ダスティミラーのオーナー、アイン。
正直、初めて会ったときから彼のことを知っているような気がしていたのだ。
どこで見かけたのかは覚えていないし記憶違いか、もしくはミナトのオーナーなら昔の雑誌か何かで見たことがあるのだろう、とあまり気にしてはいなかったのだが。
「ソーマ・シックザールなんて知らない筈ないじゃないですか……」
マシロはそう呟いて、息を吐く。
幼い頃、親の仕事の都合で一時的に極東支部の居住区で暮らしていた。極東支部のエントランスに顔を出したこともあったし、そこで働く神機使いや技術者を見たこともある。
いつか彼らと一緒に働くことが夢だった。ソーマ、と呼ばれていた青年が支部に出入りしている姿も見たことがある。
彼が後に厄災の三賢者、と呼ばれるようになっていたことも知っていたが幼い日の朧げな記憶ではどうにもアインと結びつかなかったらしい。
「お前は確か昔、極東にいたな。あの頃と名前は違っているが」
「はい。元は父が神機使いで、極東支部に転属になったのを機に極東で暮らすようになりました。今は訳あって素性を隠した欧州のAGEなんですけど。まさかアインさんが私の名前を知ってるとは思いませんでした」
お互い、大した接点などなかった筈だ。
まさか本名を知っている、とは思わなかった。その上で事情を追求しなかったアインに心の中で感謝する。
「本名以外を名乗っていたのはお互い様だからな」
「私の場合は弱い子供が身を守る為に必要だっただけですよ。アインさんにはこれからもマシロ、と呼んでいただければ!」
アインがソーマではなくアインと名乗っている理由は聞かなくても何となく想像できる。
だからこそお互いにこれから先もアイン、マシロと呼び合うのだろう。