きみと夢を見る

 ハウンドに舞い込む依頼には様々なものがある。
 近くのミナト周辺の小型アラガミの掃討、というハウンドにとって難度の低いものも決して珍しくはないし複数の灰域種アラガミを討伐してほしいという他のミナトには絶対に回せないような依頼も当然ある。

「これはお前への依頼だ」
「……灰域種の討伐?」
「イノリには今更簡単すぎるかもしれねえな」
「そんなこと、ないと思うけど」

 灰域種アヌビスの討伐。アヌビスなんて既に両手では収まらないほどの数を討伐している。どんな攻撃を使い、どんな動きをするのかは分かりきったものだ。
 とはいえ今でも灰域種と戦うことに対して不安も緊張もある。油断はしたことないし、この任務で少しでもミスをすれば自分はアラガミに捕喰されてクリサンセマムには戻れないのだろうとも思っている。
 ——ここで死ぬつもりはない。この命はせめてユウゴの夢の為に使うのだと決めている。

「灰域種が相手だ。一人で行くなよ」
「ユウゴが付き合ってくれるの?」
「お前が来てほしいならな。だが、戦力的にはニールとフィムを連れて行ったほうがいいだろ?」

 それは否定できない。
 鬼神と呼ばれるようになって、いつしか幼馴染を追い越してしまった自分はもう彼に背中を預けて戦うという関係ではない。もちろん信頼しているしずっと一緒だったのだから彼の戦いの癖も熟知しているけれど、自分と同じレベルの動きは求められない。
 ニールとフィムであれば自分の動きについてくることが出来るだろうけれど本音を言えばまだ子供である——フィムはアラガミではあるけれど——彼らには戦いとは無縁の平和な日々を過ごしてほしいと思う。

「ユウゴが嫌じゃなければ、ユウゴがいい。……ひとりでも良ければひとりが一番なのだけど」
「それは駄目だ」
「……分かってる。一人で行くつもりはない」
「お前の実力は知ってるが、目を離すとすぐ危なっかしい戦い方するからなお前は」

 戦うことが出来なくなれば、ユウゴの力になれなくなる。それはとても恐ろしいことで、いつか神機を握れなくなった時に自分は生きていけるのだろうかと不安になる。
 もしも大怪我をして、一時的にでも戦えなくなったらきっと自分は絶望するだろう。一ヶ月か、二ヶ月か、或いは半年以上か。戦場に立てなくなったらハウンドの鬼神としての自分の価値はなくなってしまう。
 鬼神と呼ばれることは今でも抵抗があるけれど、鬼神と呼ばれるだけの強さが自らの価値のすべてだと思っている。

「ユウゴ」
「どうした」
「期待していて……私はきっとユウゴの夢を叶えるわ」

 あの日見た星の輝きに命を救われたから、その夜空の光を絶やさない為に、自分はなんだってするのだ。
 彼の夢が叶うことこそが自分にとって何よりの夢だ、なんて今更言うまでもない。


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