普段よりも難度の高いものだったのだとユウゴは呆れたように息を吐いた。
第一、一人で灰域で戦闘を繰り広げること自体が無謀なのだ。イノリの実力を信頼して最終的には任せたが灰域種や灰嵐種との戦闘経験が豊富なイノリでなければこの仕事を一人で任せるつもりはなかった。
「……ねぇ、ユウゴ」
「どうした」
「ユウゴが私のことを大切にしてくれるの、嫌いじゃないわ」
——愛されている自覚はある。
それが所謂「恋」と呼ばれる感情とはまた別のものだったとしても、確かにそこに愛はあった。