ぐふ、と血を吐いて地面に転がる。
油断した。私はこのまま目の前のこのアラガミに喰い殺されるのかもしれない。オトハは霞む視界の中、複数のアラガミを睨みつけた。
オトハさん、と珍しく動揺したような少年の声。
まだ、死ねない。死ぬわけにはいかないのに。意思に反して体は動いてくれない。鈍い痛みが全身を駆け巡る。体が重い。少年の回復弾のお陰でこれでも先程よりは痛みも和らいでいるのだけれど。
アラガミの攻撃を食らったときに神機は遠くへ弾き飛ばされてしまった。反撃する術はない。手元に残されたスタングレネードで隙を作ることが出来れば、と何とか体に鞭を打ち立ち上がろうとするオトハにヴァジュラテイルが体当たりする。
「こん、のお……っ!」
宙に投げ出された体は地面に強く叩きつけられて。
もうこれ以上戦うのは無理だ。少年――レンはそう思った。強引にでも連れ帰らないと、本当に死んでしまう。
それでもオトハは立ち上がろうとしている。第一部隊のリーダーとして、どれだけボロボロになろうとも、諦めるわけにはいかないと。無様に自分だけが引き返すわけには。
仲間も全員逃がし、且つ自分も必ず生きて帰る。
「オトハさん、無茶です」
「無茶じゃないわ……っ、私は、もう誰も、失いたくはないっ」
MIAと認定されたリンドウ、終末捕喰を月へ運んでくれたシオ。
もう二度と、仲間の喪失を経験したくないだけだ。そして仲間にも、そんな経験させない為に、生き抜いてみせる。
「っ、レン、サポートは……あんたに任せるから、私が死なないためにも、きちんとやってよ……っ」
再度立ち上がり、神機目掛けて地面を蹴った。
第一部隊リーダーは、そう簡単には死んでやらない。